保険には様々な種類がありますが、大別すると「生命保険」と「損害保険」の2つに分けられます。
これらの保険は誰もが耳にしたことがあると思いますが、その違いをハッキリと説明できる人は少ないのではないでしょうか?
契約者として保険料を納め、有事の場合は保険金や給付金を受け取れるという仕組みは同じですが、主に「保障の対象」「被保険者」「保険金の支払い」については相違しています。
その一方で、国が「強制加入」と位置付ける保障を補う仕組みとして「任意で加入する保険」という意味では、一部に似たところも存在します。
今回は、こうした各々の特性を比較しながら解説して行きます。
生命保険と損害保険の違い
生命保険と損害保険では、主に下記のような違いがあります。
生命保険 | 損害保険 | |
保障対象 | 主にヒト | 主にモノ |
被保険者 | 保障対象であるヒト | 補償対象であるモノの所有者 |
保険料の支払い | 定額払いが基本 | 実損払いが基本 |
代表的な保険 | 定期保険
養老保険 終身保険 医療保険 傷害保険 など |
自動車保険
火災保険 地震保険 医療保険 傷害保険 など |
それぞれについて詳しく解説します。
生命保険とは
生命保険とは、ヒトの生死や病気、ケガなどに対して保険金が支払われる保険です。
死亡した場合に備える保険や将来の年金に備える保険など、すべての保険が「ヒト」に関わります。
生命保険における被保険者とは保険契約時に定めた「ヒト」であり、例えば死亡保障がある保険の場合は、被保険者が死亡すると受取人に保険金が支払われます。
生命保険では、保険金の支払い時の手続きが速やかに行われるよう、契約時に被保険者と受取人を明確に定めておきます。
この際支払われる生命保険の保険金の算定方法は、損害保険と異なり「定額払い」が基本です。
「定額払い」とは、保険金支払いの事由に該当した場合、事前に決められた金額が支払われることを言います。
損害保険とは
損害保険における被保険者は、対象となるモノによって異なります。
例えば、自動車保険であれば補償の対象は自動車であり、被保険者はその自動車を主に所有しているヒトです。
火災保険であれば補償の対象は家屋になり、被保険者はその家屋を主に所有しているヒトです。
夫婦共有名義であれば被保険者は夫婦二人になります。
なお、この際支払われる損害保険の保険金は「実損払い」が基本です。
「実損払い」とは、保険金額を限度として、物や財産の実際の損害額が保険金として支払われることをいいます。
自動車保険のほかには、家屋が被災した際などに補償される火災保険・地震保険といった保険が、損害保険に含まれます。
自動車事故に対する生命保険と損害保険の関係とは?
自動車事故の場合、「ヒト」も「モノ」も同時に損害を受ける可能性が高いです。
そのような場合、自動車保険・生命保険の両方から保険金の支払いを受けることができるのか気になるところです。
損害保険 | 生命保険 | |
被害者の場合 | 相手の自動車保険に対人賠償保険が含まれていれば、保険金が支払われる | 自分の加入する生命保険から保険金が支払われる |
加害者の場合 | 自分の自動車保険に人身傷害保険が含まれていれば、保険金が支払われる | 自分の加入する生命保険から保険金が支払われる |
自動車事故でご自身が被害者となり(ご自身の過失割合を0と仮定)、ご自身がケガや死亡した場合を考えてみましょう。
この場合、相手方が自動車保険に加入していて、そのなかに対人賠償保険が含まれていれば、ご自身の治療費や慰謝料などの実際の損害額が賠償金として支払われます。
例えば、損害額が5,000万円だった場合、相手方の自動車保険からは5,000万円が支払われ、ご自身で死亡時に3,000万円支払われる生命保険に加入していた場合、生命保険からは契約で定めた3,000万円の保険金が支払われます。
つまり、合計で8,000万円を受け取ることになり、たとえ対象が同じであっても、損害保険、生命保険のそれぞれから独立して支払われることになります。
次に、ご自身が加害者となり(ご自身の過失割合を100と仮定)、ご自身もケガや死亡した場合を考えてみましょう。
この場合、ご自身の自動車保険で人身傷害保険に加入していれば、ご自身の過失有無に関係なく、実際の損害額が保険金として支払われます。
また、生命保険に関しても、死亡された場合には死亡保障、ケガで入院治療が必要な場合には入院給付金など、契約内容に応じた金額を、過失の有無に関係なくご自身の生命保険から受け取ることができます。
生命保険と損害保険はどちらも加入すべき?
以上の内容から、「生命保険に加入していれば、人身傷害保険に加入する必要はないのでは?」と思う方がいるかもしれませんが、その考え方には注意が必要です。
人身傷害保険が、運転者本人やそのご家族、そして同乗者を対象とする一方で、生命保険の場合、被保険者となるのはご自身のみです。
ご家族や同乗者がケガまたは死亡してしまった場合の補償は、自身の生命保険ではカバーできないので、自動車保険に加入する際は、人身傷害保険にも加入しておかれることをおすすめします。
生命保険と損害保険は似たところがある?
自動車を運転する方なら全員が加入している「自賠責保険」は国土交通省管轄の政府保障事業により運営され“強制加入”として位置付けられています。
被害者救済を目的する対人賠償責任として死亡の場合は最高3,000万円が支払われますが、賠償額を算定する逸失利益が1億円を超えるケースも多くあり、その不足分の補填するために任意で加入する損害保険が存在します。
こうした「強制加入の自賠責保険だけでは足りない」という自動車保険における考え方は世間一般に広く認識されていますが、生命保険の場合も同様に、本来は「強制加入の公的保険だけでは足りないから任意で生命御保険に加入する」という考え方が前提にあることを、あまり意識されていない方が多いのではないでしょうか?
ある調査では、約半数の方が公的保険で得られる保障を確認しないまま任意加入の生命保険に契約しているというデータもあるようです。
自動車保険における「自賠責保険」とは異なり、強制加入であってもその保障内容を知らずにいる人は多いと考えられ、皆さんの中にも思い当たる方がいらっしゃれば、この機会にご自身の公的保険を確認してみることをおすすめします。
まとめ
今回の記事では、生命保険と損害保険の違いについて解説させて頂きました。
生命保険では加入する「ヒト」に対して保障を行いますが、損害保険では指定した「モノ」に対する補償を行っています。
また、保険金の算定方法や被保険者など、それぞれに違いがあることもご確認いただけたかと思います。
それぞれには似たところもあり、強制加入として国が運営する保障を補うために任意で加入する損害保険や生命保険の位置付けがあることもイメージいただけたのではないでしょうか?
ところで皆さんは、強制加入として運営される公的保険の社会保険料は、給与のうち何%を占めるかご存じでしょうか?
1割でも2割でも、自分が得た収入から必ず求められる支出があるなら、それをムダにしたくない!と思いませんか?
強制加入の「公的保険」と任意加入の「生命保険」について、詳しく知っておきたいと興味を持たれた方には、こちらの記事をおすすめします。
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