日本では2025年に団塊の世代が75歳以上になり、かつ人口の減少が見込まれているため、少子高齢化が深刻なものになっていくと予想されます。
総務省統計局の報告によれば、2021年における総人口に対する65歳以上の占める割合は29.1%であり、2040年には35.3%にまで増加すると考えられています。
そんな中、重要度が増してくるのが介護保険制度です。
介護保険制度によって、「介護状態」と認定されるとその程度に応じて所定のサービスが受けられます。
ただし、年齢制限等があり、誰でもサービスを受けられるわけではありません。
また、介護状態によって受けられるサービスも変わってきます。
そこで今回の記事では、そもそも介護保険はどういった仕組みなのか詳細に解説していきます。
介護保険の概要
大前提として、介護保険制度は介護が必要な方に、サービスなどを給付する公的な社会保険制度です。
対象となるのは40歳以上の全ての人で、必ず介護保険に加入して介護保険料を納めなければなりません。
40歳から64歳までの被保険者は加入している健康保険と一緒に保険料を徴収され、支払うべき保険料は市町村によって異なります。
では、どういった人たちが給付を受けることができるのでしょうか?
①「65歳以上」の「第1号被保険者」
65歳以上の方は第1号被保険者に分類され、原因を問わず、所定の要介護状態・要支援状態になった場合に保障を受けられます。
②「40歳~64歳」の「第2号被保険者」
40歳~64歳の方は第2号被保険者に分類されます。
第1号被保険者とは異なり、老化に起因する特定の病気(下記の16疾患)によって要介護・要支援になった場合に限り、介護サービスを受けることができます。
16疾患は以下の通りです。
介護保険で適応となる疾病
(特定疾病) |
|
介護保険による自己負担額とは?
例えば公的医療保険では、患者が窓口で支払う医療費の自己負担割合は原則1〜3割です。
では、介護保険制度ではどの程度の自己負担が必要なのでしょうか?
市区町村に申請して、要介護者・要支援者であることの認定を受けた後に介護サービスを利用した場合、公的医療保険と同様で、自己負担は1〜3割で済みます。
原則は1割負担ですが、介護保険制度の公平性を確保するために、現役並みの所得がある高齢者であれば所得に応じて自己負担割合は1〜3割になります。
介護サービスの内容は要介護度に応じて異なるため、自分の要介護度が判定された後は、自分が「どんな介護サービスを受けるか」「どういった事業所を選ぶか」についてケアプランを作成し、それに基づきサービスの利用が始まります。
また、居宅サービス(自宅に住む人のためのサービス)を利用する場合は、利用できるサービスの限度額が要介護度別に定められています。
限度額の範囲内でサービスを利用した場合は、前述したように1割の自己負担ですが、限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となります。
1ヶ月あたりの利用限度額は下表のようになります。
居宅サービスの1ヶ月あたりの利用限度額 | |
要支援1 | 5,032点 |
要支援2 | 10,531点 |
要介護1 | 16,765点 |
要介護2 | 19,705点 |
要介護3 | 27,048点 |
要介護4 | 30,938点 |
要介護5 | 36,217点 |
1点=10〜11.4円であり、地域によって異なります。
例えば1点10円の地域であれば、要支援1の方は月額50,320円までは介護保険を利用でき、その際の自己負担額は原則1割の5,032円となります。
医療費と介護費用がかさんだら「高額介護合算療養費制度」
介護が必要な方であれば、医療費がかさむことも少なくありません。
そこで、1年間(8月1日~7月31日)にかかった医療保険と介護保険の自己負担額の合計が基準額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度として「高額介護合算療養費制度」があります。
高額介護合算療養費制度の基準金額は年齢・所得によって違います。
下表をご参考ください。
75歳以上 | 70-74歳 | 70歳未満 | |
加入している
保険 |
後期高齢者医療制度
+介護保険 |
健康保険または
国民健康保険 +介護保険 |
健康保険または
国民健康保険 +介護保険 |
上位〜現役
所得者 |
67万円 | 126万円 | |
一般所得者 | 56万円 | 67万円 | |
住民税非課税者、低所得者Ⅱ | 31万円 | 34万円 | |
低所得者Ⅰ | 19万円 |
次に、具体的な申請方法について解説します。
高額介護合算療養費の支給を受けるには、加入している介護保険と医療保険の両方の窓口で申請することが必要です。
ただし、市町村が運営する医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)に加入している人は、一つの窓口で介護保険とまとめて申請できる場合があります。
介護保険の窓口で申請する場合、「自己負担額証明書交付申請書」を提出し、「自己負担額証明書」を交付してもらいます。
医療保険の窓口で申請する場合、介護保険の窓口で交付された「自己負担額証明書」を添えて、加入する医療保険の窓口で申請を行います。
介護休業で給料の約70%が受け取れる「介護給付金」
ご家族の介護のため会社を休む「介護休業」をとった方は、「介護休業給付金」を受け取れます。
これは育児休業給付金と同じく雇用保険から支払われます。
ただし、介護休業はご家族の介護のためなら何でも良いわけではありません。
支給要件は下表の通りです。
支給要件 | |
介護対象となる家族 | 病気、ケガまたは身体上もしくは精神障害により2週間以上の間、常に介護が必要な状態に陥った場合で、以下の家族に限られる。
|
介護者 |
|
介護休業給付金の支給額は以下の通りです。
支給額=休業開始時の賃金月額(賃金日額×30日)×67%
「賃金日額」は、事業主の提出する「休業開始時賃金月額証明書(票)」の介護休業開始前6か月分の賃金を180で割った額です。
そして、これに30日を掛けると「賃金月額」になります。
ただし、この賃金月額(賃金日額×30日)は上限と下限が決まっており、下限は68,700万円、上限は466,500円です。
つまり、賃金月額が68,700万円を下回る場合は68,700円として計算し、466,500円を超える場合は466,500円として計算します。
具体的な申請方法は、会社からハローワークに必要書類を提出してもらって手続します。
必要書類は「休業開始時賃金月額証明書」および「介護休業給付金支給申請書」とその内容が確認できる賃金台帳、出勤簿等です。
まとめ
今回の記事では、介護保険の仕組みについて解説させていただきました。
今後少子高齢化がさらに進めば、家族や配偶者など身近な人の中にも介護が必要となる人の割合が増えてくる可能性があるため、今の内からしっかりと介護保険について理解しておくことをおすすめします。
また、民間の介護保険に加入して介護費用などに対する保障を充実させる方も多く、皆さんも既に加入済みか、あるいは今まさにご検討中である方もいるかもしれません。
ところで、これは介護保険に限った話ではありませんが、皆さんは自助努力によって任意で加入する生命保険を検討する際に、あわせて社会保障制度によって得られる保障をご確認されているでしょうか?
あるリサーチによれば、なんと5割超もの人が「社会保障の内容をよく知らない」「生命保険の加入を検討する際に、既に社会保障制度によって得ている保障内容を考慮していない」という結果が出ています。
皆さんはいかがでしょうか?もし、「私も同じかもしれない…」と思われた方には、続けてこちらの記事のご確認をおすすめします。
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