近年の医療の発達は目覚ましく、より最新の、より便利な検査や治療が世界中で日々開発されています。
そこまで医療が発達した現代にも関わらず、ガンの中には罹患率が減少するどころか年々増加傾向にあるガンもあります。
特に日本では肺ガンや乳ガン、大腸ガンが増加傾向にあり、若年者でも罹患する人が多くいます。
その一方で、アメリカではこれらのガンの罹患率は減少傾向にあるから驚きです。
なぜ日本とアメリカでこのような違いが生まれるのでしょうか?
今や2人に1人がガンに罹患する時代ですが、アメリカとの違いを明確に理解し、それに応じた対策を取ることで将来的に罹患率を減少させられるかもしれません。
そこで本書では、日本におけるガン患者の推移や、日米での罹患率の違いとその原因について詳しく解説していきます。
<日本におけるガン罹患率の現状>
2018年に厚生労働省が発表したデータでは、新たにガンに罹患した人数は約98万人であり、これは死亡率とともに高齢化の影響を受けて年々増加傾向にあります。
高齢化の影響を除いた年齢調整率のデータを見ると、全てのガンの合計罹患率は2010年以降横ばいですが、ガンの種類によっては増加傾向にあるガンもあります。
特に女性では乳ガンや大腸ガン、肺ガンが、男性では大腸ガンや前立腺ガンの罹患率が増加傾向にあります。
そもそもなぜガンの種類によって罹患率に差があるのでしょうか?
正常細胞が増殖する際、自分の遺伝子情報をコピーして細胞分裂を行い新しい細胞を作り出しますが、なんらかの外的要因によって正常細胞の遺伝子が損傷する場合や、生まれ持って遺伝子の異常がある場合は、細胞分裂時に遺伝子のコピーミスが起きてガン細胞が発生するのです。
つまり、ガンは外的要因もしくは生まれ持った遺伝子の異常が原因となります。
胃ガンを例に挙げてみましょう。
胃ガンは胃内の塩分濃度が高まることで胃粘膜が損傷し発症すると言われていますが、日本人は食料保存のために漬け物文化が浸透していたため海外と比較して胃ガン発症率が高い民族でした。
しかし近年食生活の欧米化が進み、塩分摂取量が低下してきたことで胃ガン発症率も低下してきたと言われています。
他にもタバコと肺ガン、飲酒と食道ガン、化学物質と膀胱ガン、のように被曝する要因によってガンの罹患率は変わってくるのです。
では、なぜ近年肺ガンや大腸ガン、乳ガンが増加傾向にあるのでしょうか?
<それぞれのガンの動向について>
大腸ガンにおいて、先天的な遺伝子異常による発症は約1-5%と言われていて、大部分は食生活などの環境要因が影響しています。
今までの多くの研究結果から、牛肉や豚肉などの赤身肉やハムなどの加工肉、肥満、飲酒など食生活の欧米化が発症率増加に大きく関わっていると報告されています。
乳ガンは大腸ガンと同様、食生活の欧米化が原因の1つとして報告されています。
乳ガンの原因となるエストロゲンという女性ホルモンは脂肪細胞から分泌されますが、以前と比較し高脂肪食の摂取量が増えた日本人ではエストロゲン分泌量が増加し、その結果乳ガンの罹患率が増加したと考えられています。
肺ガンは喫煙による微細な気道への損傷が原因の1つとして考えられています。
喫煙率は年々減少しているにも関わらず、肺ガンによる死亡率は2000年代まで増加傾向にあり、現在も横ばいで減少には至っていません。
これは、喫煙による肺ガン発症に何十年という時間を要するため、喫煙率の低下が死亡率の低下として数字に現れるのにもタイムラグがあるからだと言われています。
その一方で、アメリカではこれらのガンの罹患率は全て減少傾向にあります。
なぜ日米でこのような差が生まれるのでしょうか?
<日米間でのヘルスリテラシーの差を考える>
2020年、アメリカ人の大腸ガン罹患者数は14万7950万人であり、それに対し日本人はアメリカとほぼ同數の毎年約15万人が大腸ガンに罹患しています。
年間の罹患者数は同程度ですが、人口約3億2700万人のアメリカに対し日本は約1億3000万人であり、罹患率にすると2倍以上の差があります。
さらに驚くべきことに、日本よりも高脂肪食を摂取するアメリカでは年々大腸ガン罹患率が減少しているのです。
日本が高齢化社会であることを差し引いても、アメリカとの間にこれだけの差があることは説明がつきません。
この主な原因は、大腸ガンに対する検診の差が挙げられます。
日本人の検診受診率は約40-50%ですが、アメリカは約70%が検診を受診するため多くの患者でガンの早期発見が可能です。
さらにアメリカでは検診時に内視鏡検査を行うためガンを早期発見かつ早期摘出できますが、日本では検便による血便の有無しか確認しないため、出血を伴わない早期ガンは発見できないのです。
次に乳ガンですが、日本では1990年から2倍以上の罹患率増加を認めているのに対し、アメリカでは年々減少傾向にあります。
これも検診受診率の差が主な原因として挙げられています。
2015年の日本の乳ガン検診受診率は41%であり、アメリカの80%や先進国平均の61%を大きく下回っていました。
さらに、日本人の乳ガン検診では主にマンモグラフィーと呼ばれるレントゲン撮影が行われますが、日本人の乳腺組織は欧米と比較して高密度であるため、マンモグラフィーでガンと正常組織を見分けにくいという人種的特徴もあります。
肺ガンも日本では罹患率が減っていませんが、アメリカでは年々減少傾向にあります。
アメリカ人男性の肺ガン罹患率は、2000年から現在までになんと約20%も減少しました。
主な原因は、たばこ対策の違いが大きいと言われています。
2016年のアメリカ人男性の喫煙率は25%であり、それに対して日本人男性は34%、2019年ですら27.1%でした。
前述したように、喫煙による肺ガン発症には何十年という時間を要するため、喫煙率の低下が死亡率の低下として数字に現れるまでタイムラグがあります。
喫煙率が早くから低下したアメリカではすでに罹患率低下が数字として現れ始めているのです。
近年日本人の肺ガン罹患率は横ばいであるため、近い将来減少傾向になることが期待されます。
以上のことからも、ワールドワイドな近代において日本とアメリカのガン罹患率の差は、種族や食生活の違い以上に検診受診率や検診の内容などヘルスリテラシーの差が大きいことが原因である可能性が高いのです。
より早期から、より精度の高い検査や予防を行えているアメリカとの間に差が生まれるのは偶然でなく必然だと思います。
まとめ
10年20年先の日本のガン患者を減らすにはヘルスリテラシーの向上が急務です。
個人個人がヘルスリテラシーの向上のために努力するのはもちろんですが、これからガンになる可能性の高い20-40代の方が働きながらヘルスリテラシーを高められるように、企業毎に健康教育や検診を受診するように促すなどの強制力を持った改革が必要かもしれません。
恐ろしいことに、遺伝的に発ガンしやすい方では、健康的な生活を営んでいても50歳未満でガンになる方もいるのが現実です。
早期発見できれば助かる可能性があっても、ヘルスリテラシーが高くなければガンと戦うことすらできなくなってしまうかもしれません。
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