「老後はおひとり様だから、病気やお金の面が心配」
このように心配してFPに相談し、介護保険や個人年金保険といった保険商品に加入する人は多くいらっしゃいます。
しかし、老後の心配の種は自身の健康やお金だけではありません。
せっかく保険で備えていても、請求手続きができずに保険金を受け取れなくなる可能性についても考えておく必要があるのです。
今回は、老後に気になる保険金・給付金請求の問題について、今からできる対策とあわせて解説していきます。
おひとり様や認知症患者の増加で気になる老後対策
年々増えていく核家族や独居世帯。少子高齢化の増加もあいまって、「高齢のおひとり様」は今後も増えていくことが予想されます。
高齢のおひとり様については、認知症などの健康リスクもからめて老後の資金対策の必要性が取り沙汰されがちです。
たしかに資金対策は重要ですが、お金さえあればなんとかなるわけでもありません。
高齢で身体が不自由になったり、認知症や要介護状態になったりすると、用意したお金を受け取る「手続き」そのものが困難になる可能性もあるからです。
たとえば、老後資金対策として個人年金保険や介護保険に加入している場合。
筆者の元にも、老後が心配でこうした保険を複数加入しているお客様がよくいらっしゃいます。
ところが多くのお客様は、保険に加入することで備えができたと安心し、肝心の保険金・給付金受け取り時の手続きについて深く考えることがありません。
しかし、ご自身で加入している年金の請求は、原則として年金受取人であるご自身しか手続きできません。
「今具合が悪いから、手続きは家族に頼もう」ということができないのです。たとえ高齢で身体が不自由になっても、保険金・給付金の請求手続きをご自身で続けられるでしょうか?
また、保険金や給付金の受け取りで確定申告が必要になったとき、一人で申告できるでしょうか?
年齢を重ねると、誰しも身体が不自由になり、判断力や記憶力が低下していきます。
そんなときに保険の手続きをどうするのかも、資金対策とあわせて考えておきたい重要な問題です。
個人年金保険・介護保険で必要な手続き
高齢のおひとり様にニーズのある個人年金保険や年金型の介護保険は、毎年年金を受け取れるのが特徴です。
ただ、年金タイプの保険商品では年金を受け取るたび、つまり毎年請求手続きが必要になることはあまり知られていません。
受け取り時期になったら自動的に年金が振り込まれるわけではないのです。
年金の受け取りについて保険会社から毎年案内があり、そのたびに請求手続きを行い、受け取る流れになっています。
また、毎年受け取る年金は雑所得として所得税・住民税の課税対象となります。
年金額や所得の状況によっては、確定申告が必要になることも注意が必要です。
高齢や要介護状態になっても手続きできる?:
個人型年金保険や介護保険で手続きが困難になる状態として、予想されるのは以下の2つのケースです。
・年金型の介護保険
こちらは要介護状態・認知症など所定の状態になることで年金を受け取れる介護保険です。
ただ、ご自身が年金を受け取るときの身体状態・認知機能によっては、請求手続きが困難になってしまう可能性があります
・終身型の個人年金保険
終身型の個人年金保険は、生きている限り年金が支払われる頼もしい保険です。
そのため80才・90才になっても年金を受け取れますが、年齢を重ねて身体が不自由になれば、手続きが難しくなる可能性があります。
要介護状態ではなくても、高齢で記憶力が低下し、契約の存在そのものを失念してしまうことも想定されます。
上記の2商品は代表例として記載しましたが、この他にも一生涯保障が続く保険には気をつけてください。
終身型の医療保険やがん保険でも、自身の健康状態によっては給付金請求が難しくなるかもしれません。
保険で老後対策を考えている人は、あわせて老後の契約内容を管理し、代理で手続きしてくれる人を見つけて指定しておくことが大切です。
自分で請求できなくなった時に備えてできること
おひとり様の保険は、高齢や要介護状態、認知症などでご自身が請求困難になることを想定した対策が必要です。
たとえ家族・親族であっても、事前に備えておかなければ代理請求はできません。
そこで、あらかじめ以下の制度を活用し、代理で請求手続きしてくれる人を指定しておきましょう。
保険会社独自の制度である「指定代理請求制度」を活用する:
基本的には、保険会社の「指定代理請求制度」を活用してください。
この制度は無料で活用でき、子どもや孫、姪・甥などの直系親族や3親等以内の親族などをあらかじめ「指定代理請求人」として指定できます。
指定代理請求人であれば本人に代わって保険金・給付金を請求できるため、自身が意識不明で集中治療室に入ったり、長期入院したりするときにも心強い存在となります。
最近では、内縁関係・事実婚関係にある配偶者や同性のパートナーも指定代理請求人に指定できる保険会社が増えてきました。
家族や親族がいない人でも、同居して生計を一にしているパートナーがいれば、代理人に指定できる可能性があります。
まずは、保険会社に指定代理請求人制度の有無と指定できる人の範囲を確認してみてください。
国の制度である「成年後見制度」を活用して代理請求する人を指定する:
家族や親戚、特定のパートナーがいないなど、どうしても指定代理請求人制度を利用できない事情がある人は、「成年後見制度」を利用する方法もあります。
成年後見制度とは、認知症などで判断力が低下した人のために、その人の代わりに法律行為や財産管理ができるよう「後見人」を認める制度です。
成年後見制度であれば、家族やパートナー以外の第三者を指定し、保険金・給付金の代理請求を任せることができます。
成年後見制度には、以下2つの制度があります。
・法定後見制度:認知症や要介護状態が重度になってしまった「後」に利用できる。
家族などが本人の地域を管轄する家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て、約4か月程度で成年後見人が選任される。
成年後見制度の申し立てに数万~数十万円程度かかるほか、月額報酬も必要
・任意後見制度:自身が健康な状態でも、「事前」にあらかじめ信頼できると思う人に任意後見人になってもらうよう依頼・利用できる。
自ら公証役場で公正証書を記載し、任意後見契約を結んでおく必要がある。
任意後見契約書の作成に数万円程度必要
上記の成年後見制度は、後見人の選出に時間や費用がかかるうえ、選出した後見人を簡単に変えることができません。
その点、指定代理請求制度は無料で利用でき、書類送付だけで代理人の指定・変更が可能です。
可能であれば、指定代理請求制度の利用をおすすめします。
まとめ
おひとり様の老後対策となると、資金面ばかりがフォーカスされがちです。
しかし、せっかく資金を用意していても、高齢や要介護状態、認知症などで「契約の存在を忘れてしまう」「身体が不自由になり請求手続きが困難」という状態になる可能性は十分あります。
一人で過ごす老後に不安がある人は、元気なうちに専門家に相談しましょう。
また、ご両親や配偶者など、身近な人の保険加入状況を知らない方は、この機会に今回解説した観点で加入状況をチェックしてみてください。
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