「仕事中、急に具合が悪くなり倒れて、そのまま集中治療室(ICU)に運ばれた」
自分の身にこんなことが起きたとき、家族や身近な人が保険契約の存在を知らなければ保険はどうなるのか。
考えたことはありますか?
脳卒中やてんかんなど、急激に発症して具合が悪くなる病気は少なくありません。
特に脳卒中は入院が長期化しやすく、平均在院日数は77.4日です※。脳卒中の一種であるくも膜下出血は、突然の激しい頭痛から意識不明のまま長期入院することもあるため、「保険があっても本人は入院中で請求できない」という事態は十分ありえることです。
しかし保険料を払えない状態が続くと、保険はいずれ失効してしまいます。
そこで今回は、突発的な病気や事故などで保険を失効したらどうなるのか、失効を防ぐ方法や復活する方法について解説します。
保険料を滞納すると契約は「失効」する
原則として、保険料を一定期間滞納して支払わなければ、保険契約は失効します。
失効とは名前のとおり、契約の効力が失われて保障がない状態になること。
つまり、保険金や給付金などを受け取れなくなることです。
では、どれくらい滞納すると契約が失効になるのでしょうか。
保険料の払込猶予期限は支払方法や保険会社によって異なりますが、基本的には以下のとおりとなっています。
- 月払い:払込期月の翌月の1日から末日まで
- 半年払い・年払い:払込期月の翌月の1日から翌々月の月単位の契約応当日まで(月単位の応当日がない場合は翌々月の末日まで。ただし、契約応当日が2月、6月、11月の各末日の場合には、それぞれ、4月、8月、1月の各末日まで)
冒頭で説明したように、くも膜下出血などに代表される突発的な病気や事故により、意識不明のまま長期入院になる可能性は誰にでもあります。
その間、保険料の支払いが滞り、上記の猶予期限を過ぎてしまえば保険契約は「失効」となり、保険金を請求することすらできなくなるのです。
数万円の保険料滞納により、数千万円の保険金を受け取れない可能性も
保険料滞納による保険契約の失効は、想像以上の大きな損失を生む可能性があります。
たとえば、成人した子どもを持つ両親が交通事故にあい、長期入院の末に2人とも亡くなったとします。
親には配偶者をそれぞれ受取人にした保険契約があり、死亡保険金額は合計2,000万円分でした。
しかし、契約者と受取人が同時に亡くなり、保険料を支払う者も請求する者もいません。
ここで子どもが契約の存在を知っていれば、契約している保険会社に状況を説明し、相談することで失効を回避できれば、合計2,000万円の保険金を(亡くなった親の)相続人として請求し、受け取れたかもしれません。
生前に保険契約や保険料の支払い情報の共有がなければ、数万円の保険料の差で失効を回避できず、結果として2,000万円は受け取れません。
これが保険料滞納による失効の怖さです。
このような失効による請求漏れを防ぐために、ここでは「自動振替貸付制度」などの対策を解説していきましょう。
自動振替貸付制度があれば一定期間契約の失効を防げる:
保険料の引き落とし口座に残高がなくても、契約が一定期間失効しない制度があります。それが「自動振替貸付制度」です。
自動振替貸付制度は、指定口座に残高がなくても保険会社が保険料を自動的に立て替え、契約を継続させる制度です。
解約返戻金や満期金がある、終身保険や養老保険、学資保険といった貯蓄型保険でのみ利用できます。
自動振替貸付制度があれば保険料は払い込まれたことになるため、一定期間契約の失効を防げます。
ただし、自動振替貸付制度で立て替えられた保険料には、所定の利息が付きます。
また、立て替え保険料の原資は自らの保険契約の解約返戻金です。
そのため自動振替貸付制度による保険料の立て替えは、解約返戻金の一定範囲内でしか行えません。
加入して間もない保険だと解約返戻金が少ないため、立て替えできる期間は短くなります。
払い込みできない状態が長期化すれば自動振替貸付制度も利用できなくなり、どのみち失効してしまうため注意が必要です。
なお、この自動振替貸付制度を利用できるのは解約返戻金がある一部の保険だけです。
「掛け捨てタイプ」と呼ばれる解約返戻金のない保険、たとえば定期保険や掛け捨て型の医療保険、がん保険では利用できないため、違う方法で失効対策するしかありません。
保険契約の失効・請求漏れを防ぐためにしておくこと:
上述した自動振替貸付制度を使えば一定期間失効を防げますが、掛け捨て型の保険は対象外であり、永続的に防ぐことはできません。
また、保険料滞納による失効は病気や事故だけではなく、家計の悪化によっても起こりえることです。
万が一の保険契約失効や請求漏れを防ぐためには、何ができるのでしょうか。ここでは、3つの対策をご紹介します。
1.家族や親族に保険契約の内容を共有しておく
まずは、契約している保険の内容を信頼できる家族や親族などに共有しましょう。
共有する際は「医療保険に加入している」という内容だけではなく、保険料や引き落とし口座、保険会社の連絡先などを具体的に伝えてください。
最近は100円ショップでも、自分に「もしも」のことがあったときの保険や貯蓄の口座を書けるノートが販売されています。
こうした市販のノートを活用し、保険情報を書きとめておき、家族に確実に伝えられるように残すのも一つの方法です。
なお、保険契約の内容を書くときには必ず保険証券の番号も記載しておきましょう。
2.保険料を払えない家計状況のときは契約内容の変更を検討する
病気や事故ではなく、家計が厳しく保険料を払えないときもあるでしょう。
どうしても保険料を払えないときは、保障内容の変更や一部解約により、保険料を減らして契約を継続できないか検討しましょう。
保険料を減らしても払い込みができない場合は、払済保険・延長保険といった方法もあります。
「払済保険」とは、契約中保険の保険料の払い込みを中止して、その時点の解約返戻金をもとに保障額の少ない保険に変更すること。同じ種類の保険か、養老保険に変更できます。
「延長保険」とは、契約中保険の保険料の払い込みを中止して、その時点の解約返戻金をもとに、元々の保険金と同額の定期保険に変更すること。
どちらにしても、保険料を支払わずに契約を有効に続けることができます。
ただし、保険会社や保険種類によっては上記の対応ができない場合もあります。
こうした対応ができる保険会社・保険商品を選ぶのは家計悪化への備えになるため、保険を見直す際はあわせて確認しておきましょう。
3.指定代理請求制度を活用する
「保険金・給付金を受け取る権利はあるのに、本人(被保険者)が入院中で請求できない」状態を防ぐために、指定代理請求制度を活用することも忘れないようにしましょう。
指定代理請求制度を活用すれば、本人の代わりに、あらかじめ指定した代理人が保険金・給付金請求できるようになります。
本人は緊急治療室で治療中、あるいは意識不明のまま長期入院中、寝たきりで動けないといった状態にあっても、代理人が請求手続きをすれば給付金を受け取れるため、とっさの治療代を早急に補てんすることが可能です。
失効した保険を元に戻す方法「失効取消」「復活」手続きとは
実は、失効した保険契約を元に戻す方法があります。
以下の「失効取消」と「復活」です。
- 失効取消:失効後の一定期間内であれば、失効した保険の未払い保険料を払いこむことで失効を取消し、失効日にさかのぼって保障を継続できる制度
- 復活:3年以内など定められた期間内であれば、契約を元に戻すことができる手続き。失効期間中の払い込みと告知または審査が必要で、保険会社によっては所定の利息の支払いも必要になる
失効取消も復活も、手続きできる期間が決まっています。
期間を過ぎれば契約を戻すことはできません。
また、保険会社によっては元に戻す手続き制度そのものがない点は、契約時に確認しておくべき要注意ポイントです。
【要注意】保険会社によっては失効取消・復活制度そのものがない:
大手生命保険会社を始め、ほとんどの保険会社では失効取消や復活制度があるため一定期間は失効した契約を元に戻せます。
ところが、新興のネット系生命保険会社など一部の会社では、保険業務に係るコストをできる限り抑えるため、失効取消や復活制度自体の取扱いがありません。
したがって、数か月保険料を滞納して失効してしまえば、問答無用でその保険は解約扱いです。
従来の生命保険会社商品になれている人は「保険には復活制度があるから」と思っているかもしれません。
しかし比較的歴史が新しい保険会社の場合、コスト効率重視でこうした対応を取っていることがあるため要注意です。
保険を選ぶとき、保険料の安さで選ぶ人は少なくないでしょう。
保険料だけを見て契約サービスの違いを見なければ、いざというときに保険金・給付金を受け取れません。
保険医おいて肝要なことは「受け取りができるかどうか」ですから、失効に関する制度は保険加入前に必ず確認しておいてください。
まとめ
生命保険料を数か月滞納すれば契約は失効し、保険金・給付金の請求・受け取りができなくなってしまいます。
ひと昔前であれば、失効した保険を元に戻す「失効取消」や「復活」の手続きは、どんな保険会社でも行えていました。
しかし最近はコスト効率を目的にこれらの手続きを取り扱わない保険会社もでてきています。
手続きを減らしてその分保険料が安くなることは一つのメリットですが、それによって保険金・給付金の受け取りに支障が出る可能性もあるのです。
保険料の支払いが厳しくなったり、うっかり滞納して失効してしまったりしたとき、どこまで柔軟な対応を取れるのか。
サービス対応も保険金・給付金の受け取りに大きく関わるため、保険会社選びではその視点も忘れないことが大切です。
あなたは、現在加入している保険に「失効取消」や「復活制度」があるのかを即答できますか?
これらの制度を使えるか少しでも不安に思われた場合は、この機会にご加入内容を振り返ってみましょう。
セルフチェックの方法は、下方にある黒いボタンの 「アップデートメニュー」 をタップするとご覧いただけます。
いざという時に知っていると知らないとでは大きな差となる、“その他の重要なチェックポイント”もあるため、あわせてチェックしてみてください。
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