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要介護になる主な原因第1位がここ数年で認知症になったワケ

脳梗塞や脳卒中からではなく、認知症で要介護になる人が増えたそのワケは?

 

皆様は日本において介護が必要となる原因疾患の1位はなんだと思われますか。

一般的なイメージとして、がんや脳梗塞が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。

確かにかつてはいわゆる脳卒中が介護が必要となる原因の1位でしたが、ここ数年1位は『認知症』になっています。また認知症患者は年々増加しています。

今回の記事では認知症にフォーカスし、なぜ認知症で介護が必要となる人が増えているのか解説していきます。

 

変化する要介護の原因

 

内閣府発行、最新の『平成30年高齢者社会白書』では要介護原因となった疾患について

 

1位:認知症(24.3%)
2位:脳血管疾患(19.2%)
3位:高齢による衰弱(11.2%)
4位:骨折・転倒(12%)
5位:関節疾患(6.9%)
6位:心疾患(3.3%)

 

と報告しています。

しかし認知症はもともと原因の1位だったわけではなく、介護保険制度が始まった2000年からしばらくは脳血管障害が圧倒的な1位でした。

2001年時点では認知症は4位で年数を重ねるごとに徐々にランキングを上げ、2013年ごろからは1位となり現在では全体の約4分の1を占める原因となっています。

 

 

認知症患者増加の原因

 

厚生労働省の報告では2020年65歳以上の認知症有病率が16.7%で患者数は602万人で『6人に一人が認知症』であるとしています。

また今後認知症患者は増えていくと予測され2040年には有病率が増加し953万人となると報告されるなど少子高齢化社会にともない、すでに社会問題になっています。

なぜ認知症はこれほどまでに増加し、今後も増えていく可能性が高いのでしょうか。

主な原因としては以下のようなものが考えられます。

 

 

原因その1:平均寿命が伸びた

 

最も大きな原因はそもそも日本の平均寿命が伸びたことにあります。
厚生労働省の「簡易生命表(令和2年)」によると2020年の日本人の平均寿命は

 

  • 男性:81.64歳
  • 女性:87.74歳

 

となっています。

また、認知症の現在の有病率は

  • 80~84歳:22.4%
  • 85~89歳:44.3%

 

となっており年齢が高くなるほど有病率も高い傾向にあります。

ちなみに内閣府の報告では日本人の平均寿命は

 

  • 男性:84.19歳
  • 女性:90.93歳

 

まで伸びると予測されており、今後も平均寿命の延長に伴い認知症患者はどんどん増えていくと考えられます。

 

 

原因その2:抗認知症薬の販売

 

「抗認知症薬」が発売されたのであれば認知症はへるのでは?と疑問に持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、一般的に治療薬が発売されると、その薬を使う病気の診断数が増える傾向があります。

そのためこれまで認知症の初期症状等で「物忘れ」程度で考えられていた軽度の認知症患者に対しても診断名がついたことで患者数が増加したと考えられます。

実際に認知症以外で代表的なのが「うつ病」です。

うつ病の場合、欧米の先進国で抗うつ薬が発売された1990年代に日本でも1999年の新薬が販売されてから6年間で患者数が2倍に増加したという報告があります。

 

 

原因その3:介護保険サービスの考え方の変化(認知症対応型)

 

介護保険制度自体も認知症患者が要介護認定を受ける原因のおおきな一つです。

介護保険がスタートした2000年当初はいわゆる『寝たきり型』と呼ばれるものでした。

以前は介護イコール寝たきりという考え方が強く「寝たきり患者を作らない、減らしていこう」という方針だったんですね。

その後介護保険が続き、法改正が行われるにつれ認知症が介護において大きな要因になっているという事がわかってきたことで介護保険の考え方自体が「認知症対応型」へ大きく舵を切られていったのです。

介護認定を受ける際の調査員の質問項目には認知症が加えられ、入居や在宅サービスにも「認知症対応型」というものが作られています。

事実最近では身体機能の低下のみで要介護3以上の高い等級がつくことが減ってきており、一方で認知症患者に対して高い介護度がつく傾向を現場で感じることが増えてきました。

今後も高齢者の増加、更なる寿命の増加が考えられますし、要介護になる原因に占める認知症の比率はこれからも上がり続けるでしょう。

 

 

男女別にみた要介護の原因

 

先ほど提示させていただいた認知症になる原因の順位は男女を合わせたものでしたが、これを男女別に見ていくと特徴的なのは

 

  • 男性:脳血管障害が1位
  • 女性:認知症が1位、脳血管障害が5位

 

ということになります。

一般的に

 

  • 脳血管障害、心疾患は突然起こり倒れるイメージ
  • 認知症は徐々に症状がすすんでいくイメージ

 

に分けられるため、

男性は『突然ばったり倒れ要介護状態に突入しやすい』

女性は『加齢に伴って徐々に動けなく(認知症)なり気が付けば介護が必要な状態』

となりやすい傾向にあると言えます。

これらの事実から家族様の将来的な介護を考える際は急に介護が必要になった場合の備えを考えておくことと将来介護が必要になるかもしれないサインを見逃さないという2つの視点が必要になります。

 

 

死因の順位と要介護の原因は異なります

 

実は要介護となる原因の順位は死因とは異なります。

 

 

上記の図は令和2年に厚労省から報告された人口動態統計をもとにした死因の順位です。

 

  • 1位:悪性新生物(がん)
  • 2位:心疾患
  • 3位:老衰
  • 4位:脳血管疾患
  • 5位:肺炎

 

同様に2011年~2016年のデータを比較すると

 

  • 1位:悪性新生物
  • 2位:心疾患
  • 3位:肺炎
  • 4位:脳血管障害

 

となっています。

上記のうち『老衰』はそもそも過去のデータ時点では死亡診断書にあまり書かれなかったということ、肺炎は『肺炎』と『誤嚥性肺炎』に診断名が分けられたことが順位変動の原因になっています。

つまり死因については要介護の原因と異なり、ここ最近ではほとんど変化は見られません。

医療と介護に大きく関わるのはこの中でも脳血管障害でしょう。

実は脳血管障害は1980年までは死因の第一位となっていました。その後医療の発達に伴い脳血管障害で命を落とす方の人数は減っており現在では4位となっています。

しかし脳血管障害の問題点は、生存後に片麻痺(体の片側が麻痺して動かしにくくなったり感覚の低下などを起こす)や失語症などをはじめとした高次脳機能障害などの後遺症が高い確率で残ることです。

これらの後遺症は人によって重症度は異なりますが日常生活に支障を及ぼすものが多く、介護が必要となります。

脳梗塞後、救われる命が多くなったことは喜ばしいことです。

しかし、脳梗塞後の介護は認知症同様に大変なものになることも予測されます。また後遺症がどの程度まで回復するのか予後予測が行いにくいということも後遺症の難しいところです。

脳梗塞は男性に多く、急に起こるものですが搬送されたあとはしばらく入院生活が続きます。

自分の家族が脳梗塞になってしまったときはあらかじめ退院後の在宅生活における介護を想定し、早い段階での話合いや介護保険サービスの申請に動くことが重要です。

 

 

認知症時代に突入。知識を持っておく必要がある

 

いかがだったでしょうか。

このように認知症はここ20年間というわずかな期間で要介護の原因第一位にまで昇り詰めるなど増加の一途をたどっています。

認知症は直接の死因になるわけではなく、現段階では一度発症してしまうと亡くなるまでつきまとう疾患です。

現在高齢者の親を持つ世代は自分の親がいつ認知症になってもいいように備えを行っておく必要があります。

記事でも解説したように認知症は徐々に発症し、進行していきます。

自分の親の変化に気づき事前に対策を打てるように認知症の症状などについての知識をもっておくことも重要です。

 

 

 

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