皆様は何らかの理由で収入が減った事態への備えをされているでしょうか?
ウィルス感染症による長期の就業不能によって収入の大幅なダウンを避けられなかった方が多かったこともあり注目されているのが「収入の減少に対する保障」です。
社会保険のひとつである「老齢年金」は若い頃と同じような収入を得られなくなる老後の生活を保障するための制度ですが、65歳以前に働けなくなった場合、社会保険から得られる保障はあるのでしょうか?もし十分な保障が得られない場合は自助努力で何とかするしかないのでしょうか?
今回は、収入が減った場合に受けられる社会保障制度をケース別にご紹介します。自身に当てはめながらご確認ください。
収入が減ったときに使える保障制度
社会保障制度は、全ての国民が安定した生活を送れる環境を整えるため、国や自治体が設けた制度です。何らかの理由で突然収入が減少した際にも、生活の質の著しい低下を招くことがないよう、さまざまな手当や給付を受けられる制度が整えられています。
就業中:
会社員や公務員には、就業中に発生した事由が原因で収入が減少した場合に受けられる保障があります。
制度 | 保障内容 | 申請先 |
休業手当 | 会社の都合で労働者を休ませる場合に支払われる手当。パート・アルバイトを含む全従業員が対象となる。 直支給額:直近3カ月の平均賃金×60%×休業日数 |
勤務先 |
傷病手当金 | 業務外の事由によるケガや病気に伴い、3日以上勤務不能となった場合に支払われる手当。
支給額:直近12カ月の平均賃金×3分の2×休業日数(最長1年6カ月) |
加入している健康保険組合(けんぽ支部) |
休業補償 | 業務中に発生したケガや病気などの労働障害のために働けなくなった場合に払われる手当。 支給額:直近3カ月の平均賃金×80%×休業日数(3日目までは60%) |
労働基準監督署 |
療養補償 | 業務中にケガや病気が発生し、療養を必要とする際に支給される手当。 指定の医療機関での療養にかかった費用は無料 指定期間以外での療養にかかった費用は全額現金給付される |
労働基準監督署 |
制度の多くは就業中に発生したケガや病気による収入減が保障の対象ですが、業務外で発生したトラブルを理由に働けなくなった場合に保障される制度も存在します。多くは健康保険や労働基準監督署が申請先となっていますが、まずは職場に相談し利用できる制度を確認するとよいでしょう。
退職後:
収入が途絶える大きな理由のひとつが退職です。自己都合・会社都合を問わずに、中途退職した場合には次の就職までの時間をサポートするさまざまな給付を受けられます。
制度 | 保障内容 | 申請先 |
失業手当
(基本手当) |
離職の日以前2年間に雇用保険者の被保険者期間が通算12カ月以上ある従業員に、退職から一定期間支払われる手当。
給付月額および給付期間は、被保険者であった期間及び離職の理由、離職時の年齢によって異なる。 支給額:離職日の直前6か月間の平均賃金×45~80%×90~330日
|
ハローワーク |
再就職手当 (就職促進給付) |
失業手当を受給中の休職者が就職した際に、失業手当の支給残日数に応じてお祝い金が支給される。 支給額:失業手当の支給残日数が3分の2以上なら日額×70%×残日数 失業手当の支給残日数が3分の1以上なら日額×60%×残日数 |
ハローワーク |
未払賃金立替支払制度 | 就労していた企業等が倒産した場合、未払いとなった退職者への賃金を立て替える制度。倒産の半年前から2年間の退職者が対象。 支給額:未払い分の(定期賃金+退職手当)×80% |
労働基準監督署 |
教育訓練給付金 | 在職中または離職から1年以内で、雇用保険の加入期間が1年以上ある人に、特定の教育訓練を受講する費用を一部支給する制度 支給額:教育訓練課程に支払った受講費用の20~70%(年間上限40万円) |
ハローワーク |
移転費 | 失業手当の受給資格者がハローワーク等の紹介による職業に就くため、または指示された公共職業訓練を受講するための転居費用が支給される。 支給額:親族を随伴する場合は76,000円(100km以上離れているなら95,000円) 親族が随伴しない場合は38,000円(100km以上離れているなら47,500円) |
ハローワーク |
失業手当は離職後の収入源として非常に有名な制度ですが、その他にも離職後の生活を支えるための制度が設けられています。
会社が倒産した際には、未払いとなった賃金を一部立て替えてくれる制度もあり、次の就職先を探すまでの生活を十分に支えてくれるでしょう。
なお、教育訓練給付金制度は在職中にも利用できる制度です。収入減や再就職に備えるだけでなく、キャリアアップやリスキリングにも役立ちますので、積極的な活用をおすすめします。
医療・介護:
社会保障制度は医療・介護の面でも非常に充実しています。ご自身がケガや病気で働けなくなった場合だけでなく、家族のための介護休業時にも使える制度があります。
制度 | 保障内容 | 申請先 |
障害年金 | 公的年金の加入期間が3分の2以上の年金加入者が、法令により定められた等級の障害状態にある場合、老齢年金を待たずに年金を受給できます。
国民年金保険から支給される「障害基礎年金」と、厚生年金保険から支給される「障害厚生年金」があり、年金の加入期間・納付額に応じて支給額が変わります。 |
年金事務所・住所地の市区町村役場 |
高額療養費制度 | 1カ月内に負担する保険診療費用に上限が設けられる制度 年収約370~770万の人は80,100円、住民税非課税者は35,400円が月間の医療費負担上限となる。 |
加入している健康保険 |
高額介護サービス費 | 介護サービス利用料に上限が設けられる制度。
年収約770万円までの世帯は44,400円、住民税非課税世帯は24,600円が月間の自己負担上限となる。 |
住所地の市区町村役場 |
医療費控除 | 申告者及び生計を一にする配偶者・親族にかかった医療費が一定額を超えた分を所得控除できる制度。
所得控除額:(年間に支払った医療費総額-保険金などによる補填)-10万円(最高200万円まで) |
住所地の所轄税務署(確定申告が必要) |
介護休業給付金 | 家族の介護のために休業する際に賃金の一部を保障する制度。
介護休業を開始した日より前の2年以内に12カ月以上の雇用保険加入期間がある人が対象となる。 同じ家族を対象に93日間を限度に3回まで支給される。 支給額:直近6カ月間の平均賃金×67%×支給日数 |
ハローワーク または勤務先 |
高齢者が人口を占める割合が増加している日本では、医療費や介護費用の負担を軽減する制度が数多く設けられています。
家族が高齢者の医療費を支払うケースだけでなく、介護のために休職する場合にも、介護を理由とした生活の困窮を防ぐことが可能です。
家族の誰かが働けなくなったときに困らないよう、それぞれの制度を利用するための手続きの準備をしておくとよいでしょう。
注目の「就業不能保険」とは?
ここまでに紹介した収入減少時に使える制度は、すべて社会保障制度です。
さまざまな形で国民の生活を支えられる制度が充実していますが、近年は民間保険にも収入源に備えた保険が登場しています。
「就業不能保険」は、病気やケガによって長期間働けなくなった場合の収入を補填する保険です。
一般的には有給休暇や傷病手当金などの保障を受けられない自営業・フリーランス向けの保険といわれていますが、企業によっては有給休暇の取得に制限(勤続年数等)を設けている場合もあり、必ずしも会社員や公務員だから不要とは言えません。
また、社会保障制度による保障は「収入の5~8割程度」であり健康に働いていたときの収入には及ばないのが一般的です。
そのため、ローンの返済があるなど毎月の収入の用途や金額がおおよそ決まっている場合は特に、各支払いが滞ることで日常生活に支障を来すことが無いように注意が必要です。
まとめ
どんなに健康な体で働いているとしても、ある日突然収入が途絶えてしまうことがあります。
不意の倒産や解雇、事故や病気といった避けられないトラブルに備え、生活を維持するだけの収入を確保する準備が肝要だといえるでしょう。
就業不能保険は「日常生活の“維持”」を強く意識するビジネスパーソンから大いに注目を集めています。
万が一の事態に備えた保障であるだけでなく、掛金を「生命保険料控除」の対象にできるため税制面でも有利な点は魅力的です。
また、福利厚生の一環として就業不能保険と類似の保障を設けている企業もあります。
「グループ保険(団体加入により保険料が割安に設定されている保険)」を活用することで民間保険よりも有利な契約条件になっている場合もあり、ビジネスパーソンならではの見逃せない特典です。
これを機会に勤務先の福利厚生制度についてご確認されてはいかがでしょうか?
今回は、収入減少に備えることができる社会保障制度の紹介から、民間保険で注目を集めている「就業不能保険」と有利な契約条件である可能性が高い福利厚生制度の活用について解説しました。
なお当サイトには、社会保障、福利厚生、民間保険のそれぞれを効率よく組み合わせて検討する際にご活用いただけるサポートメニューがあるのをご存知でしょうか?
こちらの動画「公助・企助・自助の順番に考える」は、民間保険と社会保険の”重なり”や、勤務先の福利厚生制度の“重なり”をチェックする視点や留意点をわかりやすくまとめた動画です。
ご自身が社会保険や福利厚生によって既に確保できている保障内容を知ることで任意加入の保険料を節約できる可能性があります。せひ一度ご視聴ください。
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