いつ終わる?でも、いつかは終わる。その後に「親のせいで…」と思わないために何を知っておくべきか?
いずれやってくる介護、老後問題に対する不安はどの家庭も抱えているものです。その中でも、近年「介護離職」が社会問題になっていることをご存知でしょうか。
働く人にとって、家族や親族が要介護者となったとき、「介護と仕事の両立」が大きな悩みとなっているのです。
総務省の調査によると、毎年10万人前後の方が、介護や看護のための離職を余儀なくされています。2019 年の大卒就職者総数が約 44 万人であることを考えると、新しく社会人の仲間入りをする人がいる一方で、その約 1/4 にあたる社会人の先輩たちが職を失っている計算になります。
介護離職の現実
仕事を辞めて負担を減らし介護に専念しようと決断したものの、介護離職の先にはさまざまな厳しい現実が待っているのが現状です。
退職すると当然、収入は途絶えます。日常生活すら維持することが難しくなるケースもあるでしょう。また、介護サービスなどを利用するにもお金がかかるため、経済状況はますます厳しくなるといいます。また介護という慣れない環境の中で、介護者が精神的な負担を抱え、体調を崩してしまうケースも多く見られます。
そして、このような介護生活の厳しい状況を乗り越えたとしても、次は復職という厳しい現実が待っています。就職活動をした介護離職者のうち、再就職できるのは半数以下と言われています。また再就職できたとしても正社員として採用されるのは、さらに狭き門となっているのが現状です。
辞める前に知っておきたいこと
介護離職という厳しい決断をする前に、まず仕事と介護の両立を目指すことが大切です。そのためには、さまざまな支援制度を知ることから始めましょう。
仕事をしているからこそ利用できるもの、雇用されているからこそ持てる権利はたくさんあります。
例えば、「有給休暇」や「介護休暇」です。介護休暇は法改正により、2021 年 1 日 1 日以降は対象となる家族(要介護状態の親族)1 人につき年間5日まで(2 人以上の場合は年間 10 日まで)、取得することができるようになりました。また「介護休業」は親族が2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある場合、通算93日分休業できるという制度です。ハローワークに申請することで、給与の約3分の2が支給されます。この介護休業は3分割して利用ができるので、介護段階に合わせて1か月単位で利用することをお勧めします。
例)
- 介護手続きなどで忙しい時期
- 在宅介護から施設介護への移行など環境が変わる時期
- 末期の看護や看取りの準備の時期
このように介護保険の仕組みを知ることが、介護を受け入れるスタートラインとも言えます。介護保険給付やサービスを利用するためには、どんな準備をしたらよいのか、どこに行けば良いのか、下調べをするだけでも後々スムーズに動くことができるでしょう。
また、介護される親世代の方には、「老人の行く場所」「国の世話になるのは嫌」など、介護サービスに偏見や抵抗を持つ方が多くいらっしゃいます。
ですが、実際に利用してみると楽しく介護を受けられている方が多いのも現実です。介護サービスを拒否して子どもが苦労するケースを避けるためにも、コミュニケーションが可能なうちに、親子で一度話し合いをしてみるもよいでしょう。
興味があること、向き不向きは何なのか改めて親を知ることが、最適な施設やサービスを見つける手がかりとなるはずです。
介護と仕事に追いこまれないために
介護離職でよく見られるのが、介護との両立を図るものの、上手く行かず1年以内に離職してしまうというケースです。まず、最初の1年は介護生活を受け入れるための心の準備期間と考えるとよいでしょう。
また、一人で悩んでいると良い方向性が見つからず、考え方が偏りがちです。困ったときは、まず誰かに相談することが大切です。介護者の方々が集まり情報交換を行う場として「介護者の会」などがあります。なかなか他人は打ち明けられない悩みでも、同じ境遇にあるもの同士だと心を解放できることもあるでしょう。
介護することは大きな負担ではありますが、その期間は自分の人生の一部分にしか過ぎません。介護する親はいつか亡くなり、いずれ自分の人生を自分自身で生きていく時が来ます。その時の経済基盤のためにも、介護を理由に仕事を辞めるべきではないのです。また、私たちは仕事をすることで自分の人生の生きる意味を見出すことも多々あります。介護のみに没頭することで社会との繋がりを失ってしまうと、介護者が亡くなったときの喪失感や孤独感は大きくなりかねません。介護者自身の精神的負担を重くしないためにも、できる限り仕事を続けること、介護以外の環境に自分の心と体の居場所を持つことが重要なのです。
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