厚生労働省の「介護保険事業状況報告の概要(令和4年2月暫定版)」によると、要介護(要支援)の認定者数は689.1万人。65歳以上の認定者数は約18.8%となっています。
家族が要介護・要支援に認定された際は、介護者の負担を軽減するためにも介護保険制度を活用することが大切です。
本記事では、介護保険制度の特徴や仕組み、被保険者の種類から受給要件、保険料の徴収方法まで詳しく解説します。
介護保険制度は「介護を社会全体で支える制度」
少子高齢化の進行により、要介護者の増加や介護に伴う離職などが社会問題となりました。主に介護をする家族には、体調面や経済面で大きな負担がかかります。このような状況を受け、介護を社会全体で支えて家族の負担を軽減することを目的に2000年に創設されたのが「介護保険制度」です。
介護保険制度の仕組み
介護保険制度を活用すると、要介護・要支援認定を受けた人は介護保険サービスを1~2割の費用負担で利用できます。この仕組みについて、順序よく見ていきましょう。
- 被保険者が国や都道府県、市町村に介護保険料を納める
- 要介護・要支援認定を受けた人が介護保険サービスを1~2割の費用負担で利用する
- 保険料から介護保険サービスの費用の8~9割を介護サービス事業者へ支払う
介護サービス事業者は、介護保険サービスの提供内容と費用を踏まえて国や都道府県、市区町村に費用の8~9割を請求します。このように、介護保険に加入している被保険者が納めた介護保険料で、加入者全員の介護に備える仕組みです。
平成30年~令和2年度の財源の割合は、介護保険料が50%(第1号被保険者23%・第2号被保険者27%※人口比に基づき設定)、税金50%(国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%)ですが、定期的に見直されます。
介護保険の被保険者と受給要件
介護保険の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と40~64歳の「第2号被保険者」の2つに分かれています。それぞれの受給要件や保険料の徴収方法などは次のとおりです。
第1号被保険者
第1号被保険者は、原因に関係なく要支援認定か要介護認定を受けた際に1~2割の費用負担で介護サービスを利用できます。合計所得160万円(単身世帯かつ年金収入のみの場合は年収280万円)以上の人は2割負担です。
介護保険料の徴収方法は、原則的に年金からの天引きで、65歳になった月度から徴収が開始します。
第2号被保険者
第2号被保険者は、加齢に伴う特定疾病によって要支援認定か要介護認定を受けた際に1割の費用負担で介護サービスを利用できます。介護保険料は、40歳になった月度から医療保険料と一緒に徴収が開始します。
特定疾病とは、がん(末期)や関節リウマチ、骨折を伴う骨粗しょう症、脊髄小脳変性症、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患などです。
介護保険制度を活用した介護サービスの利用の流れ
費用負担を抑えて介護サービスを利用したい場合は、市区町村の窓口で申請が必要です。申請から介護サービスの利用開始までの流れを詳しく見ていきましょう。
1.要介護・要支援認定の申請
介護サービスの利用を希望する場合は、第1号被保険者は「介護保険の被保険者証」、第2号被保険者は「医療保険の被保険者証」を持って、市区町村の窓口へ相談しましょう。
地域によっては、地域包括支援センターへ手続きの代行を依頼できます。
2.認定調査と主治医の意見書の作成
要介護・要支援の認定の判断に必要な情報を集めるために、認定調査員が自宅を訪問して本人の心身の状態や関連事項の聞き取り調査をします。また、主治医による意見書の作成も必要ですが、市区町村が主治医に直接依頼するため、申請者が依頼する必要はありません。
3.審査・判定
認定調査の結果と主治医の意見者に基づき、介護認定審査会で要介護・要支援を認定します。原則、申請から30日位内に認定結果が通知されます。
4.ケアプランの作成
要介護1~5の認定を受けた人が在宅で介護サービスを利用する際は、居宅介護支援事業者のケアマネージャーにケアプラン(介護サービス計画)の作成を依頼します。施設への入所を希望する場合は、入所施設へ申し込みます。要支援1~2の認定を受けた人は、地域法骨センターにおいて、介護予防ケアプランの作成が必要です。
5.サービスの利用開始
ケアプランに基づいた居宅サービス、施設サービスの利用を開始します。
まとめ:介護保険制度を有効活用しましょう
介護保険制度は、40歳以上の国民全員が加入する保険制度です。介護を社会全体で支えるとの観点に基づき、40歳以降に保険料の徴収が開始されます。介護の費用負担を少しでも軽減するためにも、今回解説した介護保険制度の被保険者の種類や受給要件、介護サービスの利用方法などをぜひ参考にしてください。
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