銀行員は日々の銀行業務を通して「よいお金の使い方」と「悪いお金の使い方」を区別できるようになります。
その視点から、元銀行員が多くの人のお金の使い方を見てわかった「老後破綻予備軍のお金の使い方」を5つご紹介します。
1.現役時代とお金の使い方が変わらない
現役時代とお金の使い方が変わらない人は老後破綻予備軍です。
定年後も現役時代と同じお金の使い方なら家計の赤字は避けられない
役員や管理職が多い50代には高収入の人が多いでしょう。また、子どもが自立してだいぶ家計に余裕ができた人もいるのではないでしょうか。
しかし、定年退職後は再就職でも年金生活でも収入が大幅にダウンします。その状態で現役時代とお金の使い方が変わらなければ、家計の赤字は避けられません。
赤字の補てんで貯蓄を切り崩すペースが速いほど老後破綻しやすい
家計が赤字になれば貯蓄を切り崩す必要が生じます。その金額が多いほど貯蓄は急ピッチで減り、早々に老後破綻します。
それを防ぐためには、50歳ごろから少しずつ生活レベルを下げていき、収入が大幅ダウンしても家計が赤字にならない生活をめざす必要があります。
2.退職金を「自分へのご褒美」と考えて散財する
退職金を「自分へのご褒美」と考えて散財する人も老後破綻予備軍です。
退職金の散財でよくあるケース
退職金の散財でよくあるケースは以下の3つです。
- 世界一周などお金がかかる旅行で退職金を使い切った
- 車などお金のかかる趣味で退職金を使い切った
- 退職金を資金に多額の投資を行ったら資金を溶かしてしまった
以上のケースで老後破綻する人は少なくありません。
退職金は貴重な老後資金
大金を受け取ると誰でも気が大きくなりがちです。しかし、退職金は貴重な老後資金であることを忘れてはいけません。決してムダづかいせず、老後の「いざという時」に備えて大事にとっておきましょう。
3.退職金によるローン一括返済を考えている
退職金が原因で老後破綻予備軍になるもう一つのケースが、退職金でローン一括返済を考えているケースです。
「退職金でローン一括返済」は老後破綻の危険が高い
退職金を受け取った段階で住宅ローンの残債がわずかなら、一括返済もアリでしょう。しかし、退職金で一括返済を行うことを前提に住宅ローンを借りた人は、老後破綻の危険が高くなります。
「退職金でローン返済」で老後破綻した実例
たとえばこんな実例があります。
筆者の知人が50歳の時退職金で一括返済することを前提に、5,000万円・35年返済の住宅ローンを借り、60歳退職時に退職金全額で住宅ローンを一括返済しました。
その結果、その人は、70代前半で生活が破綻しました。最後の貯め時となる50代に住宅ローンの返済で十分な老後資金(貯蓄)を作れず、貴重な老後資金となりうる退職金まで返済に充ててしまったからです。
もし、この人が退職金一括返済を避ける形で住宅ローンの返済プランを組んでいれば、老後破綻を回避できたかもしれません。
退職金を住宅ローンの返済に使わないために講じるべき対策
このように、貴重な老後資金となる退職金を住宅ローンの返済に使うと老後破綻を招く恐れがあります。
そのような事態を回避するためにも、住宅ローンの借り入れでは以下のことに注意しましょう。
- 十分な頭金を貯めて借入額を少なくする
- 定年前に完済できそうな借入額にとどめる
- 退職金を使わずに済む返済プランを立てる
それが難しい場合は、将来自宅を担保に資金の借り入れを行う「リバースモゲージ型住宅ローン」への切り替えを行うことも検討しましょう。返済は一生続くものの利息だけの返済になって家計が楽になり、老後破綻を回避できる可能性が高くなります。
4.子どもの教育費を聖域にしている
子どもの教育費を聖域にする人も老後破綻予備軍です。
そのような人がやりがちなのが以下のことです。
- 義務教育から私立に入れる
- 私費で子どもを海外留学させる
- 塾代や習い事の費用に糸目をつけない
以上の教育費は莫大な金額になるため、一般の人がそこにお金をかけると老後どころか現役中に家計が破綻する恐れがあります。
また、子どもの教育にお金をかけすぎて老後資金が貯められず、老後破綻への道を歩む人も少なくありません。
子どもの教育費は現在の生活や老後資金に悪影響を及ぼさない程度にとどめましょう。
5.子どもや孫への金銭援助に糸目をつけない
子どもや孫への金銭援助に糸目をつけない人も老後破綻予備軍です。
その理由は2つあります。
必要以上の金銭援助で早々に老後資金が枯渇する
子どもや孫への金銭援助を必要以上に行えば老後資金は急ピッチで減ります。それが続けば早々に老後資金が枯渇して老後破綻に陥ります。
必要以上の金銭援助は子どもや孫の金銭感覚を狂わせる
子どもや孫へ必要以上の金銭援助は、子どもや孫の金銭感覚を狂わせます。
正常な金銭感覚の持ち主は、手持ちのお金をやりくりしながら収支のバランスを取ります。
しかし、親や祖父母から必要以上に金銭援助を受けてきた人は、手持ちのお金をやりくりする経験がないまま大人になります。その結果、お金に困ったら親や祖父母に頼ればいいと安易に考え、その老後資金をどんどん減らしていきます。それが原因で、親や祖父母が老後破産に至るケースも少なくありません。
子どもや孫への金銭援助はほどほどにしましょう。
まとめ:老後予備軍にならないために必要なこと
以上のまとめとして、老後予備軍にならないために必要なことを箇条書きにします。
- 現役中から生活レベルを下げて将来の収入減に備える
- 退職金は老後資金として大事に取っておく
- 退職金による住宅ローンの返済は考えない
- 子どもの教育費を聖域にしない
- 子どもや孫に必要以上の援助をしない
以上の心掛けで老後破綻を回避できる可能性が高くなります。50歳を過ぎたら生活レベルを下げるところから始めてみましょう。
なお、老後は退職金を運用して失敗する人も多くいます。退職金運用の失敗を防ぐポイントは以下の記事でご紹介しています。あわせて参考にしてみてください。
続けてご覧になっていただきたい記事はこちら:
「退職金を運用して豊かな老後を」の前に。退職金運用の失敗を防ぐポイントを解説
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