親が要介護になると自分の年収が減る理由をご存じですか?
『ある日突然親の介護が必要になる日が訪れたら?』
皆様はそんな日について考えたことはあるでしょうか。
日本では2000年から『介護保険制度』がスタートし、40歳から始まる介護保険料の支払いをきっかけに身近なものに感じている方もいらっしゃるでしょう。
もちろん介護保険は確かに直接的なサービスを行う為に使いますが、いくら介護サービスが充実したとはいえ家族の協力は切っても切れないものです。
介護を行う方を取り巻く大きな問題は介護離職です。
介護保険はこのような最悪の状態を防ぐためにうまく必要がありある意味では『家族のための保険』ともいえます。
今回の記事では『介護離職』『介護と年収の関係性』からいかにその状況を避けることが重要なのかについて解説していきます。
介護離職と経済的負担
我が国の介護事情には様々な問題が存在しています。
その大きな問題の一つが『介護離職による経済的問題』です。
ここからはそんな『介護離職事情』について解説していきます。
明日はわが身?介護離職の現状
現在75歳以上の親がいる人の4人に1人は介護をしているといわれてます。
総務省「就業構造基本調査」では雇用者かつ介護をしている人は240万人以上、その年齢層の6割以上が40代〜50代というデータを報告しています。(6割以上)
この世代は社会人としても最も働き盛り、管理職が多い年齢層でもあります。
しかしいざ介護をする立場になると
- 親が地方に住んでいて介護する人が近くにいない
- 仕事が忙しすぎて介護に割く時間がない
- 職場の制度面や環境面が介護に適した環境ではない
などといった理由で仕事を辞める方が年間約10万人に上るというのが日本の現状です。
『介護のための離職』は正しい決断なのか
しかし、いかに親の介護が困難な状態にあったとしても『仕事を辞めて介護する』という決断は決しておすすめできません。
なぜなら『仕事を辞める(減らす)』という決断はすなわち収入を減らすということになるからです。
仕事を辞めると給料がなくなりますので収入がなくなり、現在の貯蓄、親の資産、年金などに頼って生活をせざるを得ないという事は想像しやすいかと思います。
しかし収入が減るということは以下のような不都合を及ぼす要因となり介護者の人生だけでなく、介護を受ける親の人生の質『QOL(Quality of Life)』を低下させる原因にもつながります。
- 経済的な余裕がなくなることにより介護サービスの利用頻度が減る
- 介護サービスを減らすことにより自身の身体的、精神的負担が増える
- 自分の趣味や友人との交際がなくなり社会的なストレスがかかる
- 介護者の体調不良がおき、共倒れの状態に陥ってしまう
上記はあくまで収入がなくなったことによる最悪のケースを想定していますが、親の介護に集中するためにとった決断が収入がなくなることで逆に負担をかけることになると本末転倒ですよね。
実際、介護の世界に10年以上従事している立場として『経済的問題』が介護サービス利用の障壁になっている事は少なくありません。
介護保険制度を利用することでサービスを受けるための自己負担額を減らすことは可能ですが自己負担額は1〜3割払わなければいけません。
『本当に介護の為に仕事を辞めても良いのか』
要介護者の状態が悪ければ悪いほど自己負担金額は多くなっていきますので『介護保険を使用したとしても継続的にお金がかかる』という事は常に意識して決断を行うようにしましょう。
介護をすると年収が下がるからくりとは??
明治安田生活福祉研究所とダイヤ高齢社会研究財団調べによる『介護と仕事の両立と介護離職』に関する調査によると、
介護による転職前後の平均年収を比べた結果、
- 男性:557万円→342万円(40%減)
- 女性:350万円→175万円(50%減)
という結果になっています。
加えて2013年の厚生労働省の調査『仕事と介護の両立に関する労働者アンケート』では退職後に介護に専念した事で、
- 39%が「経済面で負担が増した」
- 35.9%が「非常に負担が増した」
と回答しており、合計すると7割以上で「経済面の負担が増した」と感じるようになることがわかっています。
親が亡くなった後の経済面も上記のような経済的負担、年収の低下の背景には親が亡くなった後つまり介護をやり終えたあとにも影響します。
親が亡くなった後は年金の受給は終了します。そのため収入源がない方は再就職を行う必要があるのですが、数年のブランクがあるので希望する再就職先がすぐに見つかるとは限らないでしょう。
また、介護を行う世代の多くが40代〜50代という事ですが、働き世代でせっかくあげてきた年収よりも低い給料になってしまうことが現実です。そのような現状は働くモチベーションを落としてしまう原因にもなりうるのです。
このように特別な収入源や備えがない場合、ほとんどの方が経済的な負担が大きくなり、ご自身の老後に響く選択肢になるため『介護離職はできるだけ避ける』ことが重要になるんですね。
介護休業を賢く利用する
親の介護が必要になったら、仕事との両立をやみくもに続けるのではなく、実は「休業」することも可能です。
まずは相談先の確保を
とはいえ、介護離職自体は収入面も考えればできればしたくないという方が多いとは思います。
しかし、現状では「親を介護する人が自分しかいない」「家が遠いので一緒に住むしかない」などという理由で介護離職せざるを得ない状況に立たされる方が多くいるのも現状です。
前提として『介護を行う側』の立場になったとき一番初めにやってほしいこと、それは『相談先の確保』です。
まず相談してほしいのが『地域包括支援センター』や『ケアマネジャー』などの介護の専門職が所属する場所です。
日本では地域包括システムという市町村ごとで介護のあらゆるサービスを完結させるという動きがあり、皆様の周りにもきっと地域包括支援センターというものがあるはずです。
介護休業の活用
いざ介護が必要になったとき、仕事を辞める前に考えてほしいのが『介護休業』の活用です。介護休業は雇用保険加入者が利用できる制度の一つで
- 介護が必要になった家族一人につき3回を上限
- 最長で93日間
介護休業をとることができます。
派遣・パート・契約社員の場合も
- 入社1年目以上
- 介護休業取得が可能な93日を経過して、6か月以上の契約が認められていること
の2点を満たしていれば利用することができます。
※入社6カ月未満の従業員、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員、介護休業取得後93日以内に雇用関係が終了する従業員は、労使協定により対象外になることもあります。
このような制度と既存の介護保険による介護サービスをうまく利用することで介護と仕事の両立がうまくいく可能性が高まります。
介護休業を取得し、安心できる相談先を確保しておけば冷静に考える期間を設けることができます。まずはこの期間を使い、じっくりと今後の介護について検討しましょう。
デイサービスを使用しての日中の介護負担軽減、老人ホーム、訪問ヘルパーの活用など介護されるご本人だけでなく、介護を行うあなたの都合をしっかりと加味したうえでサービスを選択していきます。
介護休暇や介護休業給付金の活用
実際に介護が始まってからは対象家族お一人につき年5日の『介護休暇』を取得するのもわすれてはいけません。
今回ご紹介しているような休暇やサービスは事業主が下記のような事を配慮すべき義務です。またこれらの制度を利用することは労働者の権利でもありますので遠慮せずに活用を相談しましょう。
- 短時間勤務
- フレックスタイムの導入
- 介護サービス費用の女性
- 残業や休日出勤所定外労働を免除を求める権利
また勤務している会社によっては内部に相談窓口や外部の専門家に介護相談を行うことができる制度を持っていることもあります。
また、休業や休暇だけでなく金銭面の支援制度もあります。
介護が原因により会社を休むことで会社からの賃金が20%以上カットされた場合は『介護休業給付金』を受け取ることができます。
- 賃金が67%以下の場合:賃金の67%相当
- 賃金が67%~80%の場合:賃金の80%相当額と賃金の差額
介護はいまや社会的な問題になっており、介護の為に働けない方に向けてこのような制度が年々整ってきております。
一人で悩む前にまずは『地域の専門家』『会社』にしっかりと相談しましょう。
今から備えておく事の重要性
いかがだったでしょうか。
いざ親の介護が必要になったとき、実質的・精神的に少なからずお仕事に影響が出る可能性は非常に高く、それを避けるためには介護に対する知識や心構えをしっかりとしておく事が非常に重要です。
- まず介護の可能性がある本人としっかりと話し合うこと(認知症になる前に)
- 介護の担い手、役割について家族と話し合う(介護負担の集中を避ける)
- もしもの時の支援制度を把握しておく
- 地域包括支援センターなど、相談先を確保しておく
- 任意加入の介護保険に加入し、もしもの出費に家族で備えておく
などの備えをしておくことで将来の不安を少しでも解消しましょう。
介護される方の幸せを考えることは素晴らしいことです。
しかし、介護される側よりも介護をする側の方がこれから先長生きしていくことになるのが現実ですから、やはり介護する側の人生の質をあげていくことも重要ですよね。
今回の記事がもしもの時に備える皆様の参考になれば非常に幸いです。
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