日本におけるガンの検診では、主に問診や画像検査が行われています。
例えば、胃ガン検診であれば内視鏡検査、乳ガン検診であれば乳房のレントゲン検査、肺ガンであれば胸部レントゲン検査を受けることができます。
裏を返せば、多くのガン検診では視覚的にガンを捉えられるようにならなければ、検査上はガンであると診断することができないことを意味しています。
ガンを検査で視認できるようになるには、数センチ大に成長するまで分からないことがほとんどであり、これが現在のガン検診の限界でもあります。
つまり、我々が早期発見できると信じている既存の検診でガンが発見できたとしても、すでに発生してからそれなりの期間が経過したガンを発見しているに過ぎないということです。
ほかにも、ガン検診のコストや拘束時間、身体的苦痛など複数の課題があり、ガンの検診受診率は一向に上がりません。
そこで、近年はこういった課題を解消するため、多くの最先端技術を駆使した検査が開発され、実用化を目指しています。
特に、低侵襲かつ正確な検査が求められる中、「N-NOSE」と呼ばれる検査が非常に注目を浴びています。
そこで本書では、1滴の尿でガンを検知できる「N-NOSE」について詳しく解説していきます。
<既存のガン検診の限界点とは?>
日本人のガン検診受診率はガン全体で約40%であり、先進国の中でも非常に出遅れています。
これは検診の費用が高額、かつ検査所要時間が長く、また検査には身体的苦痛を伴うことが起因しており、構造上の問題があると考えられます。
そのほかにも、患者側のファクターとしてはヘルスリテラシーが低い点も問題の1つだと考えられます。
具体的にそれぞれを解説していきましょう。
- 費用が高額である
日本においては、厚生労働省の指令のもと各市町村におけるガン検診を推進していますが、そのうち公費助成が得られるのは基本的に胃ガン、肺ガン、乳ガン、大腸ガン、子宮頚ガンのみです。
また、指定の受診間隔は肺ガンや大腸ガンで年に1回、乳ガンや子宮頚ガンや胃ガンに関しては2年に1回とされています。
さらに、若年者での予防が必須である子宮頚ガンを除き、胃ガンは50歳以上、肺ガンや乳ガンや大腸ガンは40歳以上からでないと公費助成が得られません。
つまり、ある程度若年のうちから早期にガンを予防するためには、公費助成は得られないため自費で検診を受ける必要性があるのです。
自費で検診を受ける場合は、医療機関にもよりますがどの検診も最低1万円は掛かる上に、詳しい検査を受けようと思えばさらに費用がかさんでしまいます。
自費での検査が高額である以上、多くの世代でガン検診が進まないのは仕方ないのかもしれません。
- 検査所要時間が長い
次に、検査所要時間の長さも問題です。
肺ガン検診における胸部レントゲン検査などであれば検査自体は数分で終わりますが、乳ガンに対するマンモグラフィ検査や胃ガンに対する内視鏡検査であれば、1人あたり30分、場合によっては1時間ほど掛かる可能性もあります。
さらに検査以外の待ち時間も発生するため、検診を受けるだけでも仕事を休む必要があります。
全身のガン検索ともなれば、1泊2日の検査入院が必要な場合もあります。
日本の医療機関では、診察を受けるまでに平気で1時間以上待たなくてはならないこともザラで、こういった所要時間の長さがハードルになっています。
- 身体的苦痛を伴う
特に、乳ガン検診におけるマンモグラフィ検査では乳房の疼痛を訴える女性は少なくありません。
また胃ガン検診における内視鏡検査も、事前の絶飲食が必要であり、検査時の咽頭部痛や嘔気など身体的苦痛が多く伴います。
検査に伴う身体的苦痛が原因で、検査を受けない方も少なくありません。
- ヘルスリテラシーの低さ
日本人のガン検診に対する意識は諸外国と比較して低いと言われています。
実際に、主に上記3つの理由でガン検診受診率が低いのはもちろんのこと、国民皆保険制度によって医療費の自己負担額が少ないことも、各自のヘルスリテラシーが上がらない要因になっています。
これらの原因の結果、今の日本では多くの人がガン検診を気軽に、かつ安価に受けられるような体制が整っておらず、ガン検診受診率の低迷はそのままガン罹患率や死亡率の上昇に繋がっています。
そこで、近年はこういった課題を解消するため、多くの最先端技術を駆使した検査が開発され、実用化を目指しています。
特に、低侵襲かつ正確な検査が求められる中、「N-NOSE」と呼ばれる検査が非常に注目を浴びています。
<1滴の尿でガンを検知できる「N-NOSE」とは?>
2013年7月、九州大学大学院理学研究院の助教であった広津先生の実験で、線虫がガン患者の尿には近づき、健常者の尿からは遠ざかるという性質を持つことが判明しました。
線虫は犬にも匹敵する非常に優れた嗅覚を有しており、尿中に排出されたガン細胞を感知して寄っていくのです。
「N-NOSE」は、その研究結果を応用し「HIROTSUバイオサイエンス」と呼ばれる会社が開発したガン検査キットです。
「N-NOSE」の驚くべき点は、その検査精度とコストにあります。
今のとこと、尿1滴だけで15種類ものガンを網羅的に検出可能で、ステージ0-1の超早期ガンでも9割近い確率で検知できます。
既存の腫瘍マーカー検査では超早期で10%、末期ガンでも30-50%程度の検出率です。
CTやレントゲンなどの画像検査でも、ステージ0-1ではガンが小さく見極めるのが困難であり、「N-NOSE」の検査精度がいかに高いかが分かります。
また、画像検査で全身のガン検査をしようとすると10万円程度、腫瘍マーカー検査であれば20-30万円も費用が掛かってしまいます。
それに対し、「N-NOSE」で利用する線虫は飼育コストがほぼ0円です。
線虫は1匹あたり約100-300個の卵を産むので、シャーレに1匹置いておくだけで大量に受精卵を産み、その卵が大人になるまでの期間はたったの4日であり、驚異的なスピードで飼育が可能です。
以上から、現在「N-NOSE」は税込13800円と驚異的な低コストで提供されています。
実際の利用方法も非常に簡便で、自宅に送られてきた検査キッドに尿を入れて、返送するだけです。
尿は検査センターに送られ、検査結果は自宅に返送されるため病院を受診する必要もありません。
現在の「N-NOSE」が抱える課題は、ガンに罹患していることを早期に発見できてもガンの種類の特定まではできない点ですが、現在種類の特定が可能になるよう開発を進めています。
まとめ
2020年1月から実用化された「N-NOSE」ですが、すでに20万人近くが検査を受けており、今後新しいガンの一次スクリーニング検査として更に普及していく可能性が高いと考えられます。
自分の命を守る意味でもこういった情報は貴重な武器になり、皆さんが知っておくべき最先端の検査やガン治療はまだまだ他にもあります。
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