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両方はもらえない?傷病手当金と障害年金を受給するときに気をつけること

知らないと損をする? 同時に受給する際には知っておくべきことがあります。

 

筆者は地方中核病院で医師として勤務しています。

患者さんには傷病手当金や障害年金を受け取っている人もいらっしゃいます。

結論から申し上げると、傷病手当金と障害年金を両方受け取る場合、申請時期や方法によって損をする、得をするということはありません。ただし、申請しないと損をするということはあります。この記事では「それはどうしてなのか?」ということを解説します。

 

 

傷病手当金と障害年金の関係を解説します。

 

病気やケガによって働けなくなったときに受給できる公的保障として「傷病手当金」と「障害年金」があります。どちらも労働できずに収入が減少したときに受給できるものなので、経済的な恩恵が大きいものです。しかし、この2つは相補的な関係にあるので、同時にもらう場合には支給額が調整されます。

一般的に、両方を受給するときには図のようになります。

 

傷病手当金と障害年金

 

 

 

段傷病手当金と障害年金は併給調整される

 

併給調整とは社会保険や社会保障制度で何かを受給するときに、他の支給額が減額されたり支給停止にされたりする仕組みのことです。

 

例えば、65歳以上の人が働きながら老齢年金を受給するときは、仕事で得た報酬が多いときに老齢年金の額が減額されることがあります。 (在職老齢年金) これと同様に傷病手当金と障害年金も併願調整される組み合わせです。

傷病手当金や障害年金は病気やケガが原因で働けないときに支給される公的保障です。原因となった「病気やケガ」が同じ場合は、併給調整されるため、両方を全額受給することはできません。

 

 

併給調整の方法

 

傷病手当金と障害年金を同時に受給する場合の併給調整の方法を解説します。

 

障害年金が優先的に支給され、傷病手当金は差額がある場合のみ差額だけが支給されます。

一般的には傷病手当金を先に受給して、障害年金を後に受給するケースが多いです。このケースの場合の流れを示します。

まずは傷病手当金が通常どおり、全額支給されます。 後から障害年金の支給が始まると、いったん、傷病手当金との重複期間についても障害年金が全額支給されます。その後に重複して支給した部分の傷病手当金を返還するように連絡がきます。返還が必要なのは、重複期間のうちの障害年金に相当する部分のみです。

障害厚生年金も受け取る場合には、障害基礎年金と障害厚生年金の合計額の1日あたりの金額と傷病手当金の日額を比較して、多い方の金額が手元に残ります。

例えば、傷病手当金の日額が5,000円、障害基礎年金と障害厚生年金の合計が年間108万円の場合を考えてみます。

年間108万円を日割り (計算は360分の1で行う)すると、日額で3,000円になります。

この場合は、最終的に重複期間に支給される日額は5,000円です。厳密には傷病手当金が2,000円、障害基礎年金と障害厚生年金から1日あたり3000円が支給されます。重複期間に過剰に受け取った分は返還する必要があります。

 

 

障害手当金(一時金)の場合の併給調整の方法

 

障害手当金とは、障害厚生年金を受給できる障害3級には該当しないが、厚生年金法に定められる障害程度に該当すれば受給できます。

要するに、障害厚生年金を受給するほど重度での障害ではないが、相応に障害があるときに支給される一時金です。

障害手当金(一時金)を受給することとなった日から、「その日以後の傷病手当金の日額の合計額」が障害手当金(一時金)の額に達するまでの間、傷病手当金は支給停止となります。

 

障害手当金

 

厳密には図のような受給方法ではありませんが、障害手当金は傷病手当金と相補的な関係にあります。傷病手当金の日額以上に受給できることはありません。

例えば傷病手当金の日額が5,000円、障害手当金が100万円とします。傷病手当金を受給していて、途中で障害手当金を受け取った場合に100万円 ÷ 5,000円 = 200 (日) 間は傷病手当金は支給停止になります。その後、201日目から傷病手当金が再開します。

 

 

傷病手当金と障害年金が併給調整されないケースもある

 

以下の2つのケースでは併給調整されません。

 

  • 傷病手当金と障害年金の支給事由が異なる
  • 障害年金が障害基礎年金のみ支給の場合

 

傷病手当金と障害年金は併給調整の対象ですが、それぞれが満額支給されるケースもあります。

まず、それぞれの支給事由が異なる (異なる傷病を理由として支給されている) 場合は調整されず、それぞれが全額支給されます。

例えば、交通事故でのケガを理由として傷病手当金を受給している人が、ケガと全く関係のない難聴を理由として障害年金を受給することになった場合は、両方を満額受給することができます。

 

 

傷病手当金を受給中の人が障害年金を申請するタイミング

 

傷病手当金の支給が終了する約4ヶ月前を目安にしておきましょう。また、障害年金を受け取る可能性が高い人はそれより前に申請した方が良いです。

傷病手当金の支給期間は1年6ヶ月です。病気やケガが治っていない場合でも、期間が終了すると傷病手当金の支給は終了します。その後は障害認定されれば、障害年金が経済支援の主軸になります。

 

障害年金は請求後に審査があります。そのため約3ヶ月後に受給が決定し、さらに約1ヶ月後に初回分が入金されるような流れになることが多いです。申請が遅くなったとしても支給開始月にさかのぼって支給されますが、空白の期間を作らないほうが精神的にも安定するでしょう。障害年金を請求するには、医師に診断書を作成してもらう必要があり、手続きが遅くなりうることを知っておきましょう。

 

 

障害年金の準備開始時期

 

入金の空白期間を避けたい(重複分の返還作業があってもよい)→傷病手当金の支給期間が満了する半年前から準備

入金の空白期間があってもよい(返還作業を避けたい)→傷病手当金の支給期間が満了する2か月くらい前から準備

 

以下に、傷病手当金と障害年金の一般的事項と違いを解説します。

 

 

傷病手当金

 

傷病手当金は、健康保険の被保険者が働けなくなった時に給与の約3分の2に相当する額を最長で1年6ヶ月受給できる制度のことです。

 

健康保険:協会けんぽ、各企業の健康保険組合、共済組合など、自営業者ではない勤め人の多くは健康保険に加入しています。

傷病手当金を受給するための主な条件は以下のとおりです。

 

  • 3日間連続して仕事ができず、4日目以降も仕事ができない状態であること
  • 療養の期間中に給与の支払いを受けていないこと
  • 療養の開始時および支給の開始時に健康保険の被保険者であること

 

 

 

障害年金

 

障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に制限を受けている状態の人が受給できる年金制度です。

 

障害になった原因の病気やケガの初診日に、国民年金に加入していた人は障害基礎年金のみを受給することができ、厚生年金保険に加入していた人は障害厚生年金と障害基礎年金を受給することができます。

障害認定日 (多くの場合は初診日から1年6ヶ月が経過した日) 以降から受給することができます。

 

障害年金を受給するための主な条件は以下のとおりです。

 

  • 障害の程度が障害認定基準に該当していること
  • 初診日の前日の段階で、初診日までの過去1年間に保険料の未納がないこと
  • 上記に該当しない場合は、初診日の前日の段階で、初診日までの全加入期間のうち2/3以上の期間の保険料を納付または免除になっていること

 

 

傷病手当金と障害年金の違い

 

主な相違点は以下のとおりです。

 

 

多くの人の場合、働けなくなってから1年6ヶ月は傷病手当金を受給します。それ以降にも経済的支援が必要な場合は障害年金を受給すると考えておくとわかりやすいです。

 

障害年金は、障害認定基準という基準に該当している限り支給を受け続けることができますが、基準に該当しているかどうかを確認するために数年おきに更新手続きをする必要があります。

 

 

 

まとめ

 

傷病手当金と障害年金を受給するときの仕組みについて解説しました。両方受け取るときは併給調整され、申請時期によって損得は発生しません。

傷病手当金は給与の約3分の2を1年6ヶ月受給できるという仕組みですが、障害年金は計算が複雑です。自身が障害年金をどの程度もらえるのかも、把握しておきたいですね。

 

 

 

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