世界三大珍味の1つ、フォアグラはガチョウやアヒルに大量の餌を摂取させ、肝臓を脂肪肝へと肥大化させて作った食べ物です。
当然、過剰なカロリーを摂取すれば人間にも同じことが起きます。
脂肪肝は、過剰なカロリー摂取や運動不足、飲酒によって肝細胞内に中性脂肪が異常に蓄積した状態のことを指します。
これまで、「脂肪肝=酒飲みの病気」という認識が一般的でしたが、ここ20年近くでお酒を飲まない人が脂肪肝になるケースも増えてきました。
また、日本における肝臓の病気といえばB型肝炎やC型肝炎ウイルスが原因であることが主でしたが、近年では非ウイルス性肝炎の割合が増加しつつあり、進行してしまえば肝硬変や肝細胞ガンに至り死亡する可能性もあります。
そこで本書では、今増えつつあるお酒を飲まない人の脂肪肝について解説し、肝硬変や肝細胞ガンの予防のために行うべきことをご紹介します。
<日本人男性の3人に1人が脂肪肝>
口から摂取した食べ物は唾液や胃酸などの消化液によって消化され、分解されて腸から吸収され血管内に至ります。
糖質や脂質は主に体のエネルギー源として、たんぱく質は体を構成する筋肉や細胞の形成に使われます。
しかし、過剰に糖質や脂質を摂取してしまうと、日常生活でエネルギー源として使用しきれず体内に余ってしまいます。
余った糖質や脂質は、中性脂肪として皮下や内臓に蓄積していき、これが一般的に言われる皮下脂肪や内臓脂肪となります。
皮下や内臓にも蓄積しきれないほど中性脂肪が体内に飽和している場合、本来蓄積するはずのない場所に蓄積し始め、その1つが肝臓になります。
肝細胞内に徐々に脂肪が蓄積し、全肝細胞の30%以上が脂肪化した場合に脂肪肝という病気と診断されます。
もともと、脂肪肝は肥満患者の多いアメリカで注目された疾患でしたが、近年では日本でも患者が増加傾向にあることが報告されています。
脂肪肝患者は全国で3000万人以上いると報告されており、今や3人に1人が脂肪肝に罹患する時代です。
では、実際に脂肪肝になってしまうと体にどう影響を与えてしまうのでしょうか?
<脂肪肝になると何がまずいの?>
脂肪肝が体に与える影響は主に2つ、肝臓への影響と全身への影響です。
まず肝細胞に脂肪が蓄積することで慢性的な炎症が引き起こるため。組織が繊維化してしまい肝臓への血流が低下し、肝硬変に進行する可能性があります。
また、持続的な炎症によって肝細胞ガンに発展する可能性もあります。
全身に与える影響としては、肝細胞に蓄積した脂肪細胞がアディポネクチンを分泌することで、インスリン抵抗性が上昇し血糖値が上がりやすくなってしまいます。
血液中のグルコースの増加は、結局肝細胞での中性脂肪の蓄積に繋がってしまうため、負のスパイラルに陥ってしまうのです。
また、中性脂肪の増加によって動脈硬化が進展し、急性心筋梗塞や脳血管障害などの致死性の高い疾患に罹患する可能性も増加してしまいます。
以上のことからも、脂肪肝は侮ってはいけない病気であり食生活や飲酒、運動習慣などに十分注意する必要があります。
しかし、近年ではお酒を飲んでいないにも関わらず脂肪肝になるケースが増加してきました。
<お酒を飲まない人の脂肪肝、NASHとは?>
脂肪肝が怖い病気だと認識されるようになったのはつい最近のことです。
20-30年前までは、脂肪肝から肝炎や肝硬変に進むことはないというのが医学の常識であり、脂肪肝になっても予後は良好で、特に命に関わるようなことはないと考えられていたのです。
脂肪肝の危険性が最初に指摘されたのは、1980年代にアメリカのLudwigという病理学者が報告した事例とされています。
「アルコールを飲んでいないのに、まるでアルコール性脂肪性肝炎のような進行性の肝障害を来す人々がいる。そのような人たちに共通する疾患として、肥満、糖尿病、脂質異常症などがある」という報告でした。
この時初めて提唱されたのが非アルコール性脂肪性肝炎(Nonalcoholic Steatohepatitis: NASH)と言われています。
しかし、当時世界的にずさんな輸血管理の影響もあり、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる被害の方が深刻であったため、NASHは注目度が低かったのも事実です。
その後、世界的に飽食の時代になり肥満や糖尿病などが増え始め、メタボリック症候群の病態がクローズアップされるようになると、アメリカで再び脂肪肝が注目されるようになりました。
2003年のアメリカ肝臓学会でNASHが重要なテーマとして取り上げられ、遅れること数年、日本でも脂肪肝が注目され健康診断や人間ドックなどで指摘される件数も増加し、国内での脂肪肝患者の数が増えたと考えられます。
その後の研究で、脂肪肝になる患者のうち、お酒を飲まない人の割合は約半数近くであり、その中の10-20%はNASHとなり肝硬変や肝細胞ガンに進行しやすいことが判明しました。
肝炎の原因は、ウイルス性、薬剤性、自己免疫性、肥満や飲酒などが挙げられますが、中でもB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染による患者割合が圧倒的に多く、肝細胞ガンの発生の多くもウイルス性によるものでした。
しかし、現在ではワクチンや抗ウイルス薬の進歩により、ウイルス性肝炎は治療可能な病気になりました。
特に、C型肝炎では副作用の少ない経口薬が開発され、ほとんどのウイルスを排除できるようになりました。
これらの背景から、近年ではウイルス性以外の原因で肝炎になる割合が増加傾向にあります。
国内における肝ガン全体に占める非ウイルス性肝炎を背景とした肝がんの割合は、1991年には10%でしたが2015年には32.5%にまで増加しています。
そして、非ウイルス性の中でもNASHの割合が増えてきているのです。
まだ脂肪肝の詳しい調査が始まって年月が浅いことから、実際にどれくらいの患者や予備群の人が国内にいるのかは今後の報告を見ていく必要があります。それでも肥満の増加を背景に、世界的にも日本でもお酒を飲まない人の脂肪肝の有病率は上昇していくと見られています。
いずれにしても肝硬変や肝細胞ガンまで進行する原因の肝炎はウイルス性やアルコール性が大半でしたが、にわかにNASHの比率が高まっていることは確かな事実です。
さて、このような背景の中で我々が取るべき対応にはどんなことがあるでしょうか?
- 生活習慣の改善
NASHの予防のためには、そもそものカロリー摂取量や飲酒量を抑える必要があります。
規則正しい食生活と過度な飲酒を控え、その上で定期的な運動習慣を身に付けることが最大の予防策と言えます。
食事内容は特に糖質や脂質は控え、たんぱく質を摂取すると脂肪肝になりにくくなります。
- 定期的な健診受診
NASHの厄介なところは、肝硬変に進行するまでほとんど症状がないというところです。
つまり、患者が自覚症状を有して病院に受診する段階ではすでに手遅れ、ということもあり得るため、定期的な健康診断の受診が早期発見に有用です。
特に脂肪肝の場合、血液検査の肝機能の項目だけ見ても正常値であることが多く、腹部CT検査や腹部超音波検査などで形態学的評価を行う必要があります。
実際に脂肪肝の発見が遅れ、NASHに進行して生活習慣病や肝細胞ガンに罹患すれば、治療期間や治療費は大変なものになります。
健康上の問題のみならず、その間の就業にも影響が出るため経済的負担も甚大です。
NASHに備えるには、医学的には健診受診で備え、経済的にはお金を用意しておく必要があります。
そこで、不安がある方は民間保険に加入し備えておくことも1つの選択肢だと思います。
【エピローグ】 もし、このようにお考えなら
今回の記事はいかがでしたか?既にご存じの情報もあれば、「そうなんだ」「知らなかった」といった情報もあったのではないでしょうか?
中でも、心疾患や脳血管疾患の内訳となる“病名(種類)”については、「混乱してしまう」「わかりにくい」といった声が多く聴かれます。
・ 【心疾患】 心筋梗塞と急性心筋梗塞の違いは? 狭心症とは何が違うの?
・ 【脳血管疾患】 脳卒中と脳梗塞と脳出血の違いが分からない⁉
またこの違いは、ご加入されている生命保険の「保障範囲の違い」にも直結し、場合によってはこのように「受け取れる」「受け取れない」の違いになってしまうことも考えられます。
・自身の認識:「脳血管疾患」と診断されれば受け取れると思っていた。
・実際の保障範囲:「脳卒中」の場合のみ受け取れる保障内容だった。
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