まったく違う病気に見えるけど、実は深い関係があったのです。
現在の日本では、2人に1人ががんになると推測されています。一方で糖尿病に関しては、患者数約330万人、糖尿病予備軍をふくめると約2000万人にのぼると言われています。このように「国民病」とも呼ばれるほど私たちにとって身近な糖尿病とがんですが、これらの病気には密接な関わりがあることが分かってきました。
糖尿病とがん
日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会によると、糖尿病でない人と比べて、糖尿病の人は1.2倍がんになりやすい、と報告されています。その中でも大腸がんは1.4倍、肝臓がんは1.97倍、すい臓がんは1.85倍にリスクが高まるといいます。
がんになりやすい理由は明らかになってはいませんが、そこにはインスリンの働きが関係しているのではと考えられています。
糖尿病になるとインスリンの働きが悪くなるため、すい臓はインスリンを出そうと働き続けます。インスリンにはブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込む働きがありますが、その他に細胞を成長させて増殖させる作用があります。そのためインスリンが増え過ぎてしまうことが細胞のがん化へとつながるのでは、と考えられているのです。
その他の理由として、がんと糖尿病(※)に共通の危険因子である、さまざまな生活習慣が挙げられます。運動不足、肥満、バランスの悪い食事、過剰な飲酒、喫煙などです。日々、仕事や家事に追われ、暴飲暴食し、運動不足などに陥っている方は要注意です。
※糖尿病には2つのタイプがありますが、がんと関連するのは糖尿病の95%を占める2型のみです。
がんと血糖値管理
日本では、肝臓がんの原因はB型・C型肝炎ウィルスやアルコール性肝炎が主でしたが、最近は非アルコール性脂肪肝が原因で肝臓がんになる人が増えています。
糖尿病の人には脂肪肝が多く見られますが、肝臓の30%以上が脂肪化しても自覚症状はないため肝臓がんリスクを高める要因のひとつとなります。
また、インスリンを分泌するすい臓は糖尿病と深く関わっており、糖尿病になると、すい臓がんにもなりやすいということは以前から知られています。しかし、その逆のケースでは、すい臓がんによってインスリンが不足し糖尿病を引き起こすことがあります。糖尿病と思っていたら、それ以前にすい臓がんを発症していた、ということもあるのです。
まずは、初期段階では気づきにくい糖尿病を早期発見するために、定期的な健康診断を受けることが大切です。
糖尿病が見つかれば、食事療法や薬物療法で適切に血糖値を管理することで、がん発症の予防にも繋がるのです。
がんと糖尿病の治療について
がんが見つかった時に、糖尿病が発覚するケースもあります。その場合、手術後の傷が治りにくく、感染症を起こすと抗がん剤治療にも影響をおよぼすため、手術前後や抗がん剤の治療中では適切に血糖をコントロールすることが重要です。
糖尿病でない場合も、抗がん剤治療の際に使用する内服薬によって血糖値が一時的に上がることがあります。その場合は、抗がん剤治療を行う期間のみインスリン療法を行なうことがあります。
もともと糖尿病である患者さんはもちろん、糖尿病を併発しているがん患者さんも、糖尿病の専門医がいる病院で治療を受けるのがよいでしょう。
健康診断で血糖値が高いと分かっていても、糖尿病は初期では自覚症状がないため、放置されがちです。糖尿病はがんのリスクを高めるだけでなく、血糖値の急上昇を繰り返すことにより、知らぬ間に動脈硬化が進み心臓病や脳血管疾患のリスクを高めてしまう怖い病気です。
このような大きな疾患を予防するために、まずは以下のように日頃の生活習慣を改善することが大切です。
A Alcohol 「アルコールは控えめに」
B Body weight 「適正な体重」
C Cigarette smoking 「喫煙はやめる」
D Diet 「食事は適量に」
E Exercise 「毎日運動を」
そして、健康診断は定期的に受けること、血糖値が高い状態にあれば決して放置することなく、早めに治療を受けましょう。
まとめ:現在は、どちらも人類にとって大きな敵なのです
がんと糖尿病。まったく違う病気のようにも見えますが、実はお互いに深い関係もあることがお分かりいただけたでしょうか。
しかもそれぞれを発症するリスクには、普段の生活習慣も大きくかかわっています。現在は、糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防策は、そのままがんの予防策にもつながると考えられています。
こうしたことが分かってきたのも、医療の発展に伴う変化です。今も医療の世界は日進月歩で進化しています。もしかするとそう遠くない未来には、また大きな変化が起きているかもしれません。
しかしながら、やはり自分の体を一番よく知っているのは自分でありたいもの。生活習慣病の予防策も「これだけやっていれば大丈夫」というものではありません。
普段から自分の行動を見直し、身体からの声に耳を傾けるとともに、病気になりにくい生活を送ることがとても大切なのです。
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