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【なぜ受け取れない?】 使用した放射線量が少ないと受け取れない?どういうこと?

50グレイ以上が条件なんて聴いてないし、そもそも「グレイ」って何ですか?

 

がん治療をはじめ、「放射線」が現代の医療に欠かせない存在となっていることはご承知のとおりです。

 

がん治療においては「三大治療(手術、薬物、放射線)」と位置付けられ、病巣に照射することにより適切な治療が行われています。

 

外科手術や抗がん剤などの化学療法(薬物療法)については、「なんとなく知っている」という方が多いように思いますが、放射線療法についてはいかがでしょうか?「なんともよくわからない」という方が少なくないのではないでしょうか?

 

本サイト内の一連のコラム(カテゴリ:保険知識_給付条件)では、諸々の理由で保険給付金を受け取れない事例を紹介していますが、中でも最も分かりにくいのが、この「放射線量の違い」によって受け取れない事例かもしれません。

 

なぜ、受け取れない事態が発生するのか?本コラムでは、その実態を解明して行きます。

 

 

放射線治療には、いくつかの種類がある

 

放射線とは、高いエネルギーを持って空間を移動する光(電磁波)あるいは粒(粒子線)のことです。

 

 

 

 

  • 電磁波(光)

 

ここに示した様々な波は「電磁波」と呼ばれる“光の兄弟”です。

 

電子レンジ等に用いられる「マイクロ波」や、蛇には見える「赤外線」に比べると、昆虫には見える「紫外線」のほうが、エネルギーが高くなります。

 

各種の診断や治療に用いられる「X線」や「ガンマ線」は更に高いエネルギーに位置付けられ、放射線の波長が短くなる(エネルギーが高くなる)ことで身体を通り抜けるようになります。

 

 

 

 

 

  • 粒子線(粒)

 

粒子線は、“粒”と言っても目に見えるものではなく、小さくて顕微鏡でも見えません。

 

原子を構成する粒子が“いろいろな速度”で飛んでくるもので、「α線」「電子線」「陽子線」炭素を代表とする「粒子線」、「中性子線」などがあります。

 

粒子線を発生させるには巨大な装置が必要で、全体の大きさが100メートル四方にもなるリング状の加速器により、1秒間に地球を4周するほどの速さまで加速させます。

 

治療に必要なエネルギーまで加速した粒子が真空パイプを通りながら照射室に運ばれます。

 

巨大な円形の加速器(名称:サイクロトロン、シンクロトロン)が必要となるため、粒子線による「がん」の治療施設は、全国でも25ヵ所に限られています。(2022年4月現在)

 

 

 

 

放射線を使った「がん治療」のイメージ

 

 

  • 分割照射:人体に与える影響を考慮する

 

一度に多量の放射線を受けると、放射線によって傷ついた細胞を十分に修復することができなくなり人体に影響が出ることから、「受ける放射線の量はできるだけ少なくした方が良い」との考えに基づき、一般的には「分割照射」を行います。

 

また、がん細胞よりも正常細胞が早く修復されることに着眼し、照射後のタイムラグ(正常細胞は修復、がん細胞はまだ修復できていない時間差)を利用して次の照射を行うことで、正常細胞への影響を抑えつつ、がん細胞を死滅させるように段階的な治療を行います。

 

 

 

 

  • 耐容線量:どれだけの線量まで耐えられるかを確認する

 

細胞の障害発生率は、照射する放射線の線量が増えるほど上昇しますが、その上昇の仕方には差があります。

 

障害発生率が、がん細胞(腫瘍)には高く、正常組織細胞には低い線量が適正照射とされます。

 

 

 

 

また、適正照射を決めるには副作用が生ずる可能性を踏まえて、組織(体の部位)ごとに異なる「耐容線量」を確認する必要があります。

 

正常組織がどれだけの線量まで耐えられるのかは、下表のとおり「5年間で5%に副作用を生ずる線量(左列)」「50%に副作用を生ずる線量(中央列)」で表されます。

 

たとえば、目の水晶体、肺、腎臓は耐容線量が少ないことから、頭頸部や胸部・腹部に照射する場合は、これらの臓器への照射を少なくするよう配慮します。

 

 

 

 

  • 体内到達度:放射線の種類によって使い分ける

 

 

放射線の種類による「線量」と「体内への到達度(深さ)」の関係を表すと次のグラフのようになります。

 

たとえば、通常の放射線治療で用いられる「X線」は体の表面近くで線量が最大となり、体の奥へ進むにつれ吸収される放射線量が徐々に減少します。

 

この特徴から、深いところにある腫瘍にダメージを与えようとすると、手前にある正常細胞に対し多くの線量を照射することになるので適していません。

 

 

一方で「陽子線」は照射対象の腫瘍に達するまではエネルギーを放出することなく、正常細胞へのダメージを最小限にすることが可能です。

 

深いところにある腫瘍にダメージを与えるのに適しており、こうした性質を発見者の名から『ブラッグ・ピーク』と呼びます。

 

 

 

 

なお、実際のがん病巣は、深さや方向に厚みがあるので、『ブラッグ・ピーク』を重ね合わせることで、深さや方向の線量分布が一様な領域を形成するように照射します。このように、一様に広げられたビームの形を『拡大ブラッグ・ピーク』と呼びます。

 

 

放射線量を表す単位「グレイ(Gy)」と具体的な照射例

 

 

  • 「シーベルト」との違い

 

放射線量を表す単位としては「シーベルト(Sv)」がメジャーだと思いますが、治療の場で用いられる単位は「グレイ(Gy)」と言います。それぞれの違いは以下の通りです。

 

 

 

 

「グレイ」は、放射線生物学の祖と言われるイギリスの物理学者である「ルイス・ハロルド・グレイ」の名前に因んで、その名前が使われています。

 

 

  • 実際の治療で使用する放射線量

 

1日の放射線治療の回数は1~2回で、週に4~5回施行されることが一般的です。

 

1回に照射する放射線量は「2グレイ」程度が標準的ですが、がん腫や治療の段階・方針、あるいは患者の体格や病巣の位置によって異なります。

 

 

 

 

以下は、がん治療における具体的な放射線量を示したものです。

(※東京女子医科大学医学部「放射線医学講座」サイトより)

 

 

■例:早期肺がん

 

病変が肺の中に限局、転移がなく周囲に大きな血管や太い気管支がない場合は、病巣を多方向から狙い打ちする方法が有効であり、通常の放射線治療に比べ少なく短期間で治療できることから、

 

1回12グレイ×4回=総線量48グレイ/4回

 

の定位放射線治療を中心に行います。

 

 

■例:小細胞肺がん

 

限局型の小細胞肺がんでは、抗がん剤を併用して放射線治療を行います。照射範囲が比較的小さい場合には、

 

1回1.5グレイ×1日2回×週5回×3週間=総線量45グレイ/30回

 

の治療法が推奨されています。

 

 

他の場所に転移した場合、骨転移に対しては、

 

1回3グレイ×1日1回×週5回×2週間=総線量30グレイ/10回

 

の治療を基本としていますが、全身の状態によっては、1回8グレイ×1回のみの治療とすることで、少ない回数での治療も可能です。

 

脳転移に対しては、

 

1回2.5~3グレイ×10~15回程度=最大総線量45グレイ

 

の治療を行います。

 

 

■例:乳がん

 

乳房照射では、

 

1回2グレイ×1日1回×週5回×5週間=総線量50グレイ/25回

 

の照射が一般的です。

 

 

さらに、局所再発のリスクが高い方(50歳未満、わきの下のリンパ節転移あり、病理検査でリンパ管・脈管浸潤あり、切除断端あるいはその近くにがん細胞があったのいずれかをお持ちの方)では、乳房照射後に、がんがあった部位への

 

1回2グレイ×1日1回×5回=総線量10グレイ/5回

 

の追加照射(ブースト照射)をお勧めします。

 

 

乳房切除術後照射でも、

 

1回2グレイ×1日1回×週5回×5週間=総線量50グレイ/25回

 

の照射が一般的です。

 

 

「50グレイ規定」によるトラブル例

 

 

商品や加入時期によって異なる支払事由(条件)

 

多くの医療保険に設定されている「手術給付金」は、放射線を使用した治療も、条件を満たしていれば保険給付の対象になります。ところが、中には下記のような規定が設けられている商品があることをご存じでしょうか?

 

 

 

医療の実態に合わない“本末転倒”な実態

 

上述の「がん治療における具体的な放射線量」からすれば、「50グレイ以上」に該当するケースは乳房照射の場合のみであり、その他の治療では基準を満たしていませんが、乳房照射においても下記のケースでは放射線総量が「50グレイ未満」になります。

 

 

この「0.2グレイ」の差は、担当医師による総合的な判断から割り出された結果であり、当然のことながら、保険給付の該当・非該当を加味するものではありません。裏を返せば、給付金を受け取れるか否かは“紙一重”ということです。

 

 

実際、従来のがん保険の多くにこうした規定が設定されていたことで、給付金を受け取れないことが問題となっています。ある機関で行われた実態調査では、乳がんの術後患者のうち、保険加入者が69%を占める中、63%の割合で給付金を受け取れていないことが判明しています。

 

 

 

 

中には、経済的な事情から、あえて50グレイ以上の放射線総量になる治療方法を希望する患者もいるとのことで、担当医が体への負担を配慮する観点からより少ない放射線量を推奨しているにも関わらず、本末転倒な実態があるようです。

 

 

 ■異例!? 医療従事者からの見直し要請

 

上述の実態から、本件については、内閣府や生命保険協会に対する下記の要望書が、医療団体・従事者から提出され、監督官庁には医療消費者の立場に立った行政指導が求められる」との強い意見具申が示された経緯があります。(2008~2010年頃)

 

 

医師の立場からすれば、勿論のこと患者の経済的な事情には配慮すべきことを踏まえていても、あえて体に負担がかかる治療計画への転換は避けたいのが当然です。そして何よりも患者自身が、できればそのような選択は避けたいと考えるのが当然ではないでしょうか?

 

これは、ある患者が保険会社に交渉した際の実話です。

 

 

 

 

前段のように、放射線量の決定には変動要素が複雑多岐に絡み合うので、実際の治療実態に鑑みて医師の判断のもと支払可否を決定するという“善意の判断”が前提の話であろうとは推察しますが、もしこれが事実であれば、なぜ、そもそもこの「50グレイ」という基準を設けていたのでしょうか?

 

 

 

■これもまた、“置き去り”が原因か?

 

1回に照射する線量をコントロールする技術開発が進み、様々な症例に対応する分割照射が標準化される以前は、総線量が50グレイ以上に至るケースが大半でした。

 

これは、筆者の個人的な推測の域を超えないコメントになりますが、おそらくは、「50グレイ」に線引きをすることで、保険会社が給付の対象として想定したケースに適切な支払いを行うよう企図したのではないかと思われます。

 

 

ところが、医療技術の進歩に伴い「50グレイ」に満たないケースが増加したことで前述のトラブルに発展したわけですが、このような保険商品の“置き去り”は「50グレイ」に限らず、他にもいくつもの事例が存在します。

 

 

 

 

「受け取れない…」を事前に回避する方法は?

 

冒頭にもお伝えしたとおり、本サイト内の一連のコラムで紹介している様々な「保険給付金を受け取れない事例」の中でも、この「50グレイ」は最も分かりにくい事例のひとつであり、セルフチェックが難しいと思われます。

 

皆さんは、自身でチェックしようとする場合、どの書面等を確認するでしょうか?

 

実は、

 

  • 保険証券には、おそらく記載がありません。
  • 契約時に説明を受けた保険設計書(正式名称:契約概要)やご契約のしおり(正式名称:注意喚起情報)にも、記載されていないことが考えられます。
  • 契約の拠り所である「約款」には記載があるかもしれませんが、あのボリューム(頁数)のある「約款」を読破するには、なかなかの労力が必要になるかと思われます。

 

何だかとても不親切に感じるかもしれませんが、残念ながら、これは多くの場合で皆さんが直面する事実であり、ともすると担当者(保険募集人)ですら自社商品についての詳細な給付条件をここまで認識していない可能性があります。

 

では、皆さんが「受け取れない」という事態を回避するには、どうすれば良いのでしょうか?

 

 

■こういうケースこそ、専門家を頼る!

 

専門家を訪ねる利点は、「50グレイ規定」以外の様々な“受け取れないケース”を含めてチェックしてもらえることです。

 

実際にチェックしてもらった方の多くは、

 

 

といった声を挙げられています。

 

しかも、当アカウント内の『My相談』を活用される場合は無料で専門家のアドバイスを受けることができるので、こうした機会に活用してみることをお勧めします。

 

決して安くはない保険料を、生活費を切り詰める形で払い続けた挙げ句に、いざという時に給付金を受け取れないのは、やはりショック…。

 

筆者としては、読者の皆さんが、ひとりでもこうした事態に見舞われないように願うばかりですが、他の受け取れないケースが気になった方は、当情報提供サービスのメニューを活用し、ひとつでも多くの情報収集に努めることをおすすめします。

 

 

ぜひ、お気軽にご利用いただきたいメニューはこちら:

アップデートメニュー

 

 

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