日本は世界でも指折りの長寿国として知られていますが、一方で 「不健康長寿国」 としても有名です……
早速ですが「元気に人生の最期を迎える」ことと「寝たきりの状態で最期を迎える」どちらの人生の結末をあなたは希望されますか?
ほとんどの方が元気な最期を迎える『ピンピンコロリ(PPK)』を希望されます。(一般的には「苦しまずにぽっくり死ぬ」などとも表現されますね。)
しかし現実に目を向けると日本は世界有数の長寿国であり、寝たきり大国となっています。
平均すると男性は平均で9年、女性は12年介護された末に最期を迎えるというデータがありまさに『不健康長寿国』といえます。
もはや日本では「PPK」ではなく「ネンネンコロリ(NNK)」となる可能性が非常に高く、待っているだけでは希望の最期を遂げるのは困難な状態になっているのです。
病院に行けば「NNK」は防げるのか?
日本は先進国の中でも特に病床(ベッド)数が多い『医療大国』といえます。
しかし、実は日本が「不健康長寿国」と言われる原因の一端をになってしまっているのが「日本の医療制度」といわれます。
病床数が多く、入院期間が長期である
「体に問題があれば入院すればいい」と日本人は考えがちです。皆様はいかがでしょうか。
実際日本は総病床数が2018年時点で約164万床、人口1000人当たり13床です。これはアメリカの病床数の4倍以上にわたります。
「病床数が多い=入院しやすい」ということになり、自然と入院期間も長くなります。その長さもアメリカの3倍近くといわれます。
特に後期高齢者の場合点滴などがつながった状態で、動ける状態だとしてもトイレに行くぐらいでしょう。
リハビリの機会も一日に1時間程度が限度です。このような不活動な状態が続くと廃用性症候群という状態に陥り、全身の筋力は低下し更なる活動量の低下を引き起こします。
このように一見医療体制が整った状況が逆に寝たきりの高齢者を増やしているというのがこの国の現状になっています。
昔は命を落としていた病気も・・・
日本の医療技術は世界でも最先端を誇っており、国民皆保険制度のおかげで平等に高い医療技術を受けることができる国です。
医療の発展は日本の平均寿命の向上に大きく寄与し長寿大国に押し上げた最も大きな原因といっていいでしょう。
確かに医療の発展は長寿という意味では世界に誇るべきものです。
しかしその反面、これまでは助からなかった命が助かるようになったことにより脳血管障害の後遺症などが残った状態で在宅に帰る人が多くなったことも事実です。
実に70年前、1980年の日本の死因のトップ5は
- 結核
- 脳血管障害
- 肺炎・気管支炎
- 胃腸炎
- 悪性新生物(がん)
でした。
10年前の2009年は
- 悪性新生物
- 心疾患
- 脳血管疾患
- 肺炎
- 老衰
となっています。
いまだに胃腸炎など感染症で亡くなる方はいらっしゃいますが、ほとんど周りで聞かなくなり、もはや一般的な死因では亡くなりました。
また昔はがんよりも脳血管障害は死因の上位で助かりにくかったということも興味深いですね。
しかし「生存する」ということの半面、発展途上の医療では様々な後遺症が残ってしまうという問題があります。
これらの後遺症は自宅に帰った後も通常の生活に大きな影響を与え、介護が必要な状態の原因になります。
また介護が必要な状態で外出などの活動性が低下することで入院状態と変わらない筋力や意欲の低下などを引き起こし、結果寝たきりになってしまうという悲しい結末を迎えることも珍しくはありません。
医療ミスや薬害
病院は安全な場所でしょうか。
実は病院は医療事故や薬害、感染症などのリスクがある場所でもあります。
例えば肝臓がんはお酒好きが罹患するイメージですが、実は医療事故によるC型肝炎ウィルスの感染によるものが最大の理由なのです。
日本においては公式のデータが存在しませんが、EUの公式資料では年間約15万人が医療事故により命を落としている状況にあり、一般的に危険もある場所だと認識されています。
もちろん医療処置をすぐに受けるべき状況は多々あり、やむを得ない状況もありますが、「できるだけ病院を利用せずにNNKを予防していく」という考え方も必要です。
ピンピンコロリを実現するための5つの習慣
PPK(ピンピンコロリ)を実現するために都合の良い方法はありません。少しでもNNK(ネンネンコロリ)状態を避けるため健康を意識して5つの習慣を実行することが重要です。
とはいえ、特別なことをする必要はありません。生活習慣病を防ぐために、まずは以下の簡単な方法を実践してみましょう。
運動
台湾の国家衛生研究院の約41万人、平均8年間追跡を行った調査によると
毎日15分、中程度の運動(ウォーキングなど)をする人の死亡率は「まったく運動しない人」より14%低く、平均寿命が約3年長い。さらに1日90分までは、1日の運動時間が15分増えるごとに死亡率が4%ずつ下がっていく(Lancet. 2011 Oct 1;378(9798):1244-53)
という報告がされています。
他にも運動に関しては様々な研究が報告されており、週に1回程度の運動でも生存率に影響することがわかっています。
ただし「毎日の過度な運動」は逆に心臓病や脳血管障害のリスクが高まってしまうことが報告されています。
90分を超える運動は効果が変わらないという報告もあるため、多くても90分程度で運動をとどめておくことをおすすめします。
質のいい睡眠
栄養、運動と並び生命に重要な影響を与えるのが睡眠です。
巷では短時間睡眠法のようなお話もありますが、基本的には7時間程度の睡眠をしっかりととることが重要です。
朝食
バランスの良い食事を定期的に摂取することはやはり重要です。
特に朝食は重要で納豆、ヨーグルトなどの発酵食品は腸内細菌を活性化させ免疫力の上昇に寄与するといわれています。
禁煙
タバコには健康メリットが全くありません。すぐにやめましょう。
適度な飲酒
「百薬の長」ともいわれるお酒ですが、健康との関連性には諸説あります。
しかしいずれの場合も『飲みすぎ』に関しては確実に健康に害を及ぼします。
厚生労働省「飲酒ガイドライン」では
- 飲酒は1日平均2ドリンク(=20g)以下
- 週に2日は休肝日
- 食事と一緒にとる
- 寝酒を控える
などの飲み方が推奨されています。
ピンピンコロリを実現する意外な要因
PPKを実現するためには普段から習慣づけを行うことが重要であることを説明しました。
他にも意外な取組が健康寿命を延ばすという事がわかっています。
歯科医
『病院は危険な場所でもある』というお話はしましたが、例外として『歯科医に定期的に通う人は長寿かつ健康寿命が長い(PPK)の割合が多くなる』というデータがあります。
このデータの理由についてはまだ解明されていませんが、歯や口が健康であるということは食事をしっかりと摂りやすい環境を維持するということにつながります。
また定期的に歯医者さんに通うことは定期的な運動をすることにもつながるため筋力などにも良い影響を与えていることが考えられます。
環境や地域活動
住んでいる環境や住居も長寿に大きな影響を与える要素です。
都道府県別に平均寿命を見たとき、上位には長野県や滋賀県、沖縄県など自然豊かな市町村が多くあります。皆様の住環境が空気や水が綺麗、自然環境が豊かであることも重要です。
住居を変えるというような大それた話だけではなく、身近な環境に目を向けることも重要です。
例えば住居環境。
日本では風呂場など家の中の温度差が原因となる『ヒートショック』で亡くなる事例が年間1万7000人にのぼります。
これらのリスクは住宅の断熱座位や機密性能を向上させる素材を使うことで解決します。
またクロス張りの壁は、珪藻土や土壁にリフォームを行うことでホルムアルデヒドなどの害がなくなり湿度の調整や睡眠環境の向上につながることがわかっています。
このような住環境の改善もNNKを避けるために注目したいポイントです。
環境という意味では地域活動に積極的に参加することが大事です。
特に基礎疾患や後遺症が大きくない場合でも歳を重ね自宅に引きこもりがちになってしまうことで寝たきりになってしまうということもめずらしくありません。
このような心の健康を害さないためにも地域活動や趣味活動には積極的に参加するべきであり、実際現在もPPKで過ごされている方の特徴です。
経済的な備え
寝たきりを引き起こす要素には活動性の低下による廃用性症候群による要因が大きいですが、地域活動の部分でも解説した『心理的な要因』も大きいといわれています。
生命保険文化センターの行った意識調査によると老後に必要な生活資金の平均は20万円〜25万円程度とされています。
それ以外にもお子さんの結婚資金や住居のリフォームにかかるお金など生活以外にかかる資金もあります。
NNKになってしまうということは生活において介護サービスや医療サービスを永続的に受ける必要がある状態にあります。
介護保険、医療保険制度があることである程度を補助でまかなうことができますがこれらには1〜3割程度の自己負担が必要です。
うつ病の契機となる6大要素には『お金に関すること』があり、将来の貯蓄や準備がないことによる不安は将来に大きな影響を及ぼします。
『ピンピンコロリ』を実現するために
いかがだったでしょうか。
冒頭でご説明したように「NNK大国」となっている日本において、『PPK』と生きていくためには、将来の備えと予防のための習慣化が欠かせません。
このような取組を行っていてもふとしたきっかけで事故などで後遺症になる可能性もゼロではない状況です。
今回の記事が皆様の生活習慣見直しのきっかけになれば幸いです。
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