生命保険金で支払われる「給付金」や「保険金」に税金がかかることはなんとなく把握しているものの、課税種別によってその金額が大きく異なることを知らない人も多いのではないでしょうか。
そこまでの税金を支払う必要はないだろうと思っていたのに、いざ蓋を開けたら多額の支払いが必要だったというケースは少なくありません。
また、生命保険金は税金だけでなく受取時にもトラブルの火種となることがあります。
そこで今回の記事では、生命保険金にかかる税金や受取時に起きるトラブルについて解説します。
同じ保険金でも課税・非課税の違いがある!? 税金の種類も異なる!?
生命保険で支払われるお金は「保険金」と「給付金」があり、それぞれ下記のような違いがあります。
- 保険金:死亡保障や保険が満期になった時に受け取れるお金
- 給付金:医療保険やがん保険で、入院や手術の際に受け取れるお金
受け取るお金がどちらかによって課税の有無に違いがあります。
また、同じ保険金でも加入形態(※)によって対象となる税金(相続、所得、贈与)に違いがあります。
※加入形態とは、契約者(=保険料を負担する人)、被保険者(=保険の対象者)、受取人(=保険金を受け取る人)の関係のことであり、その名義が誰かによって加入形態が異なります。(詳細後述)
税金がかかる保険金
まず、税金がかかる保険金の一例は以下の通りです。
- 死亡保険金
- 満期保険金
- 解約返戻金
- 個人年金保険
このうち死亡保険金や満期保険金は、契約者・被保険者・受取人がだれであるかによって、以下のように課税される税金の種類が異なります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 対象となる税金 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | B | 所得税(一時所得) |
A | B | C | 贈与税 |
このうち、もっとも税金の負担が重いのは贈与税となり、次いで所得税・相続税と続きます。
特に贈与税の負担は高額になりやすいことから、保険契約時における契約者・被保険者・受取人の記載には注意しましょう。
税金がかからない保険金・給付金
一方で、以下の保険金・給付金には税金がかかりません。
<保険金>
- 高度障害保険金
- 三大疾病保険金
- リビングニーズ特約保険金
<給付金>
- 入院給付金、手術給付金、就業不能給付金
参考までに、非課税として扱われる保険金については、所得税法でも以下のように言及されています。
「損害保険契約に基づく保険金および生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金」
所得税法施行令第30条(非課税とされる保険金、損害賠償金等)
ただし、非課税で受け取った保険金や給付金が相続財産として遺族に引き継がれるケースでは注意が必要です。
場合によっては相続税の課税対象となるほか、「生存給付金」や「健康祝い金」などについては受け取った年の「一時所得」となります。
一時所得となった場合には、1年間のうち50万円を超えた分の1/2が所得とみなされ課税されます。
保険金にかかる税金額を甘く見ない方がいい!?
保険金・給付金は、契約者・被保険者・受取人の関係と支払われる保険金・給付金の内容によって課税される税金が異なるとお伝えしましたが、それぞれの金額の違いを確認されたことがあるでしょうか?
以下のケースを例に解説していきます。
《前提》死亡保険金額を2,000万円とし、夫と妻・子ども(未成年)の3人家族とする
贈与税になるケース
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 対象となる税金 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
契約者・被保険者・受取人がそれぞれ異なる場合、贈与税の対象となります。
表のように、妻が亡くなったときのために夫が死亡保障をかけ、その受取人が子どもになっているケースが該当します。この場合、子どもへの贈与とみなされることから、贈与税がかかります。
保険金が2,000万円であったとすると、贈与税額は以下のように求められます。
(参考:国税庁HP 贈与税の計算と税率)
- 基礎控除後の課税価格 2,000万円-110万円=1,890万円
- 贈与税額の計算 1,890万円×50%-250万円=695万円
所得税になるケース
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 対象となる税金 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税 |
契約者と受取人が同一である場合、所得税の対象です。
妻が亡くなった場合のために夫が死亡保障をかけ、その受け取りも夫に設定するケースが該当します。(満期保険金や解約返戻金の場合も同様)
また、生命保険金を一時所得として受け取った場合、所得税は以下の計算式で求められます。
- 生命保険金の所得税:(保険金額-支払った保険料-50万円)×1/2×税率
支払った保険料を500万円とし、今回のケースに当てはめて計算すると以下のように求められるでしょう。(参考:国税庁HP 所得税の税率)
- (2,000万円-500万円-50万円)×1/2=725万円
- 725万円×23%-63.6万円=103.1万円
相続税になるケース
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 対象となる税金 |
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
死亡保険金で、契約者と被保険者が同一人物の場合、受取人に対して相続税がかかります。
夫が万が一のことを考えて自分に保険をかけ、その受取人を妻にするといったケースが該当するでしょう。
なお、死亡保険金はあとに残された家族が生活するために必要なお金であることから、受取人が法定相続人である場合には、税負担が少なくなるよう優遇されています。具体的には以下のような非課税枠を設けています。
- 500万円×法定相続人の数=非課税限度額
今回の例でいえば、妻と子が法定相続人にあたるため、計算式は次のようになるでしょう。
- 500万円×法定相続人の数(妻と子ども)=1,000万円
- 保険金2000万円-1,000万円=500万円(課税対象額)
夫名義の口座から保険料を引きとしたいといった理由で契約者と受取人が夫、被保険者が妻といったケースが数多く見受けられます。
「契約者=保険料を支払う人」であるため、加入方法自体に問題があるわけではありません。
しかし、契約がこの状態のまま妻がなくなってしまうと、所得税の課税対象となり、相続税の非課税制度の適用外となってしまいます。
計算式からもわかるように、所得税と相続税だと税金額が大きく異なるため「え、こんなに違うの?」と感じた方も多いのではないでしょうか?
契約後も契約者変更は可能であるため、加入中の保険についてこの機会に見直してみてもよいかもしれません。
また、保険金は税金だけでなく、受取時にも大きなトラブルを引き起こしかねないことをご存じでしょうか?
続けて解説します。
生命保険金がトラブルの引き金になるかもしれません
被保険者である親が亡くなって受取人が自分以外(兄弟など)に指定されていた場合、「死亡保険金は相続財産だから、遺産分割や遺留分の対象になるはずだ」と思っている方も多いかも知れません。
しかし実は、死亡保険金は受取人が指定されている場合、相続財産の対象とならないことをご存じでしたか?(遺産分割や遺留分の対象ともならない)
「え?そんなひどい話ってあり?」と思った方もいるかも知れませんが、受取人の設定次第では希望していない人に保険金が渡ることは十分に考えられます。
また、被保険者よりも前に受取人が死亡していた場合、変更の手続きがされていなければ受取人の法定相続人が保険金を受け取ることになるほか、保険金の請求自体も複雑なものになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
生命保険は「契約者」「被保険者」「受取人」のそれぞれの名義によって課税関係が変わるため難しく感じた方も多かったのではないでしょうか?
とはいえ、“意図した契約形態”による課税については納税額が高額になったとしてもやむを得ない話ですが、“意図しない契約形態(例:名義変更手続きを失念していた場合など)”により納税額が高額になることは避けたいものですね。
さらに、“意図しない契約形態”をそのままに放置していると、場合によっては保険金や給付金そのものについても、本来受け取るべき人に支払われないケースや、そもそも受け取れないといったトラブルも考えられます。
そこで、おすすめしたいのが下記の「続けてご覧になっていただきたい記事はこちら」にある『教えて!ややこしい、「親がかけておく、子の保険」の注意点は?』です。
未成人のお子さまが加入している保険を、お子さまが独立した後も親御さんが掛け続けていた場合のトラブル事例を取り上げています。せっかく掛けている保険が、いざというときに役に立たない!なんてことがないように、ぜひ一度ご確認ください。
続けてご覧になっていただきたい記事はこちら:
教えて!ややこしい、「親がかけておく、子の保険」の注意点は?
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