住宅ローンを組んでマイホームを購入するときは「団体信用生命保険(以下、団信)」に加入するのが一般的です。団信とは、住宅ローンの契約者が亡くなったり所定の高度障害状態になったりしたとき、保険金によってその時点のローン残高が完済される保険です。
団信に特約を付ければ、がんや3大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)などの疾病も保障の対象になり、保障の幅が広がります。一方で特約を付ければ住宅ローン金利が上乗せになることが多く、返済額の負担と保障内容のバランスを踏まえたうえで必要性を判断しなければなりません。
今回は、住宅ローンの団信に付けられる主な特約や、選ぶときのポイントをわかりやすく解説します。
がん特約とは
がん特約は、生まれてはじめて悪性新生物と診断されたときに住宅ローンの残債が0円となる保険です。住宅ローン残高のすべてを保障するものと、残高の50%を保障するものがあります。加入したときの上乗せ金利は、100%保障のがん団信が0.1〜0.2%、50%保障が0〜0.1%です。ネット銀行や地方銀行では、金利の上乗せなしで50%保障のがん団信に加入できることもあります。
がんと診断されるのは、高齢者とは限りません。国立研究開発法人国立がん研究センターの調査によると、男性は50代以降、女性は30代以降にがんの罹患率が上昇しています※。
※出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がんの統計2022」
30〜50代は、一般的に住宅ローンを返済している人が多い年代であるため、がんは対策を検討すべきリスクの一つであるといえます。住宅ローン返済中のがんが不安な方は、がん特約に加入しておくと安心です。
ただし、がん特約の保障対象となるのは、基本的に悪性新生物です。上皮内新生物(上皮内がん)や皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんなど、一部のがんは保障されません。また、住宅ローンが始まったあとから90日以内に診断された悪性新生物も保障対象外です。
3大疾病保障特約
3大疾病保障特約は、3大疾病(基本的にがん・心筋梗塞・脳卒中)で所定の状態になったとき、住宅ローン残高が保障される特約です。上乗せ金利(保険料)は、金融機関によって異なりますが、おおむね0.2〜0.3%です。3大疾病保障特約を付けると、がん特約と同様、生まれてはじめて悪性新生物と診断確定されたときに残債が0円となります。
急性心筋梗塞と脳卒中は、以下の状態に該当したときに保障されるのが一般的です。
【一般的な保険金の支払要件】
<急性心筋梗塞>
- 60日以上の労働制限が必要であると医師に判断されたとき
- 心筋梗塞を治療するために所定の手術を受けたとき
<脳卒中>
- 60日以上の言語障害・運動失調・麻痺などの状態が続くとき
- 脳卒中を治療するために所定の手術を受けたとき
急性心筋梗塞と脳卒中については、基本的に診断されただけでは住宅ローン残高は保障されない点を理解して必要性を考えることが重要です。保険金が支払われる要件は、保険会社によって異なります。金融機関によっては、急性心筋梗塞や脳卒中を治療するために入院をするだけで保障される場合があります。
団信の特約の必要性を判断するポイント
団信の特約は、住宅ローンの返済途中で付けたり外したりできないため、慎重な判断が求められます。ここでは、住宅ローン団信の特約の必要性を判断するときのポイントを2つご紹介します。
1.がんや三大疾病になったときの生活を考える
特約の必要性を考えるときは、がんや心筋梗塞、脳卒中になったあとの生活を考えることが大切です。重い病気になったあとも、生活費と合わせて治療費を支払いながら、住宅ローンの返済を続けられるか考えてみましょう。子育て世帯の場合は、問題なく教育費を支払っていけるのか考える必要もあります。
がんや急性心筋梗塞、脳卒中になったとき、住宅ローンの返済に困る可能性があるのなら、特約に加入して備えると良いでしょう。また、重い病気になったとしても、子どもが希望する学校に進学させてあげたいと考える人にとっても、特約の必要性は高いといえます。
一方で、すでに加入している民間の医療保険やがん保険で対処できるのであれば、特約は付けず一般団信で備えるのも選択肢の一つです。
2.返済シミュレーションを比較する
特約を付ける場合、金利が0.1〜0.3%程度上乗せとなります。金利が上がると住宅ローンの返済負担は増え、返済期間が長くなればなるほどに、その差は大きくなっていきます。そのため返済負担の差を確認して、特約の必要性を判断することが大切です。
例えば、特約を付けると毎月の返済額が約5,000円、返済総額が約220万円上がるとしましょう。「毎月5,000円しか上がらないのであれば特約を付けたほうが安心だ」と考える人もいれば「総額で200万円もの差があるのであれば特約は不要。民間の保険で保障を備えればいい」と考える人もいます。
価値観や考え方は人それぞれであり、どの選択が正解であると一概にいえるものではありません。返済負担の差を確認し、ご家族とも話し合いのうえ、住宅ローンの団信に特約をつけるべきか慎重にご判断ください。また、住宅ローンやマイホーム購入については、以下の記事でもあわせてご案内しています。あわせてご覧ください。
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