現役世代の「私」のお金・健康に関するお役立ち情報

高福祉・高負担か低福祉・低負担か。世界と日本の税制の違いとは

消費税の増税や物価の上昇などの要因が重なっていることもあり、日本の景気に回復する兆しはみられません。

 

にもかかわらず、日本の政治家の多くは社会保障制度の支出を国債による借金でまかなっていることから、今後も増税が必要であると主張しています。 

 

では、海外の社会保障制度はどのようにまかなわれているのでしょうか。本記事では、日本と海外の社会保障制度を比較し、今後の日本がどうなるのかを考えていきます。 

世界と日本の税制の違いとは

 

日本では、国民の生活を支えるためにさまざまな社会保障制度が実施されています。病院を受診したときの医療費自己負担が3割で済むのも、65歳になったときに国から年金を支給してもらえるのも、日本で社会保障制度が実施されているためです。 

 

社会保障制度の財源となるのは、国民が負担している税金や社会保険料です。日本は「低負担・中福祉」といわれており、低い負担で優れた福祉制度を利用できます。 

 

一方の世界では「低負担・低福祉」または「高負担・高福祉」のどちらかが一般的です。ここでは、日本と諸外国の社会保障の違いをみていきましょう。 

日本と外国の国民負担率

所得に占める税金や社会保険料の割合を「国民負担率」といいます。国民負担率が高いほど、国民は税金や社会保険料を多く負担していることになります。

日本と諸外国の国民負担率は、以下の通りです。

出典:国税庁「これからの国の財政(2)」より国民負担率の国際比較

※社会保障負担率とは:所得に占める社会保険料の割合

※租税負担率とは:所得に占める税金の割合

 

「低負担・中福祉」である日本の国民負担率は44.3%となっています。一方「低負担・低福祉」といわれているアメリカの国民負担率は31.8%、「高負担・高福祉」といわれているスウェーデンは58.8%です。

 

低負担・低福祉の国は、税金や社会保険料の負担が少ない代わりに、社会保障制度の恩恵はあまり受けられず、足りない部分を自助努力で補わなければなりません。一方、高負担・高福祉の国は、税金や社会保険料の負担が重い代わりに、社会保障制度は手厚いです。

 

ここからは、「高負担・高福祉」であるスウェーデンと、「低負担・中福祉」であるアメリカの状況をみていきましょう。

25%の消費税率で手厚い社会保障が受けられるスウェーデン

スウェーデンの消費税率は25%(食料品等12%、新聞書籍等6%)と、日本よりも高く設定されています。

 

その反面、高齢者特別住宅や在宅ケア、児童手当、保育サービスなど、社会保障制度が充実しています。

 

また、スウェーデンの医療費は年間1人あたり5,447ドルと、アメリカのおよそ半分の医療費(1人あたり医療費10,586ドル)で済みます。

※出典:国税庁「6 今後の税制について考えよう」

アメリカには国民のすべてが加入できる公的医療保険がない

国民負担率が低いアメリカでは、自己責任の精神が強いこともあり、日本のような全国民を対象とした公的医療保険がありません。

 

公的医療保険を利用できるのは、高齢者や障害者、低所得者といった一部の人々のみです。

 

そのためアメリカで病気やけがに備えるためには、民間の保険会社が取り扱う医療保険に加入しなければなりません。しかし、国民の多くは高額な保険料が払えず無保険者となっています。また、民間の医療保険に加入できない人は、病気やけがで治療を受けたときの高額な医療費が払えず、自己破産に至るケースもあることが社会問題になっています。

 

特に医療費が高額なニューヨーク・マンハッタン地区では、入院したときの室料が1日あたり2,000〜3,000米ドルにもなると言われています。仮に1ドルが110円の場合、入院1日あたり22万〜33万円もかかることになるため自己負担をするのは困難でしょう。

 

2014年からは、最低限の民間医療保険への加入を義務化する医療保険改革法(いわゆるオバマケア)が実施されました。しかし、自己責任の精神が強いアメリカでは、反発も強いのが実情のようです。

 

まとめ:今後の日本で増税される可能性はある?

日本の社会保障関係費は、1990年度から2022年度の32年間で約41.4兆円※も増加しました。

出典:財務省「これからの日本のために財政を考える」

 

税金や社会保険料で賄えない部分は、国の借金である国債を発行してカバーされています。国の借金は年々膨らんでおり、GDP(国の経済規模)に占める債務の残高は、他の先進国よりも非常に高い水準にあります。このような状況を改善する方法の一つといわれているのが「消費税の増税」です。消費税は景気の変化に左右されにくく、働く世代だけでなく高齢者まで幅広く負担するため、安定した税収が期待できます。

 

今後の日本は、高齢者が増えて子どもの数が減っていく少子高齢化がさらに進むと予測されます。そのような中でも社会保障制度を維持するために、消費税率が引き上げられる可能性は十分にあるでしょう。

 

財務省のホームページによると、消費税率の引き上げによる増収分はすべてが社会保障に充てられ、高齢者だけでなく子育て世帯のためにも使っていくと記載されています。実際に、消費税が8%から10%へと引き上げられたとき、増収した分は待機児童の解消や幼児教育・保育の無償化、高等教育の無償化などに充てられました。

 

消費税の増税により、結婚や子育てをしやすい環境の整備が進めば、少子高齢化を食い止められるかもしれません。一方で、消費税を引き上げると景気が冷え込み、日本が衰退する恐れもあるため、慎重な議論と検討が必要です。

 

続けてご覧になっていただきたい記事はこちら:

子育て世帯におすすめの生命保険を解説!考える際のポイントは3つ

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事