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障害年金の対象者は?受給条件は?よくある誤解ってなに?

障害年金は複雑…「本人以外も相談できるのか?」から「申請先はどこ?」まで徹底解説!

 

著者は医師として地方中核病院に勤めています。

働けなくなって、障害年金や保険が必要な患者さんを診察することもあります。「障害年金」は複雑な制度ですが、理解しておくことで自分の身を助けることができます。病気やケガになってから、生活費や医療費を確保するためにもしっかりと公的保障でどの程度の保障があるのかを理解しておきましょう。対象者や受給の条件、申請方法について解説します。

有事のために今のうちから学んでおきましょう。

 

 

「障害年金」ってなに?

 

病気やケガで、生活や労働に支障がでたときに受け取ることができる年金です。

障害年金には2つの種類があって、主に働き方によって加入している制度が異なります。

 

  • 障害基礎年金 (しょうがいきそねんきん)
  • 障害厚生年金 (しょうがいこうせいねんきん)

 

障害になった病気の「初診日」に加入している年金制度によって支給される年金が変わります。

※初診日:障害の原因になった病気やケガについて、初めて医師の診療を受けた日

 

具体的には国民年金の加入者には「障害基礎年金」が支給され、厚生年金の加入者であれば「障害基礎年金」と「障害厚生年金」のどちらも支給されます。

ただし、障害等級が1級と2級のときに障害基礎年金を受給できるため、障害等級が3級であれば障害厚生年金のみ支給されます。

 

障害基礎厚生年金

 

 

 

障害年金の対象はどんな人?

 

障害年金は広範囲の病気や人をカバーしています。

日常生活や労働に支障がある場合は、障害年金を受給できる可能性が十分にあります。

身体の障害 (糖尿病の合併症、脳卒中、交通事故) だけでなく、精神疾患や発達障害も対象になります。

 

障害年金の受給病名

 

 

 

障害年金を受けるために必要な3つの条件

 

障害年金を受給するには、以下の3つの条件があります。

 

  1. 初診日が特定できる
  2. 保険料の納付要件を満たしている
  3. 「障害認定日」に「障害認定基準」を満たしている

 

1つずつ解説します。

 

 

1.初診日が特定できる

 

「初診日」とは障害の原因となった病気やケガで、初めて医師の診療を受けた日のことです。初診日の証明のためには病院で証明書を作成してもらいます。「受診状況等証明書」などが証明書になります。また、必要な書類一式は年金事務所でもらうことができます。

 

 

2.保険料の納付要件を満たしている

 

要件1と2のどちらかを満たせば障害年金を受け取れます。詳細は下記に記載しましたが、要約すると以下のようになります。

 

  • 要件1:初診日まで保険料を納付している。あるいは免除されている。
  • 要件2:直近1年間の保険料未納がない (特例措置)

 

※要件1:正確には「初診日」のある月の前々月までの、公的年金に加入している期間の3分の2以上の保険料が免除または納付されている必要があります。例えば、5月に「初診日」がある場合には国民年金の加入から3月 (5月の前々月) までの期間の3分の2以上の保険料が免除または納付されている必要があります。

 

※要件2:初診日に65歳未満で、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がない。

 

 

3.「障害認定日」に「障害認定基準」を満たしている

 

「障害認定日」とは、初診日から1年6ヶ月が経過した日、またはその期間内に治った日 (症状が固定された日) をいいます。例えば初診日が2022年4月1日であれば障害認定日は2023年10月1日です。それ以前に症状が固定されれば、その日が障害認定日です。

 

障害年金を受給するには「障害認定日」に、「障害認定基準」を満たしている必要があります。障害認定基準については日本年金機構のホームページ (国民年金・厚生年金保険 障害認定基準) に細かく記載しています。症状ごとに記載してあります。難しいですが、気になる方は参考に見てみましょう。

ご自身やご家族の症状が、障害認定基準に合うかどうかは最寄りの年金事務所に相談してみた方がわかりやすいと思います。

 

以下に細かな条件を記載します。

 

  • 1年6ヶ月の時点で症状が安定していたとしても、65歳に達するまでの間に症状が悪化した場合は、そのとき請求できます。
  •  一定の障害の場合は、1年6カ月を待たずに障害認定日を迎えることがあります。
  • 日本国内に住んでいた60歳以上65歳未満の間に障害が生じ、その状態が続いている場合は、65歳までに請求すれば受給できる可能性があります。
  • 初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには、障害手当金(一時金)が支給されます。

 

 

 

障害年金は年間にどれくらいもらえるのか?

 

「障害基礎年金」だけを受け取るのか、「障害厚生年金」も受け取るのかによって、支給額は変わります。障害等級や配偶者・子どもの有無でも支給額が変わります。

 

「障害基礎年金」

障害基礎年金は定額です。等級と子どもの数で支給額が決まります。

 

 

「障害厚生年金」

 

収入と配偶者の有無で支給額が変わります。計算式がややこしいですが、一般的には収入が多い人ほど、障害厚生年金も多くもらえます。

 

 

「障害基礎年金」

 

障害基礎年金は定額です。等級によって支給額が決まっています。

 

 

子ども (18歳未満、障害者は20歳未満) の人数による加算は以下のとおりです。

 

 

例えば、障害等級1級で子どもが2人いる家庭であれば

975,125 + 224,500×2 = 1,424,125円が年間にもらえる障害年金の額になります。

 

 

「障害厚生年金」

 

収入と配偶者の有無で支給額が変わります。一般的には収入が多い人ほど、障害厚生年金も多くもらえます。

 

障害厚生年金は、以下のように計算をします。

 

 

「報酬比例の年金額」という部分がそれぞれの収入によって変わる部分です。この計算はとても複雑です。収入や等級によって金額差があるということだけ、知っておきましょう。

 

 

申請するタイミングはいつ?

 

申請するタイミングには以下の2つのパターンがあります。

 

  1. 障害認定日
  2. 事後重症

 

 

1.「障害認定日」による請求

 

障害認定日に障害等級が1級、2級、3級 (厚生年金のみ)の状態にあるときに、「障害認定日」以降に申請をして受給する。

 

 

2.「事後重症」による請求

 

障害認定日に障害等級が1級、2級、3級 (厚生年金のみ)の状態にないときでも、その後に症状が悪化し、等級に該当する障害の状態になったときに請求する。

 

 

障害年金の申請先はどこ?

 

基本的には年金事務所です。

障害基礎年金の場合はお住まいの市区町村窓口でも対応しています。

障害状態でご本人が窓口に行くことができない場合は、ご家族などの代理人が委託申請することも可能です。

 

 

障害年金についてのよくある誤解

 

  1. 収入があると、障害年金を受給できない?
  2. 国民年金に入っていない20歳未満は受給できない?
  3. 障害年金の相談は、本人しかできない?
  4. 障害者手帳を持っていないと障害年金を受給できない?

 

答えはいずれも「ノー」です。順に解説します。

 

 

①収入があると、障害年金を受給できない?

 

過去の調査 (「年金制度基礎調査」令和2年度) によると障害基礎年金と障害厚生年金をどちらも受給している人に限っていえば、84.2%もの人が何らかの形で働いて収入を得ています。

障害年金は普段の収入から社会保険料を支払って積み上げた年金をもとに支給されるものです。そのため、生活や労働に支障のある人が、何らかの理由をつけられて受給できないことはほぼないのです。

 

 

②国民年金に入っていない20歳未満は受給できない?

 

初診日が20歳未満の場合でも、20歳以降も障害が続いていれば受給できるケースは多くあります。該当の人は、お近くの年金事務所に相談してみましょう。

 

 

③障害年金の相談は、本人しかできない?

 

ご家族のみでも、年金事務所への相談は可能です。ご本人の委任状が「ある」場合と「ない」場合の必要書類について列挙します。

 

 

ご本人の委任状は年金相談を委任するとき (日本年金機構ホームページ)からPDFでダウンロードできます。

 

 

④障害者手帳を持っていないと障害年金を受給できない?

 

勘違いされやすいですが、障害者手帳と障害年金は「まったく別の制度」です。

そのため、障害者手帳の有無は障害年金が受給できるかどうかに関係がありません。障害者手帳の認定対象外の疾患でも障害年金を受給できることがあります。

 

 

申請に困ったときは専門家に相談しましょう

 

病院によっては、精神保健福祉士や社会福祉士などのスタッフが手続きを手伝ってくれる場合があります。

そうでなければ、最寄りの年金事務所への相談や社会保険労務士に手続きの代行をお願いしてもいいでしょう。

 

手続きは煩雑になることも多いです。専門家に相談することですんなりとうまく行くことも多いので、ぜひ活用してみましょう。

働けなくなる状態は突然やってきます。元気なうちに公的保障について学んで、必要な保障額について考えておきましょう。また、障害年金の他にも障害者を支援する社会制度として、身体障害者手帳、介護保険、障害福祉、労災保険、生活保護など多数の制度があります。障害年金と相補的に利用することができる制度です。これらについても学んでおきたいですね。

 

 

 

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