老人ホームや介護施設は、運営主体、目的や入居条件によりさまざまな種類があります。
皆様は『老人ホーム』といわれてどのような施設を想像するでしょうか。
介護の世界で働いている方以外は『お年寄りをお預かりする介護施設全般』をまとめて老人ホームというように解釈されている方も多いのではないでしょうか。
実は老人ホームや介護施設は目的や入居条件、運営主体などによって様々な種類が別れており、サービス面や費用面、使用できる公的サービスなどが異なります。
近い将来、いざ親の介護が必要になった時、状態によってはこのようないわゆる『老人ホーム』『介護施設』への入居を検討されることもあるでしょう。
今回はそれぞれの施設の種類・特徴を紹介していきます。
老人ホーム・介護施設の種類一覧
まずは今回ご紹介する施設と特徴について運営主体に分けて一覧を作成しました。
公的施設一覧
民間施設一覧
このように一般的に『老人ホーム』とひとまとめにされがちな施設は多くの種類が存在しています。
介護の状態で考えた施設の使い方
とはいえ上記のように並べても「サービスの詳細がわからない」「結局どのような施設にすればいいのかわからない」というご意見もあるでしょう。
ここからは各施設の詳細とどのような用途や目的で施設が選べるのかについてさらに解説していきます。
介護が必要な状態にある場合に使う施設
まずは一部または生活全般に介護が必要な方が入居するべき施設について解説していきます。
特別養護老人ホーム(公的施設)
通称『特養』と呼ばれる特別養護老人ホームの入居基準は『要介護3以上』で介護保険の重症度が比較的高い方が入居する施設となります。(介護保険の重症度は要介護5が最高)
介護度の決定は寝たきりなどの生活状況だけでなく認知症の進行度合いなどでも決定されるため重度の認知症の方の受け入れも行っています。
ただし、人員配置として介護スタッフは24時間常駐していますが看護師等の医療スタッフは日中の配置義務だけで夜間は常駐していない場合が多いため高度な医療ケアが必要な場合は入居が難しい場合があります。
受けられるサービス(介護)は
- 食事
- 入浴
- 排せつ
- 起居動作
- 移動の介助
などの『身体介護』、
- 清掃
- 洗濯
などの『生活支援』、
そのほか
- リハビリテーション(機能訓練)
- レクリエーション(余暇活動・脳トレ)
などを受けることが可能です。
お部屋の構造として主に
- ユニット型個室
- 従来型個室・多床室
というタイプがあり従来型(旧型)は一部屋に複数の人数が同居するタイプですが最近では少人数でグループ(ユニット)をフロアで作りユニット単位でスタッフが介護に当たる個室タイプがプライバシーや介護の効率の問題から主流になってきています。
月額費用は10万円〜15万円程度で初期費用がかからないため、今回紹介している入居系の施設の中ではかなり安価です。
そのため非常に人気が高く、待機者が非常に多いことが問題です。
都市部や人口の密集する地域では数か月〜数年待ちになることも珍しくなく入居すること自体が難しい場合も。
ただし入居にあたっては順番制ではなく介護度以外にも家庭の状況など緊急度が高い順番になりますので待機が多い場合でも優先度が変更される場合はあります。
以上のような内容か
- 要介護3以上で状態が悪く自宅での生活が困難
- 24時間の介護が必要な方
は特養を検討しましょう
介護老人保健施設(公的施設)
通称『老健』と呼ばれる介護老人保健施設は在宅と病院の中間に位置する施設で、退院後すぐに在宅生活が難しい要介護1以上の方を対象にしています。
一部例外はありますが老健の持つ機能の目的は『在宅復帰』です。
そのため入居期間は原則3〜6か月となります。
受けられるサービスは食事・排せつなどの身体介護など特養で受けられるような介護サービスに加えて在宅復帰を目的とした
- 医師・看護師による医療的管理
- 理学療法士や作業療法士によるリハビリテーション
が手厚くなっていることが特徴です。
費用は部屋によって異なり、4人部屋で月額9〜12万円前後、2人部屋、個室は別途料金が加算されるシステムになっています。
介護療養型医療施設(公的施設)→介護療養院へ
介護療養型医療施設は、医学的管理を必要とする要介護1以上の方を対象にした介護保険施設です。
療養型という事で介護保険施設の中では医師の配置が手厚く
- たん吸引
- カテーテル
- 経鼻経管栄養な
などの医療的ケアに強いことが特徴です。
ただし2018年4月に介護医療院が創設されるとともに2024年3月末までに移行が必要となるため今後は病院主導の施設となっていきます。
費用は4人部屋で9~17万円前後、個室は特別室料が加算されます。初期費用はかかりません。
介護付き有料老人ホーム(民間施設)
介護付き有料老人ホームは介護スタッフによる経時的な介護サービスを受けながら入居を行うことができる施設です。
介護や人員配置などの基準をクリアした施設が『介護付き有料老人ホーム』を名乗ることができますので介護の専門性の高さでは民間施設の中では高いとされます。
- 要介護1~5までの方が入居できる:介護専門型
- 自立・要支援・要介護全ての方が入居できる:混合型
- 自立状態で生活できることを条件にした:入居時自立
というタイプが存在し、施設によってある程度特色があります。
サービス内容も特養同様全般的な介護サービスがその方の状態によって提供されます。
【有料老人ホームのサービス内容】
- 食事
- 清掃や洗濯などの生活支援
- 入浴や排せつ介助などの介護サービス
- リハビリ(機能訓練)
- レクリエーションやイベントなど
費用は入居時に支払う入居金と月額利用料がかかります。
要介護3以上など比較的症状が重度、または24時間の見守りや介護が必要な方が検討する施設です。
住宅型有料老人ホーム(民間施設)
住宅型有料老人ホームは要介護だけでなく『自立~要支援』の幅広い方が入居することができ、上記の介護付き有料老人ホームに比べて比較的自立度の高い方が入居する傾向があります。
サービス内容は介護付き有料老人ホーム同様様々な介護サービスを受けることができます。
介護保険を使ったサービスを使用するときは訪問介護や訪問看護、通所介護事業所と入居者が個別に契約を行う必要があります。
費用は入居時に支払う入居金と月額利用料金がかかります。
介護付き有料老人ホームとのすみわけとして、
- 現在は介護度は重度ではないが将来的に介護度が高くなった時を見据えて入居する方
- 介護が必要な配偶者と一緒に生活したい方
- 今後介護付き有料老人ホームを検討している方
などが対象となります
グループホーム(民間施設)
要支援2以上の65歳以上の認知症高齢者が入居する施設です。
特徴として少人数を1ユニットとして生活を行い介護サービスや機能訓練を行います。
料理や掃除などの家事は入居者同士で分担するなど共同生活の感覚がより強く、これは認知症患者に対しての自立生活の支援と精神的安定を目的としています。
あくまで共同生活をしていく場ですので重度な身体機能の低下や高度な医療的ケアが必要な場合は入居できない、もしくは退去の必要性がある場合があります。
費用は入居金や保証金などの初期費用と月額料金が必要になります。
生活が自立しているあるいは介護度が軽い方が使う施設
ケアハウス(公的施設)
60歳以上で自宅生活が困難、身寄りがなく独居が不安な低所得者向けの福祉施設という立ち位置のケアハウスは軽費老人ホームC型とも呼ばれます。
助成制度を利用できるため低所得者の方でも費用負担が比較的軽いことが特徴です。
『一般型』と『介護型』に種類が分けられ、一般型は食事サービス、安否確認、生活相談サービスが基本サービスとして提供され、それ以外の介護サービスは個人で介護事業者と契約をおこなう必要があります。
『介護型』は要介護1以上の方を条件として施設スタッフから介護サービスを受けることができます。
サービス付き高齢者住宅(民間施設)
サービス付き高齢者住宅(通称:サ高住)は60歳以上の方が入居できる賃貸借契約を行うマンションのような仕組みになっています。
特徴として相談員などが常駐し、安否の確認や生活相談サービスを受けることができます。
高齢者専門の住宅ですのでバリアフリー環境も整っており、自宅に住んでいる感覚で生活したいが身の回りのことに対して少し不安がある、すぐに相談できる環境に住みたいというニーズに沿った施設です。
一定の条件(特定施設入居者生活介護)を受けていない場合、施設単位での介護サービスは提供されておらずサービスを受けたい場合は訪問介護事業者などと個人で契約を行います。
料金は立地条件や建物、提供サービスによって差がありますが初期費用と月額料金がかかります。
シニア向け分譲マンション
サ高住が賃貸住宅なのに対し、高齢者を対象にした分譲マンションで、所有権を有し、売却、譲渡、賃貸、相続などが可能な資産となります。
サービスや施設の内容は中には温泉やプール、家事援助サービスなど様々です。
介護サービスは一般のマンションに居住しているのと同様、個人で契約を行う形になりますが、重度の介護状態になったときは有料老人ホームなどへの転居を検討するなどの対応が必要となる場合があります。
現在の状態に特に困難がないものの、将来的な不安や高齢者の生活状況に対応した住居を探している、資産として所有したい方におすすめです。
認知症の方に向いている施設(受け入れが可能な施設)
介護において大きな問題になっているのが認知症。ここまで紹介した施設の中には認知症に対応できる施設とできない施設があります。
ここでは認知症の方の受け入れが可能な施設をまとめました。
各施設の入居条件で比較
【公的施設】
【民間施設】
各介護施設の費用
介護施設にかかる費用は主に
- 入居時にかかる『入居一時金』
- 毎月必要になる『月額費用』
がかかることが一般的です。あくまで参考になりますが、ここまで紹介した施設の料金の目安は以下の通りです。
老人ホーム・介護施設を探す時のポイント
ここまで紹介してきた入居施設の多くは介護サービスを実施しており、親の介護を行っていく方にとっては働きながら介護していくために大きな介護負担がなく利用できるというメリットを持っています。
しかしながら、特別養護老人ホームを除き、高額の入居一時金と月額費用が必要となり金銭的負担が多くなるのがデメリットです。
介護施設を探す際は
- 必要なサービス
- 費用
- 場所
- 特徴(認知症特化など)
をポイントして探していきます。
この記事をきっかけに是非介護を受けるご本人、家族と将来のライフプランについて話合ってみてはいかがでしょうか。
【おすすめ】
当サイトは、皆さんの各種リテラシーをアップデートする情報やコラムを多数掲載しています。
特に、今回の解説に連動したこちらの記事はおすすめです。直下(黒いボタン↓)の 「続けてご覧になっていただきたい記事はこちら」 からご確認ください。
また、他の情報が気になる方には、下方の 「今回の記事に関連するおすすめ記事」 をおすすめします。お好みに合わせてご選択ください。
■ 続けてご覧になっていただきたい記事はこちら:
“親”の介護で離職して、”親”の介護に日々追われ、”自分”の老後は後まわし?
■ 今回の記事に関連するおすすめ記事はこちら:
- どちらを選択? 「在宅介護」 と 「施設介護」 のメリット・デメリット
- 介護費用の実態「いくらかけられる?」の選択は「人生」の選択です。
- 介護殺人の原因とその背景に迫る!対策と今後の課題
- 家庭内・介護施設における“高齢者虐待”はなぜ起こるのか?
- 親の介護に一時金1000万円を用意できる人は知らなくてもいい情報とは?
この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。