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障害年金のウソ?ホント?「就労していると、障害年金は受給できない? 」

「障害認定基準」には記載されているが、実際のところは…?

 

筆者は地方中核病院に勤務する医師です。

社会のセーフティーネットとして、「病気やケガで働けなくなった人」のために障害年金があります。

このように表現されることが多いためによく勘違いされることですが、就労していると障害年金を受け取れない訳ではありません。確かに働けない人のための制度なのですが、障害年金は就労していてももらえます。障害年金は「病気やケガで働くことに困難がある人」のためにある制度といった方が正しいのです。

この記事では、障害年金と就労の関係を解説します。障害年金受給者の就労状況は、実際のところはどうなっているのでしょうか?

 

 

就労していると障害年金は受給できない?

 

この疑問は多くの人が気にしていることです。同じような疑問に「働いたら、障害年金を止められる?」という疑問があります。障害年金と就労の関係を気にしている人は多いようです。

先に述べたようにこれは勘違いです。就労していても障害年金は受給できます。理由を解説していきます。

 

 

「障害年金受給者実態調査」を確認してみると

 

実態調査の結果を見てみましょう。この記事では厚生労働省が2019年に実施した「障害年金受給者実態調査」を参照しました。65歳未満の生産年齢のうち、障害年金を受給しながら就労している人の割合は43.1%です。受給者の約5人に2人が就労していることがわかります。

内訳は障害基礎年金の受給者 (障害厚生年金を併給している人を除く) が42.9%、障害厚生年金の受給者が43.7%です。

 

加入している年金ごとの障害等級別の就労割合を表に示します。(65歳未満)

 

※厚生年金:障害基礎年金と障害厚生年金の受給資格がある

※国民年金:障害基礎年金の受給資格がある

 

 

表から、障害の程度が軽いほど就労割合が高いこともわかります。

 

 

障害年金受給者の就業時間や業種

 

厚生年金・国民年金加入者の1週間あたりの就業時間をみてみましょう。

 

 

あまり偏りはありませんが、人によっては40時間以上就労している人もいます。

 

次に厚生年金・国民年金加入者の仕事の内容をみてみましょう。

 

 

障害福祉サービス事業所等が31.3%で最も多く、以下に「臨時・パート等」、「常勤の会社員・公務員等」が続きます。

 

 

障害認定基準に就労との関係について記載はあるが

 

障害年金を請求した場合や更新手続きをする場合の等級判定の方法として、「障害認定基準」があります。ここでは、就労と障害等級の関係について記載されています。

例えば、障害等級3級については「労働が著しい制限を受けるかまたは労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と記載されています。

ただし、障害等級2級では「労働により収入を得ることができない程度のもの」と書かれています。この部分から、障害等級2級では収入を得てはいけないように勘違いしやすいですが、実際の運用では障害等級1級や2級の人でも就労しています。

 

 

精神障害用の診断書では、特に就労状況を重視されている

 

障害年金の裁定請求や更新手続きの時に使用される診断書 (更新手続きでは「障害状態確認届」)では、8種類ある診断書のすべてに労働能力を記入する欄があります。さらに、精神障害者用の診断書では特別に「現症時の就労状況」を記載する欄が設けられており、障害年金の受給では就労状況が重視されていることがわかります。

 

さらに、障害認定基準の精神の障害の項で「現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断する」記載されています。

就労しているだけで、不支給や降級に直結しないように配慮されていることがわかります。

また、診断書を作成する医師に対しても「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」で「就労している事実だけで、障害年金の支給決定が判断されることはありません」と強調されています。

 

 

主治医に就労状況を理解してもらう

 

これまでに説明したように、障害年金の受給をする際には医師の診断書が必要です。障害年金の受給を希望する場合には、診断書を作成する主治医に自身の就労の実情を十分に理解してもらう必要があります。特に、精神障害の場合はとても重要と考えられています。

 

特に、障害認定基準にあるような

 

  • 仕事の種類
  • 仕事の内容
  • 就労状況
  • 仕事場で受けられる援助の内容
  • 他の従業員との意思疎通の状況等

 

これらの項目を丁寧に説明して、医師に診断書を書いてもらいます。診察室での説明が難しい場合は、用紙に書いて医師に渡しておくと効率的です。その上で、医師が判断して診断書に記載をします。現在の就労が障害者枠での就労かどうかも大切です。

 

厚生年金の場合は障害等級が3級まであるので就労していても受給できることが多いですが、国民年金の場合は2級までしか受給できません。必要な障害年金を受け取るために、主治医と就労状況についての相互理解を深めておきましょう。

 

 

更新時も主治医に就労状況を理解してもらう

 

障害年金を受給しながら就労している場合に、更新時に障害年金の支給が停止してしまうことへの不安があると思います。

これは障害の種類によって異なりますし、就労状況が重視されている精神障害でも直ちに障害年金が支給停止になるということはありえません。就労が継続できるかどうかは、すぐには判断できないからです。年金証書に「次回診断書提出年月」という項目があります。原則として、証書に記載の時期までは受給できます。

更新時の診断書についても、裁定請求時と同様に主治医に就労状況について理解してもらい適切な診断書を交付してもらうようにしましょう。 

 

 

まとめ

 

障害年金と就労の関係について解説しました。障害年金は就労していても個々の事情にあわせて受給できます。障害を持つ人が働けるような配慮が社会的にすすめられています。就労による収入と併せて、自身が障害年金をどの程度もらえるのかも把握しておきたいですね。

 

 

 

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