親介護による離職から収入ダウンのWパンチを救う制度が国にも会社にもあることをご存じですか?
親の介護、特に自宅で介護を行う際に問題になるのが介護者の『仕事との両立』です。
中には両立が困難になり、仕事を辞めてしまう『介護離職』を決断される方もいますが、仕事を辞めて介護に専念すると収入がなくなり『共倒れ』の原因になってしまいます。
とはいえ介護と仕事を両立しながらおこおなっていくのは相当な覚悟と体力が必要になるもの。
このような方をサポートするため国や会社には重大な制度があることをご存じでしょうか。
今回の記事では介護と仕事の両立を目指す方のご質問にお答えしながら、『働きながら介護する方をサポートする』ための2つの重要な制度についてご紹介していきます。
介護するために仕事を辞めるべきなのか!?
「子供が親の介護をするということになるとやっぱり仕事を辞めて介護に専念するべきなんでしょうか?」
「何とか仕事を続けながら質の高い介護を行うことはできないものでしょうか?」
といったお話は介護の現場で良く聞かれる質問です。
結論から言うと仕事は辞めず、両立する道を検討するということが非常に重要です。
ただしそのためには
- 介護保険サービスを賢く利用する
- 補助金などの制度を理解する
- 介護が必要になった際の備えをしておく
ということが必要になります。
よっぽどの事情がない限り「介護に専念するために仕事を辞めます!」と気合の入った人をみると私は止めるようにしています。
それは『介護離職』は結果として不幸な結末を及ぼす可能性が高いからに他なりません。
介護離職をした後の現実
まず、介護離職したあとに真っ先に訪れる結果が『収入がゼロになる』という現実です。
この記事をご覧になっている方の中には
『親の年金があるじゃないか!』
『親の介護が終わってから復職すればイイじゃないか!』
という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし重要なのは
- 介護をしている間に本来稼げるお金を稼ぐことができない
- 復職後は今の年収から大幅に下がることが多い
- 親の介護は何年しますか?
という事なのです。
親の介護は何年しますか?(できますか?)
親の介護が終われば復職すればイイ。
とお考えの場合は平均的な介護にかかる期間を見て実際に離職するかどうかを考えたほうが良いかもしれません。
現在日本の平均寿命は年々伸びてきておりますが、それに伴い介護や不健康な状態になるまでの『健康寿命』というものがあります。
つまり平均寿命から健康寿命を引いた年数がおおよそ、介護や病気との闘いが続く期間なのです。
厚生労働省の発表によると平均寿命と健康寿命の差は令和元年時点で
- 男性:8.4年
- 女性:12.35年
となっています。
このような結果を見てまずは離職期間が平均で8年〜12年あるという現実を受け止める必要があります。
介護期間は損失です
例えば現在年収450万円の方が急にお仕事を辞めた場合の事をイメージしてみましょう。
仮にお母さまが平均的な寿命と健康寿命を全うした場合、介護に専念する期間は12年となります。
つまり単純計算すると『450万円×12年』で5400万円の損失が生じることになります。
基本的に年収は年齢と共に上がっていくと考えると実際にはこれ以上の損失があると言ってもいいでしょう。
親が亡くなった後は『あなただけの人生』が再開されます。
その時にこれだけの貯金ができないということを認識しておく必要はありますね。
精神的・肉体的負担の上昇
「なぜ介護に専念するために仕事を辞めるのか?」という質問をすると多く返答があるのが
「介護は体力がいるから仕事をしながらはとても体力(精神力)が持たない」
という理論です。
しかし実際平成24年に報告されたデータでは介護の為に仕事を辞めた人の
- 64%が精神面で負担が増した
- 56%が肉体面で負担が増した
と回答しています。
介護が肉体的に負担のかかる作業であるというのは想像が付きやすいですが、慣れない介護や思い通りにならないこと、収入が減ったことによりストレス解消がうまくできなくなるなどの原因により特に精神面に影響が出ているのが特徴的ですね。
仕事をしながら介護を行うということはもちろん大変ですが、介護に専念した場合でもこれだけ自覚的な負担度が増すということを理解したほうが良いかもしれません。
『介護休業』『介護休暇』をうまく使いましょう!
ここまで『介護に専念するための離職はヤバいです!』ということについて説明しました。とはいえ、バリバリ仕事をしている人にとって介護は肉体的・精神的に大きな負担を及ぼす事は事実です。
時には介護の為に休んだり、遅刻したり早退したり。
職場に対して気を使い、迷惑がかかるという精神的負担も増します。
しかし自分だけで抱え込んでしまい仕事を辞めてしまうのは非常にもったいないことです。
なぜなら日本では介護を理由に仕事を休むことができるという事が法律で定められているからです。
それが『介護休業』『介護休暇』という2つの重大制度です!
『介護休業制度』は介護対象者1人につき通算93日まで休みをとることができる制度です。
これは93日間連続で使用するまたは上限3回に分けて使用することができます。(原則、2週間前までに書面で勤務先に申請が必要)
『介護休暇制度』は介護対象者一人につき年5日、介護休業ほどの申請を必要とせずおやすみをとることができる制度です。
時間単位や必要勤続期間を満たしていればパートやアルバイトでも使用可能な制度です。
このように日本では育児休暇などと同じように介護をしながら働く人をサポートしてくれる制度があります。
働く人の権利でもありますから一人で抱え込まず、まずは上司などに思い切って相談してみましょう。
93日の介護休業は賢く分けて使う
とはいえ93日は約3か月間で、毎日介護をする方にとっては少ないような気もしますよね。
そのご意見はもっともで、93日だけで介護を完結するのは不可能です。
介護休暇は『介護するための休暇』ではなく『親の介護をマネジメントする期間』として使うことが重要です。
具体的には
- 親が介護サービスに慣れるまで見学する
- 施設探しをする
- ケアマネジャーなど専門職との協議の時間
- 看取りの期間
などに使用し、ご自身が仕事をしている間でも介護のサイクルがうまく回るように専門家力を借りながらマネジメントを行っていきましょう。
決して介護が必要になったからと言ってただただ93日間ひたすら直接介護を行い続けるために使うことはおすすめしません。
介護は最初と事前準備が重要
上記で『介護をするにはマネジメントが重要』という事を説明しました。
将来の介護で皆様が『介護離職』しないために最も重要なマネジメントが実際に本人と介護について事前に協議をしておくということです。
まず重要なのはそもそも『家or施設』という事です。
実際には要介護度が上がっていくと施設で介護を行う事が多いデータが出ており、現実的には要介護3以上になってくると自宅で見れる割合がかなり減っていることがわかるかと思います。
事前の協議では親もしっかりとしており、施設への入所に難色を示すこともあるかと思います。しかし重要なのはあなたの人生であり、親の死後はあなただけの人生が再開します。
また親同様にあなたにも介護が必要な時期がやってくる可能性は大いにあるのです。
そのあたりをしっかりと考え事前に意思表示と将来の話をしておくことが非常に重要です。
介護保険をうまく活用しましょう
とはいえ介護とはお金がかかるもの。介護が始まった先のお金の使い方のイメージも重要ですよね。
本記事で介護にかかるすべての費用を網羅して紹介するのは難しいですが、日本には介護保険制度があります。
この記事をご覧になっている方はすでに介護保険料を納め始めている40歳以上の方も多いのではないでしょうか。
実際に在宅介護が始まったときかかるお金の中心はこの介護保険を使ったサービスの『自己負担分』の支払いです。
介護保険を利用すれば収入によって異なるものの(1〜3割)、ほとんどの方は1割負担でサービスを受けることができます。
実際に1万円の介護サービスの場合、支払いは1000円で済むという計算ですね。
つまり介護費用の支出を抑えるためにはできるだけ介護保険でまかなえる制度を賢くプランニングし使っていくということが重要になるわけです。
また介護を行っていく上で見逃せない支出が『医療費』です。ほとんどの方は通院や自宅での往診などで介護費+医療費を支払っていかなければなりません。
医療保険制度では表のように年齢が上がるにつれて自己負担は軽くなっていきます。
歳をとっていくほど医療費がかかりそうというイメージがありますが、実は歳をとるごとに負担は減っていくという事を知っておくことで反射的に仕事を辞めるということを踏みとどまるための材料になりますね。
さらに介護費と医療費は人によって『支払い限度額』というものがあります。
限度額を超えた分は申請をすれば戻ってきますので、そのあたりも安心材料としていただければと思います。
いかがだったでしょうか。
介護度によって難易度が異なるとはいえ、現状の制度をうまく活用すれば介護と仕事を両立することは不可能ではありません。
むしろ介護離職の後に待ち受ける不幸も大きいため慎重に考える必要があります。
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