ガンに対しては従来の手術療法や放射線療法、薬物療法などの標準療法に加えて、近年では医学の発展に伴い様々な最先端の治療が世界中で開発されています。
標準治療やこれらの治療法は「ガンの発生はなんらかの原因で遺伝子に変異が生じた結果である」という考えのもとに開発、施行されていますが、残念ながら現在までガン患者数は減っていません。
さらに、これらの最先端治療は社会保険料の高騰を招くという問題を抱えています。
果たして本当に今までの治療法や最先端の治療法がガン治療にとってベストなのでしょうか?
一方で、ここ数年のダイエットブームで皆さんもご存知の糖質制限やケトン食が近年はガンの食事療法として注目を浴びています。
誰でも低コストで実践可能な食事療法は今後のガン治療に大きな改革をもたらす可能性があるのです。
そこで本書では、ガンに対する食事療法について詳しく解説していきます。
<今までのガン治療が抱える問題点とは?>
ガンに対する治療法は手術療法、放射線療法、薬物療法の3大治療に加え、近年では自分自身の免疫細胞にガン細胞を攻撃させる免疫療法がスタンダードになりつつあります。
これらの治療法の大部分は「ガンは遺伝子の変異によって生じている」というガンの遺伝子変異説に基づいています。
確かに一部のガンではある特定の遺伝子に異常を認め、それに対する治療薬が特異的な効果を示す例もあります。
その最たる例が、慢性骨髄性白血病と言われる血液のガンです。
慢性骨髄性白血病は、遺伝子の一部に異常が生じてフィラデルフィア染色体と呼ばれる異常遺伝子を形成することが原因で、これに対し開発された分子標的薬イマチニブは非常に高い治療効果を示しています。
しかし、逆に言えば製薬会社や医療機関が大金を投資して研究しているにも関わらず、多くのガンに共通するような原因遺伝子は現在に至るまで特定できていないことも事実です。
また仮にそんな遺伝子が見つかったとしても、治療薬の開発にはまだまだ時間とコストがかかるのは間違いありません。
それに対して、今までの治療法と全く異なるアプローチである免疫療法は近年世界的に開発や研究が進んでおり、その効果に期待が寄せられていますが非常に高額であるという問題を抱えています。
例えば、スイスのノバルティスファーマ社が開発した白血病に対する免疫療法薬であるキムリアはまさにその代表例で、なんと1回の治療に対する薬価は3000万円以上です!
あまりにも高額な医療費であり、今後もこういった製剤を保険承認していけば社会保険料は高騰し財政破綻してしまうでしょう。
つまり遺伝子変異説に基づいて行われてきた標準治療ではガンは減らず、最先端の治療では財政を圧迫してしまうという問題を抱えているのが現状なのです。
そこで、安価で誰でも実践可能な食事療法がガンの新たなる治療法として注目され始めています。
<ガンに対する兵糧攻め!ケトン食糧法とは?>
人間が食事から摂取する栄養素のうち、主にエネルギー源としているのは糖質、たんぱく質、脂質の3つです。
いわゆる米や麺類、パンなどの炭水化物には糖質が、豆腐や肉や魚にはたんぱく質が、油分には脂質が多く含まれています。
人間の正常な細胞はエネルギー源としてまず糖質を利用しますが、糖質の供給が不足すると体内の脂肪を分解してケトン体を作り出しエネルギー源として利用します。
つまり正常細胞は複数の栄養素を自分のエネルギー源に変換できるハイブリッド構造になっています。
近年のダイエットブームで恐らく多くの人が糖質制限やケトン食などの言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
糖質制限を行うことで体内の脂肪が燃焼されやすくなるため、高血圧や糖尿病や高脂血症、もしくは肥満の方にとって有効なダイエット法とされてきたのです。
しかし、実はガンの分野でもこれらの食事療法が注目されつつあります。
多くの研究の結果、ガン細胞はエネルギーを得るための栄養素として糖質に大きく依存しており、正常細胞と比較しても5-8倍ほどの糖質を取り入れなければガン細胞自身の生命活動を維持できないことが分かったのです。
実はすでにこのガン細胞の特性を利用した検査が実臨床で行われています。
PET-CT検査と呼ばれるガンの転移の有無を調べる検査がそれです。
グルコース(糖質)の一部をフッ素に置換した薬剤を体内に注入し、各臓器の取り込みの度合いを調べ、ガン細胞であれば異常に集積を認めるため転移巣として発見できる検査です。
これらのことを踏まえると、ガン細胞は正常細胞と異なりケトン体をエネルギー源として利用せず、ガン細胞にとって糖質こそが命綱と言っていいほど唯一のエネルギー源なのです。
この考え方をベースに、ここ数年の間に広まってきたのが糖質制限やケトン食によるガン治療です。
まさにガン細胞に対する兵糧攻めのような治療法なのです。
では、過去の研究では実際にどう言った効果が得られてきたのでしょうか?
2010年にGiulio Zuccoliらが発表した論文では、65歳の難知性脳腫瘍に対して標準治療と並行してケトン食療法が行われました。
脂質:(炭水化物+たんぱく質)が4:1、かつ600kcal/日未満の食事内容で治療を行い、2ヶ月後にMRIを行ったところ脳腫瘍が視認できなくなっていました。
さらに、その後ケトン食療法中止から10週間後には再びMRIで脳腫瘍が確認されたそうです。
次に2008年にJeppe T Friborgらが発表した論文では、イヌイット民族の疫学調査の結果が明らかにされています。
1910年以前までイヌイット民族の食習慣はほとんど現在のケトン食と同じ低糖質高脂肪食であったそうです。
当時のイヌイット民族のガン発生率は極めて低かったことが報告されており、その後食文化の欧米化に伴いガンの発生率が増加してしまったことが報告されています。
これらのことからも、2010年頃からガン細胞に対するケトン食療法は海外を中心に注目され始め、2013年には大阪大学先進融合医学共同研究講座が主体となり日本国内でもケトン食の有用性を検討する臨床研究が開始されました。
まだまだその有効性と安全性は検討されるべき段階ですが、多くの臨床結果からも新しいガン治療として注目されていることは間違いありません。
<1日1000円で誰でも実践可能!ケトン食の実際と課題について>
では、ケトン食とは実際にどのような食事なのでしょうか?
それぞれの研究でケトン食の基準は異なるため一概には言えませんが、コンセプトは「脂質を多く摂取し、糖質を極限まで抑える!」です。
例えば大阪大学の研究では1500kcal/日、脂質140g、糖質10g、たんぱく質60gという基準値を設定していました。
これは、実際の食事に置き換えてみると脂質140g=豚バラ350gや卵20個分、糖質10g=食パン1/2枚、たんぱく質60g=ササミ300g分です。
このレシピであれば1日1000円程度でケトン食としての栄養素を摂取できるため、非常に安価で実践可能な治療法なのです!
しかし問題点として、実際の食事で基準値を満たすように管理するとなると、食事がかなり偏ってしまい自分1人で継続して管理するのは非常に困難であり、管理栄養士の協力が必須になってしまいます。
まとめ
食事療法は、ガン以外にも高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防にもなり、誰でも簡単に実践可能です。
また医療コストは非常に安価で、ガンへの治療効果も期待できるため、今非常に注目が増しています。
しかし、食事療法はあくまで既存の治療と併用することが現在の主流であり、筆者自身も補助的役割を期待しています。
つまり本書では、決して標準治療や最新治療の医学的効果まで否定しているわけではありません。
実際にガンの種類によっては高額な治療が素晴らしい効果を示す例も多く認めているため、読者の皆さんにもそういった治療が必要になる日が来るかもしれません。
そんな時、お金や知識がないことで治療の選択肢が狭まることだけは避けるべきであり、日々準備しておくことが何よりも大切だと考えます。
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