遺産相続では約3割の人、つまり3人に1人が後悔すると言われています。
相続は発生する時期を事前に予測できないうえに、突然発生することも珍しくありません。それでも、意識しておけば事前に行える準備や対策は多くあります。
「準備や対策が必要なのは分かっているけれど、実際に話し合うのは難しいよ」
と思う人もいるでしょう。
たしかに、話の切り出し方によっては周囲の雰囲気が暗くなったり、ご両親など対象の人の気分を害したりしてしまいます。それでは、どうすればいいのでしょうか。
この記事では、遺産相続で後悔した事例と相続対策の話題の進め方を紹介します。
誰もが想定したくない、亡くなったときの話
相続が発生するのは被相続人が亡くなったときです。
そのため相続の話し合いは「悲しい、想定したくない話」として避けて通りがちです。
しかし、人間には寿命があり、いつかは必ず訪れる「避けて通れない話」である点も忘れてはいけません。想定したくないのは誰も同じですが、現実を見ながら前向きな話し合いができる方法を模索していきましょう。
亡くなったあとに気付く「やっておけば良かった」後悔
ここでは、日本トレンドリサーチと日本クレアス税理士法人が共同で実施した「遺産相続で事前にやっておくべきだったと後悔したことに関するアンケート」の回答内容を紹介します。
約3割もの人が後悔している遺産相続。具体的に何を後悔しているのでしょうか。実際に相続手続きを経験した人の声を聞いて参考にしましょう。
遺言や事前の話し合いなどの準備をしておけば良かった
第一に、遺言や事前の話し合いなどの対策を取らず後悔する人が多いようです。
遺言に関する主な回答は以下のとおりです。
- 遺言を書いてもらっておけば良かった
- 口約束ではなく正式に遺言を作成しておけば良かった
- 遺言の内容を確認しておけば良かった
- 遺言は公正証書で作成してもらえば良かった
事前の話し合いに関する後悔の声も多く出ています。
- 兄弟ですごくもめて、なかなか相続ができなかった
- 兄弟間の相続について十分な相談ができなかった
中には、遺産を処分する際に兄弟の了解を得ずに行った結果、絶縁状態になった、なんて回答もありました。
財産の把握と相続税対策を行っておくべきだった
財産の行方や内容が分からず困ったケースも多く見られます。
- 何がどこにいくらあるのかがなかなかつかめずに時間を費やされた
- 通帳や保険の保管場所を聞いておけばよかったと思う
これらは同様の意見が他にも見られます。
次に、相続税に関する対策等で後悔した意見の紹介です。
- 相続税対策。うまく対応すれば、かなり減額できたらしい
同様の回答は複数寄せられています。また、次の回答も注目です。
- 父が死んだとき相続人を母一人にする失敗をした。子供たちにも分与し母の死後の遺産総額を減らしておくべきだった
いわゆる『二次相続』まで計算していなかったことに対する後悔の声で、対策も各家庭に合わせて立てる必要があることが分かります。
「やっておいて良かった」事例もチェック!
事前にやっておいて良かったことがある、という回答も全体の3割近くありました。主な回答を見ておきましょう。
- 遺言書を書いてもらっていた
- 兄弟と相続について話し合っていた
- 公正証書遺言があったので遺産分割がわりとスムーズに進んだ
- 親との相談で書類関係・預金関係のリストを作ることができたこと
これらは後悔した人が挙げていた意見とほぼ同じですね。
相続税対策をしていて良かったという意見も紹介します。
- 生前贈与をしてもらっていたが、これについて相続税がかからなかったので、大幅に節税できたと思う
事前の相続税対策がかなり効果的であることを表しています。
あなたも今からできる!相続対策の進め方
アンケートの回答を見ると、相続で「後悔したこと」や「事前にやっておいて良かったこと」の回答内容には共通項が多くあり、相続対策を立てる際に参考にできます。しかし、具体的に対策を進めるとなると「どう進めていけば良いのか」と戸惑う人も多いはずです。
ここでは、家庭でよく聞かれる言葉を例に出しながら、各家庭に合った相続対策の進め方を考えていきます。
「死後」ではなく「将来」のこととして話す
「自分が死んだ後の話の相談は死んでからやってくれ」
こう言われた経験はないでしょうか。「死んだ後に誰が引き継ぐか」という聞き方では、ご両親など対象となる人に疎外感を与えてしまう恐れがあります。
そこで「財産を将来どうして欲しいか」という形で会話を進めると、対象となる人も参加しやすく、希望も言いやすくなるでしょう。
また、「将来引き継ぐときに手続きが必要だから、あらかじめ口座などの在処を分かるようにしておいて欲しい」と頼めば、財産面の話も比較的答えてくれやすくなります。言い方を変えただけですが、前向きな姿勢を出して話題にすることが大切です。
これは兄弟など相続人同士で話し合う際にも有効です。現在良好な関係であれば、将来も良好な関係が続くためにどう相続すべきか、お互いに希望や考え方を聞きながら誤解のないよう進めていくと良いでしょう。
話し合いで決めにくい部分を決めてもらう
「兄弟で仲良く話し合って決めてくれたらいい」
この言葉もよく聞かれるのではないでしょうか。しかし、相続財産の中には均等分割が難しいものも多くあります。不動産などが良い例でしょう。
持分で分割する方法もありますが、将来売却などを検討しているのであれば、所有者が複数になるデメリットを考慮しなければなりません。
そこで、たとえば「不動産は誰が引き継いだらいいのか、自分達で決められないので意見が欲しい」などと持ちかけて決定してもらうのもおすすめです。
「話し合ったけれど決められない」という形であれば、意志を伝えてくれるのではないでしょうか。意志がはっきりしたのであれば、遺言の作成を検討してもらいましょう。
相続や相続税の際に節約できそうな話として切り出す
「我が家にはそれほど財産はない」
そう答えられる人も多いでしょう。
しかし、実際に財産が少なくても、手続きの簡易化などできることはあります。もし財産の中に不動産があれば、現金が少なくても相続税の課税対象になる可能性があります。
そうなれば、相続税として支払う現金の確保や特例措置の活用による節税対策など、余計に相続税対策が必要です。
そこで「相続や相続税の対策で節約できるかもしれないから協力して欲しい」と投げかけると耳を傾けてくれるのではないでしょうか。生前贈与や保険などの相続税対策が必要な場合も興味を持ってくれるはずです。
前向きに考えてくれれば、必要な範囲で資産面の情報も開示してくれるでしょう。
まとめ:後悔しない相続のために、「対策のための話し合い」が肝心
アンケート結果から判断して、後悔している人の意見のほとんどは「相続対策をしておけば良かった」という一言に集約されます。相続対策の話は、切り出し方や聞き方によっては話し辛くなる話題の1つで、どうしても後回しになりがちです。
しかし、後ろ向きではなく前向きな対策として取り組めば、家族で一緒に考えていけます。相続が発生した際に後悔しないよう、将来財産を引き継いでいくために必要な話として、次回顔を合わせたときにじっくり話し合ってみてはいかがでしょうか。
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