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そもそも、遺族年金や障害年金ってどんな仕組みなの?

日本では国民皆年金制度が導入されているため、全ての国民はその職種や所得に応じてなんらかの公的年金制度に加入していますが、公的年金制度を「老後にお金をもらえる」制度としか認識していない方も少なくないと思います。

 

ところが、有事の際にはいずれも、自身がその保障内容を理解したうえで申請手続きを行わなければ、その権利を行使することはできません。

 

そこで、いざという時に損をしてしまわないように、今回の記事では「遺族年金」や「障害年金」の仕組み、支給要件などについてわかりやすく解説して行きます。

国民年金、厚生年金ともに保障される

 

下表のとおり、遺族年金、障害年金はともに、国民年金、厚生年金のいずれにもある保障です。

但し、厚生年金を受給する第2号被保険者のほうが、その保障が手厚くなる仕組みは、老齢年金と同じです。

 

  国民年金 厚生年金
加入対象者 第1号被保険者 第3号被保険者 第2号被保険者
老後に受け取る年金 老齢基礎年金
老齢厚生年金 × ×
特別支給の

老齢厚生年金

× ×
遺族

年金

遺族基礎年金
遺族厚生年金 × ×
中高齢寡婦

加算

× ×
障害

年金

障害基礎年金
障害厚生年金 × ×

 

 

遺族のための生活保障(遺族年金)

 

遺族年金は、一家の大黒柱の方に万が一のことがあったときに遺族が受け取れる年金です。

 

 

①自営業の方は「基礎年金」+「寡婦年金(または死亡一時金)」

 

自営業の方が亡くなった場合は「遺族基礎年金」のみの受給となり、末子が18歳になる年までしか受け取れません。

 

「遺族基礎年金」の受給には下表のような条件があります。

 

支給要件 被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あるものが死亡したとき。

(ただし、死亡した者について、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。)

対象者 対象となるのは、死亡した方によって生計を維持されていた、子のある配偶者、もしくは子。

 

子とは次のものに限る。

1)18歳になった年度の3月31日までにある方

2)20歳未満で障害年金の障害者等級1級または2級の状態にある方

子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されません。

年金額

(令和4年4月から)

1)子のある配偶者が受け取るとき
777,800円+子の加算額2)子が受け取るとき(次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額となります。)
777,800円+2人目以降の子の加算額1人目および2人目の子の加算額 各223,800円3人目以降の子の加算額 各74,600円

(引用)日本年金機構

 

つまり、18歳までの子(障害年金の障害等級1級または2級の子の場合は20歳未満まで)がいないと遺族年金は受け取れない、ということになり、国民年金のみの加入者はこれに該当する「子」がいないと受取額はゼロです。

 

ただし、救済措置として残された妻は65歳まで(老齢基礎年金を受け取れるまで)の間、「寡婦年金」か「死亡一時金」を受け取れる可能性があります。

 

寡婦年金とは、亡くなった自営業者の夫が国民年金の保険料を25年納めていた場合、妻が60〜65歳の間、毎月、夫が受け取れたはずの年金額の4分の3を受け取れるものです。

ただし、婚姻関係が10年以上あることが条件です。

 

また、亡くなった夫が年金保険料を3年以上納めていた場合、妻は「死亡一時金」を受け取れます。

死亡一時金の金額は納付期間と保険料免除期間に応じて12〜32万円となります。

 

「寡婦年金」と「死亡一時金」はどちらか一方しか受け取れません。

したがって、どちらも受けられる場合は、有利な方を選んで受け取ります。

 

 

②会社員、公務員の方は「基礎年金」+「厚生年金」

 

会社員や公務員の遺族の場合、上記の「遺族基礎年金」に加えて、「遺族厚生年金」を受給できます。

 

遺族厚生年金を受け取るには、次のような条件があります。

 

支給要件 1)厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき

2)厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき

3)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき

4)老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき

5)老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

(ただし、死亡した者について、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。)

対象者 対象となるのは、死亡した方によって生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。

 

1)妻

2)子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)

3)夫(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)

4)父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)

5)孫(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)

6)祖父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)

(引用)日本年金機構

 

例えば、夫が厚生年金加入者で死亡した場合であれば、子供の有無に関わらず遺族厚生年金が支給されるため、国民保険加入者の場合と比較して保障が手厚くなっています。

 

ただし、前述したように遺族基礎年金は末子が18歳になる年までしか支給されないため、それから妻が65歳になるまでの間は救済措置として遺族厚生年金に「中高齢寡婦加算」が加算されます。(下図参照)

 

 

(引用)社会保障制度の教科書

 

 

■実際に受け取れる遺族年金額とは?

 

遺族年金の支給金額は職業・所得・保険料払込期間によって変わりますが、目安は以下のようになります。

 

  自営業世帯

(国民年金)

会社員・公務員世帯(厚生年金)
子供(18歳未満)あり 子1人の期間 年1,003,600円

(月83,633円)

年1,517,855円

(月126,488円)

子2人の期間 年1,227,900円

(月102,325円)

年1,742,155円

(月145,180円)

子3人の期間 年1,302,700円

(月108,558円)

年1,816,955円

(月151,413円)

子供(18歳未満)なし 妻40歳未満

の期間

なし 年514,255円

(月42,855円)

妻40〜65歳未満の期間 なし 年1,098,755円

(月91,563円)

妻65歳以上

の期間

年779,300円

(月64,941円)

年1,293,555円

(月107,796円)

(引用)社会保障制度の教科書

 

このように、遺族が生活をしていく上である程度の金額は受け取れます。

したがって、生命保険の必要保障額を決める時は必ず、自分のご家族が遺族年金をいくら受け取れるかを知っておくようにしましょう。

 

 

障害時の生活保障(障害年金)

 

自分自身が病気やケガで障害を負ったり働けなくなったりした時の生活保障として障害年金が支給されます。

 

障害年金には「障害基礎年金」と、厚生年金加入者がこれに上乗せで受給される「障害厚生年金」、さらに「障害手当金」の3つがあります。

 

それぞれについて解説します。

 

 

①障害基礎年金

 

障害基礎年金を受け取るには、下記のような支給要件を満たしている必要があります。

 

  • 年金加入期間のうち2/3の期間の保険料が納付されている(免除期間も含む)
  • ケガ・病気による初診日に年金加入中か、60歳以上で年金受取前か、20歳未満で年金未加入

 

 

②障害厚生年金

 

障害厚生年金を受け取るためには、大前提として障害基礎年金の支給要件を全て満たしている上で、厚生年金加入者である必要があります。

 

厚生年金の場合は1~3級のどれかに該当すれば障害年金を受けられるほか、3級に達しない場合でも障害手当金が支払われるケースがあります。

 

 

③障害手当金

 

厚生年金加入者で障害等級3級よりも軽い状態でも一時金が支給されます。

支給要件は障害厚生年金と同じです。

 

 

 

■障害等級による分類

 

上記内の「障害等級」は下図のように分類されています。

重要な要素は以下の2つです。

 

  • 日常生活を送る能力の低下
  • 働いてお金を稼ぐ能力の低下

 

障害等級 定義 イメージ
1 他人の介助がなければ日常生活が不可能 活動範囲が病院のベッド周辺、自宅の寝室内に限られる
2 ・  他人の介助がなければ日常生活が非常に困難

・  働くのが不可能

活動範囲が病院の病棟内、自宅の屋内に限られる
3 ・  治療は終了したが働くのが非常に困難

・  治療中で働くのが困難

日常生活にはほとんど支障はないが、働くのが非常に難しい
障害手当金 治療は終了したが働くのが困難

 

日常生活にはほとんど支障はないが、働くのが難しい

 

それぞれについての判断基準は、視力や聴力、手足、内蔵の機能、手指や足指の状態等に応じて細かく具体化されています。

詳しくは日本年金機構HPをご覧ください。

参考:日本年金機構 

 

 

 

■障害等級に応じた支給額

 

次に、障害基礎年金は障害の等級に応じて下記のように支給されます。

 

 

(引用)日本年金機構

 

また、上記金額とは別に子供がいる場合は、子の加算額として

2人まで 1人につき223,800円
3人目以降 1人につき74,600円

が支給されます。

(子とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方)

 

それに対し、障害厚生年金は厚生年金加入者が上記の「障害基礎年金」に上乗せで受給します。

 

支給額は下記の通りです。

 

1級:(報酬比例の年金額)×1.25+(配偶者の加給年金額(22万3,800円)) 
2級:(報酬比例の年金額)+(配偶者の加給年金額(22万3,800円)) 
3級:(報酬比例の年金額) 最低保障額 58万3,400円

 

その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。

 

なお、支給額は毎年見直しが行われます。詳しくは、日本年金機構のHPでご確認ください。

 

《障害基礎年金》 

障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構(nenkin.go.jp)

 

《障害厚生年金》

 障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

 

 

まとめ

今回の記事では、遺族年金や障害年金について詳しく解説させていただきました。

 

遺族年金や障害年金は、配偶者の死亡や、ご自身の病気・怪我など、お金が必要になるタイミングで支給される年金であり、支給要件を満たしている場合は必ず活用したい制度です。

 

一方で、その支給要件が皆さんにとって理解しやすい内容であるかについては、必ずしもそうとは言い難いものであるように思われます。

障害年金については、上述の通り、障害等級の「認定」が受給可否のカギを握ります。

また、遺族年金の場合は特に、様々な「受け取れないケース」が存在するため注意が必要です。

皆さんも、いざ相続が発生した後に当てにしていた遺族年金が受け取れない事態に陥ることは何としても避けたいとお考えになるのではないでしょうか?

 

そこで、続けて皆さんにご紹介したい記事がこちらの「教えて!遺族年金は受け取れないケースとは?どんな場合に受け取れない?」です。

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続けてご覧になっていただきたい記事はこちら:

教えて!遺族年金は受け取れないケースとは?どんな場合に受け取れない?

 

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