1955年頃、当時の厚生省(現、厚生労働省)は40-60代の方が罹患しやすい病気を成人病と名付けました。
しかし、徐々にこれらの病気は加齢よりもむしろ生活習慣によって罹患率が上がることが分かってきたため、1996年に厚生省が公衆衛生審議会(現・厚生科学審議会)の提言を受ける形で、成人病という言葉を見直し、呼称を生活習慣病に改めました。
その中でも高い死亡率を誇る、「悪性新生物(ガン)」「心疾患」「脳血管障害」の3つの疾患を合わせて三大疾病と呼んでいます。
主に保険業界で使われてきた言葉ですが、現在では多くの方にとっても馴染みのある言葉になってきたのではないでしょうか?
三大疾病は死亡率もさることながら、罹患率も高く、入院が長期化しやすく医療費も高くなる傾向にあるため、出来る限り罹患は避けるべきです。
近年では医療の発達に伴い、これらの疾患の病態や原因、その予防法もかなり解明されてきました。
そこで本書では、三大疾病について説明するとともに、その原因や具合的な予防法についても詳しく解説していきます。
<日本人の死因上位ランカー!三大疾病とは?>
高齢化の影響もあり、日本の死亡者数は昭和50年代から見ると年々増加傾向にあり、令和2年には年間で約137万人が死亡しています。
死因を原因別に見ていくと、第1位は悪性新生物(ガン)で約27%、第2位は心疾患で約15%、第3位は老衰で約10%、第4位は脳血管障害で約7.5%でした。
中でもガンは昭和50年代から死因第1位を維持しており、死亡率は一貫して上昇傾向にあります。
心疾患は昭和60年に脳血管障害を抜いて第2位になり。逆に脳血管障害の死亡率は昭和45年をピークに年々低下傾向にあります。
老衰を除いた死因上位3疾患である悪性新生物(ガン)」「心疾患」「脳血管障害」の死亡者数を合わせると全死亡者数の約50%に及び、合わせて三大疾病と呼びます。
それぞれの病気を簡単にご紹介します。
- 悪性新生物(ガン)
組織が損傷した場合、本来であれば正常細胞が自身の遺伝子情報をコピーして、そのコピーされた遺伝子情報をもとに全く同じ細胞を複製することで損傷部位を補完します。
しかし、なんらかの原因で正常細胞の遺伝子に傷が付いてしまうと、コピーミスが引き起こり正常細胞とは異なる異質な細胞、ガン細胞が発生してしまうのです。
ガン細胞は、正常な新陳代謝を無視して自律的にどんどん増殖する自律性増殖や、周囲の組織に滲むように広がり、血液やリンパ液を介して体の至る所に飛び火する浸潤や転移、そして正常細胞が摂取するはずの栄養分をどんどん奪い取ってしまう悪液質などの特有の性質を持ち、その為死亡率が高いのです。
これらの特徴からも分かるように、発見が遅れれば遅れるほどガンはその分成長し、ほかの臓器や組織にも浸食し、ガンと闘うための体力すらも奪われてしまいます。
- 心疾患
心臓はポンプのように収縮運動を繰り返すことで全身へ血液を拍出し、各組織にとって必要な栄養や酸素を供給するため、生命維持にとって重要な役割を担っています。
常に収縮運動を繰り返しているため、心臓自体も非常に酸素需要の高い(酸素をたくさん消費して運動している)臓器であり、常に酸素が供給されなくてはなりません。
そこで心臓自体を栄養する血管である冠動脈は心臓にとっての生命線であり、冠動脈がなんらかの原因で狭窄もしくは閉塞した場合、心臓は一気に酸素不足に陥り壊死してしまいます。
これを急性心筋梗塞と呼び、心疾患の中でも致死性の高い疾患の1つです。
他にも、心臓の弁構造の異常によりポンプ機能に障害をきたす弁膜症や、心臓の収縮リズムが乱れ効率的に血液を拍出できなくなる不整脈があります。
- 脳血管障害
脳血管障害とは脳を栄養する血管になんらかの異常が生じることで、脳実質がダメージを受けてしまう病態です。
主に、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞の3疾患を総称して脳血管障害と呼びます。
脳が存在する頭蓋内は、固い頭蓋骨で囲まれた空間であるため一定の容積しかありません。
その内部には、脳実質、脳を栄養する血管、脳周囲の脳脊髄液が存在していますが、血管から出血すると頭蓋内に血液が溜まっていくため内圧が上がってしまいます。
また血管が閉塞してしまうと脳がパンパンに浮腫んでしまう為、出血同様に内圧が上がってしまいます。
頭蓋内圧が上昇していくと、徐々に脳内の血流が悪くなり酸素不足に陥ってしまいます。
脳には生命維持に必要不可欠な呼吸や循環を司る部位も存在する為、広範に障害されることで死に至る可能性があります。
<三代疾病のリスクとは?>
三大疾病の病態やリスク要因はすでにかなり解明されています。
前述したように、ガンはなんらかの原因で遺伝子に傷が付くことが原因です。
遺伝的に異常な遺伝子を保有して生まれてくる場合を除き、多くは喫煙、食品添加物、発ガン性物質、ある種のウイルスや細菌、放射線、紫外線などの外部刺激の長期的曝露が原因です。
例えば、胃ガンであればピロリ菌、大腸ガンや乳ガンであれば欧米化した食生活、肺ガンであれば喫煙、食道ガンであれば飲酒や喫煙がリスク因子となることは既知の事実です。
心疾患も先天奇形を除き、多くは生活習慣病に伴う動脈硬化が原因となります。
高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症により動脈硬化が進展すると、血管は硬く、脆く変化し、血管壁が肥厚し内腔が徐々に狭くなっていきます。
もともと細い冠動脈は狭窄の影響を受けやすく、心筋の酸素需要を満たせなくなると狭心症や急性心筋梗塞に至ります。
これは脳血管障害でも同様です。
脳を栄養する血管に動脈硬化が起こると血管が脆くなってしまい、血圧の急激な変化で破綻しやすくなり、出血を引き起こしてしまいます。
また血管が徐々に狭くなり、血管内に集積した汚れが飛んでしまうと、脳を栄養する血管が閉塞してしまい脳梗塞を引き起こしてしまいます。
<三代疾病に対する予防を考える!>
ここまでそれぞれの疾患の病態やリスク要因がすでに分かっている以上、予防や対策を行わない手はありません!
ガンに関しては、放射線や紫外線の影響を完全に排除することは不可能ですが、適切な食生活や飲酒、喫煙を控えれば自身でも予防することができます。
また心疾患や脳血管障害に関しては、動脈硬化の予防に務めるべきです。
具体的には以下のような事に気を付けるべきです。
- 高カロリー、高コレステロールの食品を避ける
- 糖質の過剰摂取や早食い、暴飲暴食を避ける
- 揚げ物を控え、油はなるべく酸化しにくいオリーブオイルや菜種油を使う
- 過剰な塩分摂取に注意する
- ビタミンCやビタミンE、カロチン、EPAやDHAなどの抗酸化作用がある食材を積極的にとる
- 適度な有酸素運動を習慣化する
- ストレス解消の方法をたくさん見つけておき、ストレスを溜めない
- 喫煙者であれば禁煙する
実際にこれらすべてを同時に実行しようとすると、生活様式が180度変わってしまい長続きできません。
長期的に予防しなければ効果が薄れる為、ストレスの少ない範囲で変えられる所から変えていくことが長続きの秘訣です。
まとめ
今回は三大疾病の罹患を予防するための方法をご紹介しました。
適切な食生活、程よい運動、飲酒や喫煙に対する考え方など、健康を考えた日常生活を送ることで動脈硬化を予防することが非常に重要です。
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