現代社会においては、女性の社会進出は目覚ましいものがあります。
女性社長や起業家が増え、政治家の女性比率も増加しています。
ドイツのメルケル元首相やアメリカのカラマ・ハリス副大統領のように、日本でも女性首相が誕生する日はそう遠くないように感じます。
女性の社会進出は雇用や男女平等の観点からすれば素晴らしいことですが、医学的に見れば乳ガンや卵巣ガンの増加に寄与している可能性があり、実際に乳ガンの罹患率は年々増加傾向にあります。
その反面で、医学の発達により多くの新しい知見も解明されてきました。
中には、親から引き継いだ遺伝子の影響で普通の人の何倍も乳ガンに罹患しやすくなる病気もあり、その原因遺伝子まで解明されてきたのです。
日本や海外の有名人が乳ガンになると、どう対応したのか一挙手一投足が報道されるほど多くの女性にとって敏感な問題であることは間違いなく、より正しくより新しい知識を身につけておく事が唯一の対応策だと思います。
また男性でも乳ガンになる可能性はあるため、他人事ではありません。
そこで本書では、乳ガンに対する最新の知見や現状を紹介し、その上で我々がどのように行動すべきかを解説していきます。
<そもそも人間はなぜガンになるのか?>
そもそも、なぜ人間はガンになってしまうのでしょうか?
人間の正常な細胞内には遺伝子と呼ばれる、その細胞の設計図が存在します。
この遺伝子はさらに細かく見ると、アデニン、グアニン、シトシン、チミンと呼ばれる4つの塩基が配列されたものであり、細胞が増殖する際にはこの塩基配列を読み取る事で全く同じ新しい細胞を作る事ができるのです。
次にマクロな視点から考えてみると、爪や髪の毛は切っても必ず再生しますし、怪我をしても大抵は元の形に戻ります。
これは、その部分の細胞が細胞分裂を行い、遺伝子の塩基配列を元に自身と同様の細胞を増殖させる事で再生しているのです。
しかし、何らかの原因でこの塩基配列に異常が生じると、正常細胞とは異なる細胞、つまりガン細胞が発生してしまうのです。
現代医学においては、このようにガンは遺伝子の異常から来るものという考えが主流となっています。
タバコを吸えば気道が損傷されて肺ガンを発ガンし、塩分により胃粘膜が損傷されて胃ガンを発ガンします。
このように、遺伝子の損傷の原因もそれぞれのガン毎に解明が進んできました。
では、日本において年々罹患者数が増加傾向にある乳ガンの原因とは何なのでしょうか?
<減らない乳ガンの原因とは一体?>
乳ガンの主な原因は「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンによる乳腺細胞の遺伝子異常と考えられています。
つまり、エストロゲン被曝量が多ければ多いほど乳ガンの発症率が増加してしまうのです。
近年、日本では食文化の欧米化に伴い高脂質な食べ物を摂取する機会が増加し、脂質がエストロゲンの原料となる為、乳ガン増加に寄与していると考えられています。
また日本では出産する女性が減っていますが、出産しない女性の方が毎月訪れる月経回数が多くなる為、エストロゲン被曝量は増えてしまいます。
出生率の低下の原因として、女性の社会進出や妊婦への社会保障が薄い点などが指摘されており、乳ガン増加に寄与していると考えられています。
しかし、恐ろしいことに乳ガンの中にはこういった外的要因とは一切関係なく、先天的な遺伝子の異常が原因で乳ガンを発症してしまうこともあります。
祖母や母、姉妹などの血縁者に乳ガンの方が複数いる場合、これを家族歴と言い、その結果本人も乳ガンを罹患した場合、「家族性乳ガン」と呼びます。
さらに、近年の遺伝子解析の技術向上により発ガンの原因となる共通の遺伝子が特定された乳ガンもあり、これを「遺伝性乳ガン」と呼びます。
現在の医療技術で解明されている遺伝性乳ガンは、BRCA1もしくはBRCA2という遺伝子に病的変異がある事で発症する、遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群(HBOC: Hereditary Brest Ovarian Cancer)です。
アメリカの有名女優であるアンジェリーナジョリーさんは自身がHBOCであることを公表されており、聞き馴染みがある方もいるのではないでしょうか?
現在日本では年間約9万人、つまり12人に1人が乳ガンに罹患しますが、その約10-15%が家族性乳ガン、約5%が遺伝性乳ガンと言われています。
つまり約80%の方は遺伝など関係なくエストロゲン被曝により乳ガンを発症する為、やはり多くの方が積極的に乳ガン検診を受ける必要があると考えられます。
実際に若年からの検診受診率が日本より高い欧米では、乳ガンによる死亡率は減少傾向にあるから驚きです。
次に、外的要因とは関係なく遺伝により乳ガンに罹患する患者数の割合は家族性、遺伝性合わせても約20%とそこまで多くないわけですが、普通に乳ガンになる人と比較して家族歴のある方は約2-4倍発ガンしやすく、異常遺伝子BRCA1やBRCA2を持っている方はなんと約6-12倍も発ガンしやすいのです!
BRCA遺伝子の変異を持つ方であれば最大約90%の発ガン率を誇る計算になる為、やはり怖い病気だと言えます。
<遺伝性乳ガンHBOCってどんな病気?>
前述したように、HBOCとはBRCA1もしくはBRCA2という遺伝子に病的変異がある事で発症する遺伝性乳ガンです。
子供は母親と父親の遺伝子を半分ずつもらって生まれてくる為、母親から子供に異常なBRCAが引き継がる確率は50%です。
また子供が男児であったとしても異常なBRCAが引き継がる確率は女児と同じ50%であり、やはり乳ガンは女性だけの問題ではないということがわかります。
HBOCの特徴として、一般的な乳ガンと比較して発症年齢が低く、両側発症例が多く、卵巣癌を発症することもあるなどの特徴があります。
もしご自身を含めた血縁者に、下記に該当する方がいらっしゃる場合は要注意です。
- 40歳未満で乳ガンを発症した方がいる
- 年齢を問わず、卵巣ガンの方がいる
- ご家族の中で、お一人の方が時期を問わず、両側の乳房、もしくは片側の乳房に乳ガンを2個以上発症したことがある
- 男性で乳ガンを発症した方がいる
- ご家族の中で、本人を含め、乳ガン発症者が3名以上いる
- トリプルネガティブの乳ガンと言われたことがある
- ご家族の中に、BRCA遺伝子の異常を確認された方がいる
これらの項目のどれか1つにでも当てはまる場合は、HBOCである可能性が一般より高いと言えます。
〈遺伝性乳ガンを考慮した対抗策とは?〉
上記項目でHBOCが疑われる場合、まずは遺伝カウンセリングに相談して不安を取り除くことを勧めます。
その上で、正しい知識や情報を元に遺伝子検査を受けるかどうか選ぶこともできます。
遺伝子検査はBRCAの異常変異の有無を確認することができる非常に有用な検査であり、ある一定の条件を満たせば保険適応で行うことができます。
また乳ガンや卵巣ガンと診断された事があり、かつ遺伝子検査でHBOCと診断された場合に限り、MRIによる乳房サーベイランスやリスク低減手術が2019年に保険適用となりました。
このように年々遺伝子検査の重要性や立ち位置は明確なものになってきています。
しかし、遺伝子検査にも限界やデメリットもあります。
仮にBRCA遺伝子の変異を認めた場合、ご自身のみならず、同じ遺伝子を共有している血縁者にも影響しうるため、情報の扱いや心理的配慮に慎重さを求められるのです。
また遺伝子検査には多大なる労力とコストが必要で、検査結果の解釈にも専門的な知識が必要となります。
また本来であれば乳ガン発症前から異常遺伝子を確認したいところですが、これらの背景から予防的検査は現状保険適応ではありません。
つまり、保険適応で受ける場合はあくまで乳ガンに罹患した後の確定診断や治療薬選定のための検査に過ぎないのです。
まとめ
現状、遺伝子検査を保険診療以外で受ける最善策はHBOCに対する正しい知識と情報を身につけた上で、事前に民間保険に加入するか、もしくは自分でお金を用意することです。
これからの時代、健康や命の選択は情報とお金次第になるかもしれません。
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