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家庭内・介護施設における“高齢者虐待”はなぜ起こるのか?

今後ますます加速する高齢化社会の中で起こる悲惨な実態… その原因と対策について考える。

 

認知症高齢者の増加、働き手の減少など日本の高齢化社会の問題は多くあります。その中の一つが『高齢者虐待』の問題です。

命の危険にもつながりかねない高齢者虐待は深刻化しており、私たちの身近にある問題です。

今回はそんな高齢者虐待の問題に触れつつ、その原因についても解説していきます。

 

 

高齢者虐待の現状

 

実際に高齢者虐待がどのくらいの件数で起こっているのか見ていきます。

 

養護者(介護者、家族等)による虐待の通報件数と虐待判断件数

 

 

介護施設従事者等による虐待の通報件数と虐待判断件数

 

 

表で示したように平成18年と令和2年を比較すると通報件数、判断件数ともに大きく増加していることがわかります。

また虐待の特性上、加害者・被害者ともに事実を隠したいという傾向があるため発見するのは困難と言われます。そのため顕在化している案件は氷山の一角で実際にはもっと多くの虐待が行われていると予測されます。

このような現状から最近では施設での高齢者虐待が報道され、2006年には『高齢者虐待防止法』が施行されるなど社会問題の一つとなっています。

 

 

高齢者虐待の具体例

 

『虐待』という言葉についてのイメージは暴力をふるうような直接的なものだけではありません、様々な虐待は主に5つの種類に分けられます。

(それぞれの虐待の定義については東京都福祉保健局HPより抜粋)

 

 

身体的虐待

 

暴力的行為によって身体に傷やアザ、痛みを与える行為や外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為を指します

身体的虐待の具体例

 

  • 叩く、つねる、殴る、蹴る、など痛みを負わすような行為
  • 認知症で徘徊する高齢者を身体拘束する、または部屋にカギをかける

 

 

介護放棄・放任(ネグレクト)

 

必要な介護サービスの利用を妨げる、世話をしない等により、高齢者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させることを指します。

 

介護放棄・放任(ネグレクト)の具体例

 

  • 食事を全く与えない、または一日一度のみコンビニ弁当を食べさせるだけ
  • 入浴や排せつなど清潔に関わる介護を行わず放置し、不衛生にする
  • 最低限の介護のみで、外部との関わりを持つようなサービスを利用しない
  • 尿を出さないために水分を与えない、便を出さないように食事を与えない
  • ケガや体調不良、それが予測できる場合に通院させない

 

 

心理的虐待

 

脅しや侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がらせ等によって精神的に苦痛を与えることを指します。

心理的虐待の具体例

 

  • 高齢者をあからさまに無視する
  • 思うようにできないことにイライラして恫喝してしまう
  • 高齢者の尊厳を傷つける誹謗中傷、嘲笑などを行う
  • 介護支援のアドバイスを無視し必要な介護サービスを利用しない
  • 高齢者の自己肯定感を下げる発言を繰り返す

 

 

性的虐待

 

本人が同意していない性的な行為やその強要を行ったり、性的羞恥心を喚起する行為、性的嫌がらせを行うことを性的虐待といいます。

 

性的虐待の具体例

 

  • キスや性器への接触、セックスの強要
  • 高齢者同士にキスをさせたりわいせつな行為を強要する
  • 失敗の罰として裸にして放置する
  • 異性の高齢者、入居者がいる前で排せつや更衣等を行う
  • 排せつの失敗などを本人のいる前で人に話す

 

などの行為が当てはまります。中には信じられないような行為も含まれますが実際に2017年には介護職員が90代の女性に対してキスの強要や性的虐待をおこなったという事で訴訟を起こすなど現実に存在します。

 

 

経済的虐待

 

本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限することを経済的虐待といいます。

 

経済的虐待の具体例

 

  • 年金や預貯金、カード等を管理し勝手に着服、窃盗する
  • 高齢者本人のお金を使いギャンブルを行う
  • 高齢者の資産(不動産や有価証券等)を勝手に売却する
  • 高齢者にお金を渡さない、また希望するものを買わない

 

 

今回は主な虐待の種類5つについて解説してきましたが、このほかにも程度は様々『人間としての尊厳を傷付ける行為』がたくさんあります。

中には信じられないような行為もありますが重要なのはこれらにはそれぞれ程度があり、特に家族が本人を無視するなどの心理的な虐待などは筆者が実際に何度も現場で目にした光景です。

このように意図的に行うものだけでなくこのような行為を無意識に行っている可能性もあります。

すでに介護を行っているという方は今一度ご自身の介護の方法について客観的な振り返りの機会をもってみてはいかがでしょうか。

 

 

家庭内の高齢者虐待の現状

 

冒頭で解説したように高齢者虐待は在宅で17000件以上発生しています。しかしあくまでこれは顕在化した件数であり実際にはもっと多くの件数の虐待が日々行われていると予測されます。

ちなみに全体の件数に占める上記5つの虐待は以下の通りです。

 

1位:身体的虐待(66.6%)

2位:心理的虐待(41.1%)

3位:ネグレクト(20.8%)

4位:経済的虐待(20.0%)

5位:性的虐待(0.4%)

 

また厚生労働省の報告によるとこれら虐待を受けている高齢者の78.9%が認知症を患っているという報告があるということにも注目すべきでしょう。

 

 

なぜ家庭内で高齢者虐待が起きるのか!?原因は?

 

厚生労働省の調査によると家庭内で発生した虐待の原因の順番は

 

1位:虐待者の介護疲れ・介護ストレス

2位:虐待者の障害・疾病

3位:非虐待者の認知症の症状

 

となっています。特に1位の『介護疲れ・介護ストレス』に関しては25%を占めています。

『介護疲れ・ストレス』は介護を行う人の多くが抱えている問題であり下記のような負担や疾患に発展する可能性があるため注意が必要です。

 

  • 経済的負担による心理的なストレス
  • 将来的な経済的不安や介護への不安が積み重なることで『介護うつ』の状態に
  • 介護によるケガや痛みにより身体的、心理的ストレスを感じてしまう

 

また、注目すべきが『性別による差』です。厚労省の調査では虐待を行った人の内訳において息子(40.5%)、夫(21.5%)と合わせて60%以上が男性によるものと報告しています。

これは日本の古い風習の妻や嫁が介護を行うという常識が薄れ、核家族化などの要因が重なり男性の介護者が昔よりも増加していることが原因です。

また主たる介護者である息子様の場合は介護の為に仕事を辞めてしまう『介護離職』を行っている場合もあります。慣れない家事負担などが増えるストレスもこのような状況を助長しているのかもしれません。

 

最後に環境的な問題、自宅は『閉鎖的な空間』であることも要因としてあげられます。

家庭内では外部に介護の様子を見られることがないため心理的に障壁が下がってしまいます。また家族という深い関係性ゆえに普段のコミュニケーションが虐待に発展したとしても虐待しているという意識を感じにくいという事も要因の一つです。

 

 

介護施設内での高齢者虐待の現状

高齢者虐待は自宅だけでなく介護施設でも発生します。

在宅と違う特徴の大きな点としては

 

  • 心理的虐待が在宅と比較して少ない
  • 身体的虐待の事例として身体拘束の事例がかなり多い

 

ということです。

自宅と違い周りの目が多い、一度に複数の利用者のお世話をする必要がある介護施設ならではの特徴といえます。

介護施設で虐待が発生する要因で特徴的なのが、人間関係や激務によるストレスにより負担を感じることがあるということです。このような職場環境の悪化からストレスのはけ口として虐待行為につながっているという事があります。

実際に2020年明石市の介護施設で起きた虐待事件では16時間半連続の労働時間など過酷な労働環境と改善がなかったことも原因の一つと言われています。

 

 

まとめ

 

ここまで高齢者虐待についてお話してきました。今後も高齢者が増える中で最も重要なことは高齢者虐待は人間としての尊厳を踏みにじるだけでなく、一歩間違えると命の危険性を招きかねないという事です。

ひょんな事をきっかけとする些細な行為も常態化することで今後大きな事件に発展する可能性も否定できません。

そしてなにより、ほとんどの人が介護を受ける世の中でこの記事を読んでいる方についても他人ごとではありません。

将来来るであろう介護による心理的負担、経済的負担を予測し今から準備しておくことが費用に重要な事といえます。

 

 

【エピローグ】 もし、このようにお考えなら

 

超高齢化社会を迎え65歳以上の人口が約4人に一人となった現在の日本では、社会問題と化した「介護」がもはや避けては通れないリスクとなりました。その課題の中心にあるのが「担い手問題」「費用負担問題」の二重苦であり、いずれも現役世代の皆さんに降りかかってくる問題です。

今や7割を占める夫婦共働き世帯においてどちらかが担い手になれば、それは同時に収入ダウンを意味することになります。また、費用は親の年金で何とかなると考えている方が多く、直面して初めて頭を抱える方が少なくありません。

 

《参考》

介護費用(月平均)8.3万円/生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」

厚生年金(月平均)14.6万円、国民年金(月平均)5.6万円/厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和2年度)」

 

他方、本来なら頼りにしたい社会保障も財政難に直面しており、国民の負担は増加傾向にあります。

 

《参考》

利用者の自己負担割合:創設時( H12年度)1割から、現役並みの所得がある場合は3割へ(H30年8 月制度改定)

40~64歳の月平均介護保険料:H12年度 2,075円から、令和2年度 5,669円に増加/厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」

 

かかる状況下、生活苦に伴うストレス等を原因に殺人まで惹起する深刻な問題である一方で、現役世代の大半は目の前の生活に追われ何ら対策を講じていないことも多く、実際に介護が発生してから後悔する方が後を絶ちません。

 

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