たびたび話題になる年金の不正受給は、なぜ起きてしまうのか…? 現代社会が抱える深刻な問題とは?
親が亡くなっても死亡届を出さず、年金を受給し続ける。このような年金の不正受給が後を絶ちません。不正と知りながら金銭目的で受給を続けるケースもあれば、親が亡くなった場合にどうすればよいのか知らなかったケース、社会から孤立して誰にも助けを求められなかったケースなど、背景はさまざまです。
このような不正受給の要因の一つとなっているのが、「8050問題」です。
親の年金に頼って生活する中高年の子ども【8050問題】
8050問題とは、80代の親が自宅にひきこもる50代の子どもの生活を支えている状態をいいます。子どもには親の年金以外に収入を得る術がなく、生活のためにやむなく不正受給に至るケースが後を絶たないのです。
内閣府の調査では、満40〜64歳までの「中高年のひきこもり」は全体の1.45%、61.3万人にのぼると推計されています。同調査によると、ひきこもりになったきっかけは「退職」「人間関係がうまくいかなかった」「病気」「職場になじめなかった」などの理由が上位を占めています。
ひきこもり状態になってから7年以上の人が約半数を占め、ひきこもりの長期化も進んでいます。コロナ禍による失業やコミュニケーションの希薄化がさらに追い打ちをかけ、8050問題の深刻化が懸念されています。
社会から孤立した状態で支援が行き届かず、親が要介護状態になったり、死亡したりすることで、親子が共倒れになる事態が現実になっているのです。
就職氷河期世代はさらに深刻な「8050問題」予備軍
現在50代の人は、20代でバブル景気とバブル崩壊を経験している世代。バブル期の売り手市場で大企業に就職し、社会的・経済的に成功を収めている人もいます。
その一方で、バブル崩壊後の景気低迷によって社会から脱落し、親の年金に頼らなければ生活できない状況にある人たちがいるのも、また事実です。
現在の50代よりも深刻な状態といえるのが40代。この世代は「就職氷河期世代」と呼ばれ、新卒時に正社員で就職できなかった人が多くいる世代です。この世代が新卒で就職活動を迎えた時期は、バブル崩壊、消費税引き上げ、アジア通貨危機、金融機関の相次ぐ破綻などが重なり、企業は採用を抑制。有効求人倍率は1倍を割り込み、非正規のフリーターや派遣労働者が急増しました。
40代後半は、現在70代の団塊の世代の子どもにあたる「団塊ジュニア」世代でもあります。同年代の人数が多いため、激しい競争に敗れ、経済的に苦しい状況にある人も少なくありません。
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、男性大卒正社員の平均年収は610万1,200円、そのピークは50〜54歳の813万8,000円です。
これに対し、男性大卒非正社員の平均年収は397万300円、50〜54歳のピークでも438万3,900円にとどまります。同じ大卒の50代前半の人でも、正社員であるかどうかで平均年収には倍近い差がつくのです。
【大卒正社員・非正社員の平均年収の比較(カッコ内は年齢階層別でみたピーク年収)】
※令和3年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より筆者作成
上記はあくまで平均であり、スキルを活かしてフリーランスで活躍するなど、正社員でなくても高収入を得ている人もいます。その反面。年収が平均を下回り、経済的に厳しい状況に置かれている人も少なくありません。
非正規雇用・低年収は結婚の障害に
就労形態や年収は結婚にも影響を与えています。非正規雇用者は正社員に比べて配偶者のいる割合が低く、特に25歳以上の男性では正社員の半分以下です。
【就労形態別配偶者のいる割合(男性)】
男性の場合、配偶者のいる割合は年収に比例する傾向がみられ、年収が高いほど結婚している人の割合は高くなっています。
【年収別配偶者のいる割合(男性)】
上記のデータからも、非正規雇用や低年収が結婚の障害となっていることがわかります。未婚者の増加は、8050問題を深刻化させる一因です。
今は大丈夫でも安心は禁物
正社員として平均以上の収入を得ている人、すでに家庭を持っている人も安心はできません。仕事や職場・家庭での人間関係がうまくいかず、精神を病んでしまい、退職や離婚をきっかけにひきこもりになるケースもあるからです。
このような事態に陥らないためには、日頃から悩みを相談できる相手や場所を持つことが大切です。問題を一人で抱え込まず、深刻化する前に解消することを心がけましょう。
精神的な安定には、金銭的な余裕を持つことも重要です。お金に関する悩みがあれば、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談して解決しましょう。
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