ガンは一箇所にとどまっている早期のうちであれば、切除することで体内から完全に除去できるため根治できる可能性があります。
しかし、本人も気付かぬうちに進行してしまい粘膜下層にまで浸潤してしまうと、血管やリンパ管を伝って全身に転移する可能性があります。
また、腹膜や胸膜を超えて腹腔や胸腔に播種する可能性もあり、そうなった場合とても根治を目指せるような状況ではなく、症状を緩和する対症療法しか手立てが無くなってしまいます。
現状、転移してからの手立てはほとんどなく、我々が取るべき対策としてはいかに早期発見、早期介入を行うかに限ります。
そして今、より早期にガンを発見できるような最新の検査が日々開発されています。
現代における最新の検査によって、今までの検査技術では発見不可能な早期段階で、ガンがまだ大きくなる前のガン細胞を発見できるようになってきました。
そこで本書では、「ガンのリスク」を発症前に判定できると言われる最新の血液検査について詳しくご紹介していきます。
<ガンの成り立ちと既存の検査方法について>
人体において古い細胞は破壊され、その代わり細胞分裂を行い新しい細胞を作ることで再生して、常にフレッシュな状態を保っています。
細胞分裂とは、細胞内の遺伝子情報であるDNAをコピーすることで全く同じ形態や機能を持つ細胞を作り出すことです。
体内では日々細胞分裂が盛んに行われているため、時折細胞の遺伝子情報をコピーミスしてしまうことがあり、その結果、コピーミスで生み出された細胞こそがガン細胞です。
一度発生したガン細胞は、ほかの正常細胞と同様に細胞分裂を繰り返していきますが、正常細胞と違い際限なく細胞分裂を繰り返してしまいます。
1個が2個、2個が4個、4個が8個、8個が16個と、時間とともに、倍々にガン細胞は増えていく上に、ガン細胞は死なないため時間が経つほど数は増えていきます。
1人の人間の体内では、盛んな細胞分裂の結果、1日に約5000個ものガン細胞が発生していると言われています。
そう聞くと「自分の体もすぐガンに侵されてしまうのでは?」と不安になる方も少なくないと思いますが、実際には体内に発生したガン細胞のほとんどは、体内の警察である免疫細胞によって異物として検出され、すぐに殺されてしまいます。
しかし、加齢とともに免疫細胞の機能が低下し始めると、徐々にガン細胞を殺しきれず、ガン細胞が体内で増殖し始めます。
実際には、1つのガン細胞が検査で分かるほど大きくなるには、10年から20年もの時間が必要になります。
例えば乳ガンでは、1つの細胞が1㎝のガンのかたまりに成長するまで、細胞分裂で約30回、15年~20年といった時間が必要になります。
では、現時点の標準治療では、ガン発見のためにどのような検査が行われているのでしょうか?
結論から言えば、自覚症状が出る前の段階では、主にレントゲンやCT検査、内視鏡検査などを行なってガンを探します。
つまり、「ガン細胞の塊が視認可能なレベルにまで大きくなる」ことで初めて発見できるわけです。
裏を返せば、たとえ定期的にガンを見つけるための検査を行っても、ガン細胞が発生してから10年近くの年月が経ってからでないと発見できないことを意味しています。
ガンは早期に発見できれば根治の可能性がありますが、進行して転移や播種してしまえば手立てはほとんどなく、我々が取るべき対策としてはいかに早期発見、早期介入を行うかに限ります。
そこで近年、より早期にガンを発見できるような最新の検査が日々開発されています。
<ガンを未然に防げる!?mRNA検査やCTC検査とは?>
前述したように、ガン細胞は仮に体内に発生したとしても免疫細胞によって発見され、攻撃対象となります。
その際、免疫細胞はガン細胞の設計図であるDNA情報を読み取り、mRNA(メッセンジャーRNA)を作り出し、そのmRNAの情報を元に、ガン細胞を破壊するためのオリジナルのタンパク質を生成するわけです。
つまり、mRNAとはそのガン細胞の設計図であるDNAを転写したものであり、mRNAを解析することで逆にガンの情報を得ることも可能なわけです。
このmRNAは数万種類あることが知られており、興味深いことにガン細胞があるときには数千種類が特定のパターンで発現することが明らかになっています。
mRNA自体は血液中に流れているため、採血検査で血液が1滴あればmRNAの発現パターンを解析することが可能であり、早期にガンを特定することができるわけです。
現在行われているmRNA検査では、肝臓ガン、膵臓ガン、乳ガンといったように、臓器別で9種類の発ガンリスクを評価できると言われています。
また、リスクの度合いを、「健常ゾーン」から「警告ゾーン」まで、5段階に分けています。
この結果を元に、超早期から自身の発ガンリスクを臓器別に把握できるため、その後の治療や生活習慣の改善などにより、多くの患者でガン発症のリスクを下げることが期待できます。
絶対とは言い切れませんが、現実的に発ガンから遠ざかっていると言っても過言ではありません。
また、ガンは早期のうちであれば一箇所にとどまっていますが、気付かぬうちに進行してしまい粘膜下層にまで浸潤してしまうと、血管やリンパ管を伝って全身に転移する可能性があります。
リンパ管に入ったガン細胞も最終的には血管に流入していくため、転移や再発を起こすようなガンであれば、血液中にガン細胞が混入している可能性が高いです。
そこで、CTC(血中循環ガン細胞)検査は、一般的な検査では発見が難しい、血中に流れている小さなガンを超早期に発見する検査です。
CT検査などの画像検査では1cm以上、PET検査でも直径5mm以上にならないと検出が難しいため、それよりも超早期にガンの検知を行うことができます。
この検査の場合、あくまで血液中に侵入したガン細胞を調べる検査であり、初発のガンの早期発見のための検査というよりは、治療後のガンの再発や転移の有無を確認することに意義があります。
CTC検査は、mRNA検査同様で血液を必要量採取するだけで検査可能であり、簡易的に多くの情報を得ることができるためメリットが大きい検査となります。
<既存の検査との違い>
現在保険診療や公費助成で行われている多くの検査は、あくまで「発症したガンがあるかどうか」を調べています。
前述したように、既存の検査で見つかったときにはすでに発生してから10年近くの年月が経ったガンなのです。
対するmRNA検査であれば、もっと早期段階でそのリスクを評価できます。
またCTC検査も、再発や転移を今までになく早期にチェックすることが出来ます。
こうした取り組みこそ、本来の「ガン予防」なのではないかと考えています。
まとめ
残念ながら、これらの最新の検査は現状いずれも自由診療であり、医療機関にもよりますがどちらの検査も10-20万円以上します。
もちろん検診によって早期発見を目指すことは大切ですが、たとえ自費だとしても、もっと早い段階で予防を心がけることも命を守るためには重要かもしれません。
同じように、たとえ自費だとしても皆さんが知っておくべき最先端の検査やガン治療はまだまだ他にもあります。
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