夢のマイホーム購入を前に、住宅ローンの破綻が怖くなる人は少なくありません。
「身の丈にあわない住宅ローンを組んで老後が破綻」
「返済できなくなって最後は任意売却に自己破産」
など、住宅購入者の不安を煽るような失敗談が巷にあふれているからでしょう。
とはいえ、住宅ローンは誰でも利用できるものではありません。金融機関が審査をしたうえで融資を決定しているため、無謀な住宅ローンの場合はそもそも審査に通過することがないでしょう。
今回は、どのような借り入れ内容であれば審査に通過し、無理なく返済していけるのかを解説します。
「破綻まっしぐら」な借り入れを金融機関が許容することは考えにくい
巷にあふれる住宅ローンの破綻話を見ていくと、失敗の原因は「身の丈にあわない無謀な借り入れ」であることが多いです。
しかし、住宅ローンを借りるには金融機関の審査に通る必要があります。返済者が破綻して回収不能になってしまうような無謀な借り入れを、はたして金融機関が許容するのでしょうか。
金融機関は金融庁から、顧客に適正な融資をすることを求められています。明らかに返せない多額の融資を簡単に通してしまうような実態があれば、金融庁から目を付けられるのは金融機関です。
また、金融機関は住宅ローンを貸し出す際の利息を収益源としています。返済者が破綻してしまえば利息収入が途絶えてしまい、利益になりません。
したがって、回収できない借り入れプランを審査で通す可能性は低いのではないでしょうか。
「住宅ローンを借りても破綻するかも」とむやみやたらに怯えても未来はわかりません。まずは金融機関の審査に通り、無理なく返済していける借り入れプランにすることが大切です。
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住宅ローン破綻を防ぐ!審査に通る無理のない借り入れのポイントは3つ
金融機関の審査に通過したうえで無理なく返済していくためには、以下のポイントを意識して借り入れプランを立てることが大切です。
- 返済負担率は手取り収入の20%以下にする
- 片働きでも返済できる金額にする
- 定年までに完済するプランを立てる
それぞれのポイントを解説していきましょう。
1.返済負担率は手取り収入の20%以下にする
無理のない借り入れにするためには、返済負担率は「手取り収入の20%以下」にしましょう。
住宅ローンの返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のことです。金融機関はこの返済負担率を審査時の判断項目の一つにしていて、一般的な返済負担率の目安は「額面収入の25%~35%程度」と言われています。手取り収入の20%以下であれば一般的な水準よりも低く、審査に通過する可能性も高くなるでしょう。
また、マイホームには住宅ローン返済額の他にかかる住宅関連費用が多い点にも注意が必要です。たとえば毎月のローン返済額が手取り収入の30%になっている場合。ローン返済額だけであれば収入の3割であり、支払っていけるかもしれません。しかし、固定資産税や火災保険料、住居のメンテナンス費といった住宅関連費をあわせると、手取り収入のうち40%程度が住居費になってしまいます。
マイホームの保有・維持にかかる費用は住宅ローンだけではありません。他の住宅関連費用も勘案したうえで、適切な返済負担率になるように調整してください。
2.片働きでも返済できる金額にする
二つめに重要なポイントは、「片働きになっても無理なく返済していける金額しか借りない」ことです。
特に気をつけたいのは、フルタイム共働きの夫婦です。フルタイム共働きだと世帯収入が高く、収入を合算すればより多くの金額を借り入れできます。しかし、共働きで稼げる最大限度の収入を基準に住宅ローンを借りてしまうと、返済途中で働き方を変えることができません。
住宅ローンの返済期間は数十年にわたります。その間、夫婦のうちどちらかが病気やケガで休職したり、転職や失業で収入が下がったりする可能性はゼロではありません。また、子育てと仕事の両立に悩み、やむをえずフルタイムからパートタイムに変更する人もいるでしょう。
長い返済期間中に働き方が変わり、収入が変動する可能性は十分あります。「フルタイム共働き」を基準に多額の借り入れをすると身動きが取りにくくなり、収入が減少したときに家計が一気に破綻してしまう恐れがあります。共働きでも、「どちらかが働けなくなって片働きになっても返済できる金額」を借り入れするようにしましょう。
3.定年までに完済するプランを立てる
住宅ローンの返済は、会社の定年年齢までに完済できるプランを立てましょう。なぜなら、定年以降にたとえ継続して働いていても、収入は下がっている可能性が高いからです。
高年齢者雇用安定法※1により、国は「従業員が65歳まで働ける環境」を企業に義務づけました。とはいえ、7割超の企業の定年年齢はいまだに60歳。60歳から65歳までは「継続雇用制度」を導入し、雇用環境を整えている企業が大半です。継続雇用制度を使えば定年後も65歳まで働けるものの、60歳以降の給与は定年前より大幅にダウンする可能性があります。
定年語の収入低下をカバーするために、退職金を充当して住宅ローンを完済しようとする人もいるでしょう。しかし、老後生活を支える大切な退職金を住宅ローンに完済してしまうと、住宅ローンの負担は消えても老後資金が不足する恐れが出てきます。
まとまった退職金はできる限り老後資金に回すと、老後生活の破綻を防げます。住宅ローンの返済資金は別で捻出し、定年前に完済できるプランを立てましょう。
※1参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法 改正の概要」
※2参考:厚生労働省「令和3年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果」
まとめ:住宅ローン返済中に働けなくなったときの保障も備えておこう
無理のない借り入れプランとあわせて、住宅ローン返済中に働けなくなったときの保障も備えておくとより一層安心です。
働けなくなったときの保障として、活用できる保険は大きく分けて以下の2つ。
- 住宅ローンに付帯できる保険を利用する
一部の金融機関では、住宅ローン契約者が病気やケガで働けなくなったときや失業時、ローン返済月額と同額を保障する保険がセットになった住宅ローンを販売しています。「失業保障」「入院保障特約」「就業不能信用費用保険」などの名前でセット販売されていることがあるため、検討している住宅ローンでこれらの保障がないか確認しましょう。
- 民間の「就業不能保険」か「所得補償保険」を利用する
民間の保険会社では、病気やケガで働けなくなったときに保障される保険を販売しています。生命保険会社では「就業不能保険」、損害保険会社では「所得補償保険」が販売されていて、保険会社によって内容も異なります。希望の住宅ローンで働けないときの保障を付帯できないときは、こうした民間保険の利用を検討してみてください。
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