社会人になって初めて給与をもらったときに、「こんなに少ないの?」と思った経験はないでしょうか。
給与明細をよく見ると、総支給額と手取りが大きく違います。実は給与のうち15~25%は、税金と社会保険料。残りの75〜85%が実際に手元に残る金額なのです。
本記事では、給与から天引きされる税金と社会保険料の仕組みについて解説します。
給与明細の見方を知っておこう
給与明細を見ると、総支給額と差引支給額の記載があり、それぞれ金額が異なることに気付くと思います。
総支給額は会社が従業員に支払った合計額で、基本給に手当を加えたもの。差引支給額は従業員が実際に受け取る手取りのことで、税金や社会保険料が差し引かれた金額です。
一般的に、給与の総支給額のうち75〜85%が手取り収入になると言われていますが、社会人1年目の場合は「住民税」が引かれません。そのため、入社2年目の6月になると1年目よりも手取りが少なくなります。家賃やローン等、毎月固定費が発生するものを契約する際には、「来年は今より手取りが少なくなる」ということを覚えておきましょう。
給与から引かれるものは5つの税金&社会保険料
会社員の場合、給与からは以下の税金と社会保険料が差し引かれます。
<税金>
- 所得税
- 住民税(社会人2年目から発生)
<社会保険料>
- 健康保険料
- 年金保険料
- 雇用保険料
それぞれ、詳しく説明しましょう。
1.所得税
所得税は、個人の所得(もうけ)に対してかかる税金です。
会社員でも個人事業主でも、働いて一定以上の収入を得る人には所得税が発生します。その年1月1日から12月31日までに得たすべての所得から、個人の状況に応じて適用される所得控除を差し引いた金額に対して課税される税金が所得税です。
所得税の税率は「超過累進税率」といい、所得が少ない人には低い税率を、所得が多い人には高い税率が適用されます。つまり、稼ぎが多ければ支払う所得税は増え、稼ぎが少なければ支払う所得税は減ることになります。
厚生労働省の調査によると、新社会人の平均的な賃金は約18万円〜約25万円※であり、所得税率は10%になるのが一般的です。
※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」より「新規学卒者」賃金より
2.住民税(社会人2年目から発生)
住民税とは、お住まいの自治体に納める地方税のことです。
ただし、社会人1年目は住民税が発生しません。住民税は、原則として1年間の所得に対してかかる税金を翌年に支払うもので、後払いの税金です。よって就職する前年まで学生だった新社会人には、前年分の住民税がかかりません。学生時代アルバイトをしている場合も、およそ100万円までの年収であれば住民税の支払い義務は発生しないのです。
したがって、社会人2年目の6月以降は住民税が差し引かれることでさらに手取り収入が減ってしまいます。なお、住民税の税率はおよそ10%程度です。自治体によっても差はあるもののそこまで大きな違いはないため、だいたい10%と覚えておきましょう。
- あわせて読みたい記事:「社会人2年目になると手取りが減る?その理由は住民税!仕組みと節税対策を解説」
3.健康保険料
健康保険料とは、会社員が加入する公的医療保険制度を利用するために支払うものです。
日本は国民すべてが公的医療保険に加入することが義務づけられているため、健康保険料は必ず支払わなければなりません。その分、病気やケガの医療費を原則1~3割の自己負担で受けることができ、その他にもさまざまな保障があります。
<健康保険(公的医療保険)で受けられる保障例>
- 病院で治療を受けるとき
- 高額な医療費を払ったとき(高額療養費)
- 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)※自営業者の国民健康保険にはない
- 子どもが生まれたとき(出産育児一時金)
- 出産で会社を休んだとき(出産手当金)※自営業者の国民健康保険にはない
給与から差し引かれる健康保険料は、会社が加入している健康保険の種類によって異なります。
<会社員が加入する健康保険の種類>
- 【中小企業に多い】協会けんぽ(全国健康保険協会):都道府県支部ごとに保険料率を設定している。2016年度の平均は10.0%
- 【大企業に多い】組合健保(健康保険組合):それぞれの組合で保険料水準は異なる。2015年度平均は9.0%。
ただし、上記の料率がそのまま適用されるわけではなく、会社員であれば会社が健康保険料の半分を負担してくれます。そのため、実質的に負担する健康保険料率は、4.5%~5%程度です。
また、会社が独自の「健康保険組合」に加入している場合、一般的な健康保険よりも手厚い保障を受けられることがあります。就職したら、まず自身の会社の健康保険の種類を確認しましょう。
4.年金保険料
年金保険料は、会社員が加入する公的年金制度のために支払うものです。
公的年金制度は公的医療保険制度とあわせて、国民全員の加入が義務づけられている社会保障制度の一つです。公的年金=老後に受け取るものというイメージがありますが、実際は65歳になると受給できる「老齢年金」のほか、障害を負った際に受給できる「障害年金」、自身が死亡した際に遺族に給付される「遺族年金」の3つの機能があります。
多くの会社員が加入する年金制度は「厚生年金保険」と呼ばれるもので、健康保険料と同様に、保険料の半額を会社が負担してくれます。
2022年時点の厚生年金保険料の自己負担額は9.15%。たとえば、賞与を除く4〜6月の給与の平均額(標準報酬月額)が20万円であれば、1万8,300円が天引きされる厚生年金保険料※となります。
※出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表」より令和4年度(2022年度)を参照
5.雇用保険料
雇用保険は国が行う労働保険制度であり、社会保障の一つです。
雇用保険料も、社会保障制度を利用するために支払う必要があります。週20時間以上の労働があり、雇用期間が31日以上にわたる会社員であれば、ほぼ強制加入となります。雇用保険に加入していれば、育児や介護などにより休業するとき、会社を辞めたときなどに手当や給付金を受け取ることができます。
<雇用保険で受けられる保障例>
- 失業等給付:仕事を辞めたとき、就職に役立つ技能・知識を学びたいとき
- 育児休業給付:育児のために仕事を休むとき
- 介護休業給付:介護のために仕事を休むとき
雇用保険料についても、会社がその一部を負担してくれることになっています。ただ、健康保険料や年金保険料ほど負担割合は高くありません。業種によっても異なりますが、2022年度の保険料率は1%以下です。
労災保険は全額事業主が負担する
国が用意している労働保険制度には、労災保険というものもあります。
労災保険とは、業務上の自由または通勤途中で発生した労働者のケガや病気、障害、死亡に対する保険給付を行う制度です。ただ、労災保険の保険料は全額事業主が負担することになっています。そのため、私たち従業員には保険料の負担はありません。
給与から労災保険の保険料が引かれることはありませんが、もし通勤中や業務上のケガなどで治療費が発生した場合はすぐ会社へ連絡しましょう。なお、労災保険の治療費は一時的に自己負担となります。
まとめ:税金と社会保険を確認して、自分が受けられる保障を知ろう
毎月の給与からは、税金と社会保険料が引かれます。税金は働く者の義務で、社会保険料は国の社会保障制度を受けるために支払う必要があります。
「こんなに払わないといけないのか」と思うかもしれませんが、会社員は健康保険料・厚生年金保険料の半額を会社が負担してくれています。
また、会社によっては独自の健康保険組合があります。場合によっては、通常の健康保険より保障が手厚い可能性もあるのです。
給与明細を確認するついでに、加入している健康保険について調べてみるのもいいでしょう。自身が受けられる公的保障の内容を知っておけば、これから保険を考える際にも役立つはずです。就職したときの保険の考え方については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
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