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退職後の税金や社会保険料の手続きを徹底解説!

 

会社員として在職している間、多くの方は年金や保険、税金に関する手続きを全て会社に任せていたでしょう。しかし、退職後は会社からのサポートを受けられなくなるため、自分で切り替えや支払いの手続きを行わなければなりません。 

 

今回は退職後に行わなければならない税金や年金、保険の手続きについてご紹介します。損をせずに適切な金額を支払うよう、手続きの内容やタイミングを勉強しましょう。 

 

退職後に行わなければならない手続き 

 

会社を退職した人は、年金や保険、税金に関する支払いの手続きを自分で行う必要があります。総務や経理といった部署に所属していなかった人は、退職して初めて自分が支払っていたお金の内訳に気がつくかもしれません。

 

退職後に行わなければならない手続きは、以下の4つです。

  • 健康保険
  • 住民税
  • 所得税
  • 年金

 

それぞれ手続き方法が異なりますので、自分の状態にあった適切な手続きを行いましょう。

 

 

退職後に行う健康保険の手続き

日本には「国民皆保険」の制度があり、全国民が何らかの公的保険に加入しなければなりません。健康保険からの切り替え先は4つありますので、今後の生活プランにあった切り替え先を選びましょう。

 

1.国民健康保険に切り替え

国民健康保険は、日本国内に住所を有する方が加入できる公的健康保険の制度です。主に自営業者のような会社の健康保険に加入できない方や、再就職までに期間が空く方が加入の対象となります。

国民健康保険への加入は、退職後14日以内に市区町村役場の窓口で手続きを行います。この手続きには、元の職場が発行する「健康保険資格喪失証明書」を提出する必要がありますので、忘れずに受け取っておきましょう。

 

2.任意継続健康保険制度で健康保険を継続

元の職場で加入していた健康保険は、本人の希望があれば退職後も加入し続けられます。

この制度を「任意継続健康保険制度」といい、制度を利用し健康保険を継続している間は、在職中と同じ保険制度の適用を受けられます。

ただし、任意継続健康保険制度の利用は最長2年間までと限定されています。また在職中は健康保険に係る保険料を会社と従業員で半分ずつ負担(労使折半)していましたが、任意継続健康保険制度を利用する際には、利用者本人が保険料を全額負担しなければなりません。

 

3.家族の被扶養者として健康保険に加入

家族に健康保険の被保険者がいる場合、被扶養者として健康保険に加入できます。手続きは年金事務所を相手に行う必要がありますが、被保険者である家族が勤務する会社が代行してくれますので、会社に求められる被扶養者届を提出しましょう。

ただし、被扶養者となるには、年間収入が130万円未満かつ被保険者の年間収入の2分の1以下である必要があります。この収入は基準額と呼ばれ、退職後1年間の収入見込みが基準額を超える場合には被扶養者にはなれません。

 

4.再就職先の健康保険に加入

退職直後に再就職が決まっているなら、再就職先の健康保険への加入手続きを行いましょう。手続きは元の職場が発行する「健康保険資格喪失証明書」を再就職先に提出するだけであり、被保険者となる本人が対応することは特にありません。

なお、新しい健康保険証の発行にはおよそ1~3週間ほどの時間がかかります。もしこの間に通院が必要なら、事前に再就職先から「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらいましょう。通院時の支払いは全額自己負担となりますが、後日健康保険の保険者負担分が還付されます。

 

 

退職後に行う年金の手続き

会社に所属している間に加入していた厚生年金は、退職と共に脱退しなければなりません。退職後は忘れずに年金の切り替え手続きを行いましょう。

 

1.国民年金に切り替え

日本国内に居住する20歳以上60歳未満の方のうち、厚生年金に加入していない方は原則として国民年金に加入します。退職日の翌日から14日以内に、基礎年金番号が分かる書類および離職票を市区町村役場へ持参して手続きを行いましょう。

 

2.配偶者の被扶養者として厚生年金に加入

配偶者が厚生年金に加入しているなら、被扶養者として厚生年金に加入できます。配偶者が勤務する会社を通じ、年金事務所への手続きを行ってもらいましょう。

なお、被扶養者となる条件は、健康保険と同じく年間収入が130万円未満かつ被保険者の年間収入の2分の1以下です。ただし、厚生年金における被扶養者は配偶者に限定されます。

 

3.再就職先の厚生年金に加入

退職直後に再就職する場合には、再就職先の厚生年金に加入します。手続きは再就職先の事業主が行いますので、作成した被保険者資格取得届を事業主に提出しましょう。

 

 

退職後に行う住民税の手続き

住民税は、退職や再就職のタイミングによって、行う手続きが大きく変わります。

 

1.1月から5月に退職した場合

1月から5月の間に退職した方は、最後に支払われる給与から自動的に源泉徴収されます。源泉徴収された住民税は元の職場が自治体に納めてくれますので、退職した本人が何らかの手続きを行う必要はありません。

 

2.6月から12月に退職した場合

6月から12月の間に退職した場合、退職月の翌月移行の住民税は自分で納税する必要があります。自治体から送られる納税通知書を使い、銀行やコンビニなどから納税しましょう。

 

3.退職直後に再就職する場合

退職直後に再就職する場合には、再就職先でもすぐに給与からの天引きをしてもらえる場合があります。ただし、元の会社と転職先の間で事務手続きが発生するため、転職した当月から天引きが開始されるとは限りません。

 

4.退職金がある場合

退職金には所得に応じて住民税が課税されますが、退職金は従業員が退職した後の生活を安定させるための資金という性質があるため、税金負担が低くなるような計算方法が用いられています。

退職金にかかる住民税は、退職金の総額から以下の計算式で求められる退職所得控除額を差し引いた「退職所得」に対して課税されます。

 

退職所得控除額】 

 

勤続年数  退職所得控除額 
20年以下  40万円×勤続年数 
20年超 

800万円+70万円×(勤続年数ー20年) 

引用:退職金と税|国税庁 

 

計算の結果算出された退職所得に2分の1をかけた金額が「課税退職所得」となり、10%の住民税が課税されます。 

 

例)勤続年数21年、退職金1,100万円の場合 

  • 1,100万円-(800万円+70万円(21年-20年)=230万円 ※退職所得 
  • 230万円×1/2=115万円 ※課税退職所得 
  • 115万円×10%=11.5万円 ※源泉徴収される住民税 

 

なお、上記の計算式は、会社に対し「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで適用されます。退職所得の受給に関する申告書が提出されないと、退職時に退職所得控除は適用されず、退職金の全額に対して10%の住民税が源泉徴収されます。 

確定申告により払いすぎた住民税の還付は受けられますので、退職所得の受給に関する申告書を提出しなかった際には必ず確定申告を行いましょう。 

 

 

退職後に行う所得税の手続き

退職した年の所得税は、再就職のタイミングによって手続きが変わります。

 

1.同年中に再就職する場合

退職した同年中に再就職をする場合、元の職場から退職時に受け取った源泉徴収票を再就職先に提出しましょう。年末を再就職先で迎えたタイミングで、再就職先が元の職場で源泉徴収された分の所得税を含めて年末調整を行います。基本的には本人は何も手続きを行う必要はありません。

 

2.同年中に再就職しない場合

退職した同年中に再就職をしないと、会社に年末調整を行ってもらうタイミングがありません。毎月の源泉徴収はあくまで所得税の概算を天引きしているため、本来納めるべき所得税よりも多くの金額を徴収されている場合があります。払いすぎた所得税の還付を受けるためにも、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行いましょう。

 

3.退職金がある場合

退職金に課税される所得税は、住民税と同様の計算式で算出された課税退職所得に対して、一定の税率で課税されます。

所得税の計算式は、課税所得の額が大きくなるにつれて税率が上がる累進課税方式です。課税退職所得金額に応じて、以下の税率・控除額が適用されます。また、2037年までは所得税額の2.1%が復興特別所得税として追加で徴収されています。

 

【令和3年分所得税の税額表】

 

課税退職所得金額  税率  控除額 
1,000円から1,949,000円まで  5%  0円 
1,950,000円から3,299,000円まで  10%  97,500円 
3,300,000円から6,949,000円まで  20%  427,500円 
6,950,000円から8,999,000円まで  23%  636,000円 
9,000,000円から17,999,000円まで  33%  1,536,000円 
18,000,000円から39,999,000円まで  40%  2,796,000円 
40,000,000円以上  45%  4,796,000円 

引用:退職金と税|国税庁 

 

例)勤続35年、退職金2,500万円の場合 

  • 2,500万円-(800万円+70万円(35年-20年)=450万円 ※退職所得 
  • 450万円×1/2=225万円 ※課税退職所得 
  • 225万円×10%-97,500円=127,500円 ※所得税 
  • 127,500円+(127,500円×2.1%)=130,178円 ※復興特別所得税を加算した所得税総額 

 

なお、上記の計算式は住民税同様、会社に対し「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで適用されます。退職所得の受給に関する申告書が提出されない場合には、退職金総額に対し一律で20.42%が所得税として源泉徴収されます。退職金の額によっては追加納税をしなければならないため、必ず確定申告を行うように注意しましょう。 

 

関連記事: 「退職金に税金がかからない人」は少数?かからないケースを紹介 

 

 

 

まとめ

退職は単に会社から離れるだけでなく、それまで会社に任せていたあらゆる手続きを自分で行うように切り替えるきっかけでもあります。

 

在職中は意識する機会が少なかったかもしれませんが、年金、保険、税金の適切な手続きは、社会生活を円滑に送るために非常に重要です。退職後に放置し続けることなく、正しい手続きを行いましょう。

 

なお、勤続5年以下で退職する人は、以下の記事も参考になります。あわせてご覧ください。

 

 

続けてご覧になっていただきたい記事はこちら:

【2022年から変更】勤続5年以下だと退職金の税金が増える?「退職所得課税の適正化」とは

 

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