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ここまできた!「薬剤×医療機器」でガンをピンポイント攻撃!

 

近年世界中で革新的な検査や治療が開発されており、その影響は患者が負担する医療費にも大きな変化を及ぼしています。

 

最先端の治療にはどうしてもコストがかかってしまい、社会保険料では負担しきれなくなってきているため、これらの治療を自由診療で受けなくてはならない時代が近づいています。

 

しかし、ガンに対する最先端治療である免疫療法やナノマシンによるケミカルサージェリーは実際にそれだけ価値のある治療であり、患者は自分の病状や状態に応じてこれらの治療を、自費だとしても選択する必要性があるかもしれません。

 

そこで本書では、ガンに対する最先端治療としてナノマシンを使ったケミカルサージェリーについて詳しくご紹介します。

 

<医療機器の発達とともに生まれたナノマシン>

 

 

紀元前950年から使われる松葉杖が最も古い医療機器であり、それから時代とともに数々の医療機器が開発されてきました。

1943年には体外型人工腎臓、1982年には体内型人工心臓、2001年にはカプセル型内視鏡と、医療機器の発達は時代とともに小型化、高機能化、低侵襲化の方向に進化を続けています。

 

それに対しガンに対する標準治療は主に手術療法、放射線療法、薬物療法の3つで、これらの治療法も多くのトライアンドエラーを経て進化を遂げてきました。

 

例えば手術療法では腹腔鏡手術やロボット手術が普及し、より低侵襲にガンの手術を受けることが可能になりました。

放射線療法の発達により、手術療法ではアプローチできないような部位のガンにも治療することができるようになりました。

また薬物療法の分野では、抗ガン剤やホルモン剤はもちろんのこと、最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など多くの効果的な新薬が開発されています。

 

しかし、ここまで多くの医療機器や治療法が発達した現代でもガンに勝てず亡くなってしまう患者は減っていません。

 

標準治療の問題点として手術療法は完全なるガンの除去、つまり根治が期待される治療ですが体にかかる負担や侵襲は大きく、入院すれば医療コストが増えて仕事や家庭にも影響が出てしまいます。

薬物療法では、体内に投与された薬物が全身に拡散していくためガン細胞だけを攻撃することが難しく、それに伴う副作用もあるため入院が必要となるケースも稀ではありません。

 

そこで近年、これらの標準治療の問題点をクリアするために最新の医療機器であるナノマシンを用いたケミカルサージェリーの開発が進んでいます。

 

<ナノマシンによるケミカルサージェリーとは?>

 

 

ケミカルサージェリーとは、特殊な医療機器を用いて安全な光や超音波を人体の病変部位にピンポイントで照射し、そこで薬剤を活性化させて手術せずに効果的にガン細胞を破壊する「薬剤×医療機器」による治療法です。

 

皮膚を切らずにガンにアプローチできる放射線療法と、一般的な抗ガン剤で問題になる正常細胞への影響を限りなく減らした、まさに良いとこ取りのハイブリッド療法なのです。

 

では、具体的にどのように治療しているのでしょうか?

ケミカルサージェリーを可能にする最大の要因は、薬の乗り物となるナノマシンです。

 

ガン細胞を破壊できる薬が正常細胞には影響を与えないようガン細胞にだけ届くようにナノマシンによって運搬させ、ガン細胞に集積した薬を外部から照射して一気に活性化させ破壊する。

簡易的ですがこれがケミカルサージェリーの治療法であり、ナノマシンがなければ薬は正常細胞にも集積してしまうため、既存の薬物療法と同様に副作用が問題となってしまいます。

 

つまり、いかにしてガン細胞にだけ集中して薬を届けるかがケミカルサージェリーの実現には必要不可欠であり、可能にする技術としてナノマシンの開発が進んでいます。

 

<ナノマシンの技術と開発について>

 

 

前述したように、薬を「必要なときに、必要な部位に、必要な量だけ」届けるという薬物療法の理想的な形態を求めて、いわゆるドラックデリバリーシステムの開発は進み、今人類はついにその最終形としてナノマシンにたどり着きました。

 

ナノマシンは高分子ミセルと呼ばれる物質を複数組み合わせて形成されていて、複数の高分子ミセルを自由に組み合わせることで、ナノマシンはそのサイズや特性を自由に変化させることが可能であり、それぞれのガンの性状に合わせた開発が行われています。

 

わかりやすい例を挙げましょう。

例えばガンの中でも間質が豊富な膵臓ガンは、100nmの粒子では間質にトラップされてしまいガン細胞にまで到達できません。

そこで高分子ミセルのサイズを50nm以下にまでサイズダウンしたところガンの深部にまで到達が可能となりました。

 

また、他のガンと異なり悪性脳腫瘍を流れる血管は透過性が非常に低いことが知られています。

透過性が低いため、血管内を流れる高分子ミセルがガン細胞に移行できないのです。

そこで、高分子ミセルの表面に腫瘍血管と特異的に結合するペプチドを導入したところ、脳腫瘍へのスムーズな移行が認められました。

 

このように、高分子ミセルを自由に組み替えて、標的とするガン細胞に特異的に到達できるように開発されているのです。

まるで意思を持って自由に体内の至る所を移動できる夢の乗り物なのです!

 

では実際にどんなケミカルサージェリーが現在開発されているのでしょうか?

いくつかご紹介しましょう。

 

  • 光線力学療法(photodynamic therapy:PDT)

 

PDTでは、高分子ミセルに腫瘍の血管と特異的に結合しやすくなる環状RGDペプチドを導入したナノマシンを使用します。

これにより、よりガン細胞に集積しやすく、かつ血液中に残りにくい理想的なナノマシンとして機能することができます。

 

実際の治療では、ポルフィリンなどの光感受性物質をナノマシンで包接した薬を体内に注入します。

するとポルフィリンはナノマシンによってガン細胞に特異的に集積し、その後630nmのエキシマダイレーザーという光源を用いて病変に照射を行います。

ポルフィリンが光線に反応することでガン細胞を死滅させます。

 

この光源は体表から1cmまでなら100%届きますが、2cmでは50%ほどしか届かなくなるため、より体表に近い限られたガンにのみ有用です。

保険適応となっているのは、食道ガン(放射線後の局所再発のみ)や気管支近くの小さな肺ガンなど非常に限られています。

 

  • ホウ素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy:BNCT)

 

BNCTではホウ素と呼ばれる薬剤をナノマシンで包接した薬を体内に投与し、ガン細胞に特異的に集積させます。

その後、病変に熱中性子線と呼ばれる放射線を照射し、ホウ素が反応してガン細胞を死滅させます。

 

熱中性子線は体表から7cmと深部まで届きますが、中性子線自体が非常に細い放射線であるため、大きなガンの治療には不向きです。

現在保険適応で治療可能なのは「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部ガン」のみです。

頭頸部は神経や血管が複雑に走行しているため、緻密な中性子線での治療が向いています。

 

まとめ

ケミカルサージェリーは、ナノマシンの技術を用いてガン細胞にだけ薬を届け、その上で照射により薬を活性化させてガン細胞を破壊します。

手術のように皮膚を切る事なく、抗ガン剤のように副作用に苦しむこともなく、非常に低侵襲な治療が可能です。

 

大学病院などの高度医療機関ではすでに保険診療として実施されていますが、今後さらなる研究や開発が進めば、多くの病院において日帰りでガンの治療ができるかもしれません。

 

しかし、保険適応となる対象疾患が非常に限定的である問題も抱えています。 仮に多くのガンが承認されたとしても薬価や技術料が適正に評価されなければ、実臨床での普及は難しいです。

実際にBNCTの技術料だけでも保険点数は238500点、つまり2,385,000円の医療費が発生します。

 

命を救うために必要な治療法でも、いまの日本では高額すぎる医療を次々に保険承認することは出来ません。

だからこそ、どんな治療がどんな効果を持ち、どれほどのお金が必要なのか自分で情報を知っておく必要があるのです。

 

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