日本は世界でも珍しい「国民皆保険制度」を導入しているため、すべての国民が必ず何らかの公的健康保険制度に加入することが義務付けられています。
全員が保険料を支払うことでお互いの負担を軽減する制度で、医療が必要な人は日本全国にあるどの病院でも同じ医療費で医療を受けられます。
発展途上国では未だに多くの国民が無保険の状態である国も少なくなく、欧米諸国ですら公的健康保険制度が整っていない国があるため、日本の保険制度は世界トップレベルと言えます。
今回の記事では、日本の保険制度のうち、企業の会社員や公務員が加入する「社会保険」と、それ以外の方が加入する「国民健康保険」の違いについて詳細に解説していきます。
「社会保険」「国民健康保険」とは?
最初に社会保険と国民健康保険について、簡単に説明します。
①社会保険
主に企業でお勤めの正社員や、一定の条件を満たした非正規社員(パートや派遣社員、契約社員など)は、勤め先の会社を通じて全国健康保険協会や各健康保険組合が運営している社会保険に加入します。
社会保険の中には、主に次の4つの保険や制度が含まれています。
- 健康保険
- 厚生年金
- 雇用保険
- 介護保険
このうち、国民健康保険と同様の役割を持つのは、「健康保険」となります。
社会保険の特徴は、保険料の半分を勤め先の会社が負担してくれる点です。
それに対し、次に紹介する国民健康保険は、被保険者本人が保険料を全額負担する必要があります。
また社会保険には、国民健康保険にはない扶養制度が設けられており、所得額の少ない家族を自分の扶養者として健康保険に加入させることができます。
②国民健康保険
国民健康保険は会社の社会保険に加入している方や、生活保護を受けている方以外全員加入しなければなりません。
退職などで社会保険から外れる場合、お住まいの市区町村の窓口で国民健康保険に加入する手続きが必要です。
退職したまま、国民健康保険の加入手続きをしなかったとしても、保険料を遡って納める必要があります。
手続きをしていない期間は無保険状態になるため、その間受診や薬代などの医療費は全額自己負担となるケースもあります。
そのため、特に退職に伴い社会保険から外れる場合は、手続きを忘れないよう気を付けてください。
「社会保険」「国民健康保険」の違いとは?
社会保険の1つである健康保険と国民健康保険、どちらも病院での自己負担割合は同じです。
しかし、保障制度や保険料免除の制度など異なる点もあります。
そのため双方の違いをきちんと理解しておくことをおすすめします。
2つの違いを下表にまとめます。
社会保険(健康保険) | 国民健康保険 | |
親族の扶養加入 | 3親等以内かつ条件を満たす者であれば可能 | 不可 |
加入する保険団体 | 全国健康保険協会や会社の健康保険組合 | お住いの都道府県及び市町村 |
保険料 | 基本給や通勤手当、残業手当、住宅手当などの収入と被保険者の年齢をもとに算出され、労使折半 | その地域の加入者数、所得、年齢に応じて算出され、全額自己負担 |
保障制度 | 健康保険以外に厚生年金、雇用保険、介護保険も含まれており、保障が手厚い | 社会保険と比較して手薄 |
社会保険の保険料は、算出された額に対して会社と個人で折半になり、これを労使折半と言います。
社会保険の加入者は給与天引き等で保険料を負担していますが、労使折半でなければ本来は倍額の保険料を払わないと得られない保障であり、言い換えれば「50%OFF」で今の保障が得られているわけです。
一方、国民健康保険では地域の加入者数でも保険料が変わってきます。
例えば、高齢者が多い等の地域事情により相対的に給付が多くなる場合は、居住者の保険料負担が増加してしまうケースが考えられます。
保険における入社・退社時の注意点
社会保険と国民健康保険は、それぞれ重複して加入することができません。
そのため就職や退職の際は、切り替えの手続きが必要になります。
そこで、手続きがスムーズに進むように保険の切り替え方法を理解しておきましょう。
①国民健康保険から社会保険に切り替える場合
新しい職場で社会保険加入が認められたタイミングで、お住まいの市区町村の窓口で国民健康保険の脱退の手続きをしましょう。
国民健康保険の脱退する届け出が遅れると、国民健康保険の資格がないのに離職中に利用していた国民健康保険制度を利用して病院にかかることになるため、国民健康保険が支払った医療費を後で返金することになります。
こうしたトラブルを招かないために、脱退の手続きは速やかに行うことをおすすめします。
社会保険への加入は会社が手続きを担ってくれるため、会社の指示に従い必要書類を提出してください。
②社会保険から国民健康保険に切り替える場合
社会保険脱退の場合、社会保険の資格喪失届の提出は会社が代行してくれます。
しかし、国民健康保険の加入は自分で対応しなければならないので、忘れず早めに対応しましょう。
多くの自治体は、退職から14日以内に窓口で加入の手続きを行うように推奨しています。
国民健康保険の加入の手続きにおいて不明な点があれば、お住まいの自治体へ問い合わせてください。
加えて、社会保険から国民健康保険に切り替える場合は「任意継続」にも気を付けましょう。
会社を退職した後、2年間に限り国民健康保険と会社の社会保険(任意継続)、どちらに加入するかを選ぶことができます。
社会保険を任意継続した場合は、2年間につき家族を扶養に入れることが出来ますが、国民健康保険に切り替える場合は、家族が扶養に入れなくなるため、国民健康保険の保険料が発生してしまいます。
「退職=国民健康保険」ではなく、それぞれの健康保険の特徴や制度をきちんと理解した上で、ご自身や家族にとってベストプランを選択しましょう。
まとめ
今回の記事では、社会保険のメリットや国民健康保険との違いについて解説させていただきました。
社会保険の場合、健康保険以外にも厚生年金、雇用保険、介護保険などの役目があり、国民健康保険よりも保障制度が手厚い点でメリットが大きいです。
また、条件次第では家族を扶養に入れる事も可能で、支払う保険料が労使折半である点も魅力です。
入社や退社における国民健康保険との切り替えには、いくつかの注意点がありますので、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
ところで、皆さんは任意で加入する生命保険に契約されているでしょうか?
加入されている方の多くは、「社会保険、国民健康保険だけでは不足を感じるから」という理由で保障を上乗せされているかと思いますが、一方で、自身にとって“どの保障が、どれくらい不足しているから”といった明確な不足分を認識されている方は、決して多くは無いように見受けます。
今回のコラムでお伝えした通り、現在の公助が社会保険であるか、国民健康保険であるかによって保障内容には大きく差があるわけですが、社会保険から国民健康保険へ、あるいは逆の場合でも、「前提となる保障が変更された場合は、本来なら自助として任意加入している生命保険の過不足についても、連動して確認しておくべきだ」と考える方が増え始めています。
いかがでしょうか?「言われてみれば、なるほどその通り!」であると思いませんか?
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