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医者からは「大丈夫」なのに保険会社は「お断り」のなぜ?

 「以前は持病があったけどお医者さんからはもう大丈夫と言われたし、今は通院も服薬もしていない。それなのに、保険会社の査定で引き受けを断られてしまった」

 

医師からはお墨付きをもらったのに、保険会社の査定では断られてしまう。

このような事例は少なくありません。

 

なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか。

今回は医師と保険会社の視点の違い、そして加入診査や保険金受け取りにおける医療の役割を解説します。

健康でも生命保険の加入を断られることはある

 

担当医から「健康体」のお墨付きをもらい、健康診断結果でも異常はない。

「一見健康に何の問題もなさそうな人」でも、生命保険の加入診査に落ちることはあります。

実はその逆のケースあり、健康診断で異常の指摘がある人や、医師から血圧値について改善するよう言われている人でも加入できることがあります。

 

健康でも保険に入れない人と、健康状態にやや難があっても保険に加入できる人。

このようなことが起きる理由は、視点の違いです。

 

医師は、臨床医学を元に患者を診ています。対して保険会社は、保険医学を元に加入診査を行っています。詳しい違いを見ていきましょう。

 

 

 

「臨床医学」と「保険医学」の違い:

臨床医学とは、患者の診察・治療によって今ある苦しみを解決することを目的とした学問です。

つまり臨床医学では、患者の「今」の健康状態を主に見ています。

 

対して保険医学とは、医学的データや保険統計、種々の調査結果などに基づいて保険事故の発生を予測する学問。

統計医学と呼ばれることもあります。

 

保険会社が加入診査で用いているのは、この保険医学。

つまり保険医学では、患者の今の健康状態や各種情報を起点に、保険期間内に患者の病状は悪化しそうか、保険事故の可能性はありそうか?という「未来」を予測しています。

 

私たちは普段から、健康に関することは医師が正しいという認識を持っています。

しかし、医師は患者の今の状態を診察して処方するのが役割であり、不確実な未来について言及することは避けるのが基本姿勢です。

 

一方で保険会社では、不確実な未来を保障する商品(保険)を販売しています。

健康面だけではなく、さまざまな視点で保険事故の可能性を見極め、未来を予測しなければなりません。

 

したがって同じ病状・健康状態でも臨床医学をもとに患者を診る医師と、保険医学をもとに保険加入者を見ている保険会社とでは、評価に差異が生じることがあるのです。

 

 

保険会社は保険医学を元に将来の保険事故の危険度合いを評価している

 

保険会社は保険医学を元に、加入者に「保険事故が起きるかどうか」の危険度合いを評価し、査定を行っています。基本的な評価の軸は、以下の3つです。

 

  • 身体上の危険:現在の健康状態と過去の傷病歴から保険事故につながる危険性を評価する
  • 環境上の危険:職業や仕事の内容から保険事故につながる危険性を評価する
  • 道徳上の危険(モラルリスク):保険金・給付金詐欺などの犯罪行為につながる危険性を評価する

 

上記のとおり、保険会社が見ているのは健康状態だけではありません。

これまで蓄積してきた保険金・給付金の支払実績など大量の保険統計や医学的データを分析し、どのようなケースだと保険事故の確率が高くなるのかを見ています。

 

仮に、加入者全員が病気で給付金を支払うことになれば、保険会社は健全な保険事業を維持できません。

保険事故の可能性の低い人とリスクの高い人が同じ条件で加入すれば公平性は失われますし、加入者全員のリスクが高ければ保険金支払に影響が出てしまいます。

 

そこで保険会社では、加入当時の査定は適切だったか、予測は正しかったのか?の効果検証まで含めて長年分析を行い、最新の医療技術をも加味しながら、査定時の評価基準を常にアップデートしてきました。

医師の判断と保険会社の判断とが大きく違う理由は、この危険度合いの評価にあります。

 

 

 

医療技術の進歩は保険金の受け取りにも影響する:

保険会社は、蓄積してきた統計情報に加えて、医療技術の進歩も加味しながら査定評価基準をアップデートさせてきました。

この「医療技術の進歩」は保険加入時の査定だけではなく、保険金の受け取りにも影響しています。

 

「保険金・給付金を受け取る基準は契約時に約款で決まっているのだから、医療技術が変わっても支払いに影響ないのでは?」と思うかもしれません。

 

たしかに、医療保険の支払事由は契約時の約款に基づいています。

だからこそ、以下のような変化に途中で対応できなくなるという弱点があるのです。

 

・加入時:

○○という病気が怖い

→ ○○は発見した段階で即外科手術することが当たり前

→ その外科手術に対応できる医療保険に加入しよう

 

・加入後20年経過:

医療技術が進化したおかげで○○の早期発見が容易になった

→ 今では外科手術よりも投薬治療がメインになった

→ 20年前に加入した医療保険には入院・手術しか保障されないため、たとえ現在○○になって投薬治療を受けても、対応外になってしまう

 

上記のわかりやすい例が上皮内がんです。上皮内がんは上皮細胞にとどまっている、転移の可能性が低い初期状態のがんですが、これも医療技術が発展したおかげで早期発見しやすくなりました。

 

ただ、ひと昔前には上皮内がんは一般的な存在ではありませんでした。

それゆえ、古いがん保険を契約していると、当時の基準で保障対応外となっている上皮内がんの治療では保険金・給付金を受け取れないということが生じていたのです。

 

保険は加入時の査定基準が話題になることが多いですが、加入後の保険金・給付金受け取り基準も重要なポイントです。

医療保険については、加入後も今の医療技術や治療トレンドに適した内容かどうかを定期的に見直すようにしてください。

 

 

まとめ

 

医師は「臨床医学」をもとに患者の今の状態を治療することが役割ですが、保険会社は「保険医学」をもとに健全かつ公平な保険事業を運営し、契約者との約束を果たすことが役割です。

そもそもの役割が異なるため、両者の視点も大きく違うことを覚えておきましょう。

 

また、医療技術の進歩は加入時の診査だけではなく、保険金の受け取りにも影響するとお伝えしました。

その一例が上皮内がんですが、実は上皮内がん以外にも医療技術の進歩によって保険金受け取りに影響を与える事例は多数存在します。

 

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