「国民病」と言われるほど対象者が多い理由はここにあります。
「糖尿病予備軍」という言葉、聞いたことはありませんか?糖尿病患者とは言えないけれど、このままではいずれ糖尿病を発症する可能性が高い人のことを「予備軍」といいます。近年、この「予備軍」が増えていることが問題になっています。
糖尿病とはどんな病気なのか?
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう(=高血糖になる)病気です。本来はインスリンというホルモンが、食事などから吸収した糖を体内のさまざまな細胞に取りこませ、血液中にあふれ出ないように働きかけています。ところが、何らかの原因でインスリンがうまく働かなくなるのが、糖尿病です。
糖尿病はいくつかの種類に分けることができます。
Ⅰ型糖尿病
インスリンは膵臓の中のβ細胞から分泌されます。このβ細胞が壊されてしまうことで、インスリンを分泌する力が弱くなったり、ほとんど分泌されなくなったりして高血糖になります。1型糖尿病は糖尿病全体の約5%程度です。
- 発症年齢:若い人に多いが、何歳であっても発症する
- 体型:やせ型が多い
- 原因:よくわかっていないが、自己免疫の関連が考えられている
Ⅱ型糖尿病
インスリンが出にくくなることや、インスリンは出ていても効きにくくなることで高血糖になります。糖尿病患者さんのほとんどは、2型糖尿病になります。
- 発症年齢:中高年に多い
- 体型:肥満型が多いが、やせ型も
- 原因:遺伝、過食、肥満、運動不足、加齢 など
その他の糖尿病
1型、2型のほか、病気や治療薬の影響による糖尿病、妊娠糖尿病などがあります。
現在の日本の「糖尿病事情」
国が3年ごとに行っている調査によると、現在日本での糖尿病患者数は、328万9,000人(男性184万8,000人、女性144万2,000人)で過去最高の人数となっています。同じ調査の過去の結果と比較すると、増加傾向にあることは明らかです。
また別の調査による「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性が否定できない人」を合わせた人数は、約2,000万人との結果が出ています。これは実に日本の成人の5人に1人が糖尿病の患者または糖尿病予備軍であるということになります。
糖尿病の発症危険因子
糖尿病の発症や進行の原因として考えられるものには、運動不足や肥満、耐糖能異常など、生活習慣や体質があります。
さらに、加齢や家族歴、高血圧や高脂血症などの疾患も、直接的な危険因子となることが分かっています。このような危険因子の根底にあるのが、食生活や生活環境の欧米化です。
脂肪分や糖分の多い食事による摂取カロリー過剰から、肥満や運動不足へと連鎖する点が問題視されています。確かに、戦前や戦後間もない頃の日本の食生活や生活習慣では、糖尿病にはなりにくかったと言えるかもしれません。
もしも糖尿病になったら……
血糖値をコントロールできずにいると、糖尿病が原因となって起こる別の病気(=合併症)や、そのほかの病気の原因となってしまうこともあります。もしも糖尿病になったらどのような症状がみられるのか、どのような合併症があるのかをみていきましょう。
糖尿病でみられる症状
発症して初期のころには自覚症状がほとんどないのが糖尿病の特徴であり、恐ろしいところです。血糖値がかなり高くなってから見られるのが次のような症状です。
- のどが渇く
- 水をよく飲む
- 疲れやすくなる
- 体重が減る
- 頻尿になる
さらに高血糖になると、意識障害を起こすこともあります。
糖尿病の合併症
糖尿病は高血糖によって血管や神経、臓器を冒していくため、いくつもの合併症がありますが、特に網膜症、腎症、神経障害が三大合併症とされています。
【糖尿病網膜症】
糖尿病のうち約4割に合併するとされる病気です。初期の頃には自覚症状がほとんどありません。進行すると失明に至ることもあり、成人の失明原因の多くを占めています。ものが歪んで見えたり、視力が低下したり、視野に黒い小さな点やひも状のものが見えたりしますが、かなり進行して初めて現れることが多い症状です。
早期発見で進行を止め、血糖をコントロールしていくことが治療となります。
【糖尿病性腎症】
糖尿病がかなり進行すると腎機能が落ち、糖尿病性腎症になります。初期の頃には症状がみられないことが多いのですが、腎臓の機能に何らかの問題が起こっているとたんぱく尿(尿にたんぱくが漏れ出ている状態)が出て腎臓の病気であることが分かります。
腎臓の働きが弱まると、むくみや体のだるさ、疲れ、吐き気や食欲不振、貧血など症状がみられるようになりますが、これは糖尿病がかなり進行している状態です。さらに腎機能が落ちて慢性腎不全になると、最終的には人工透析が必要になります。なお人工透析が必要となる原因の第一位は糖尿病性腎症によるものです。
【糖尿病性神経障害】
糖尿病は、全身の神経を冒すためさまざまな症状が現れます。神経障害は糖尿病の合併症の中でも最もよく現れるものです。手先・足先のしびれ、痛み、麻痺感などが起こりますが、神経の働きが鈍くなり感覚が障害されるため、ケガややけどに気づきにくくなります。傷ついた状態から感染が起こり壊死することもあり、足を切断することもあります。
神経障害は全身に及ぶため、たちくらみ、生理不順や早期閉経、下痢や便秘、顔に汗をかきやすくなるなど、さまざまな症状がみられるようになります。
これら三大合併症のほかにも、動脈硬化の原因にもなり、脳や心臓などの血管に影響を及ぼすことで、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こすこともあります。
糖尿病は予防できる病気
糖尿病は進行すると重大な合併症を引き起こすことで、今の生活の質を大きく低下させる可能性がありますし、場合によっては命に関わることもあるかもしれません。
前述のとおり、2型糖尿病発症には生活習慣が関わっており、さらには他の生活習慣病とも密接に関連しています。つまり、食生活や生活習慣を改善することで、糖尿病は予防ができる病気だということです。いま一度、現在の生活習慣を見直してみませんか。そして、より健康な人生を過ごしていきましょう。
まとめ
糖尿病予備軍とは、糖尿病が強く疑われる人や糖尿病の可能性が否定できない人です。「そんなこと言われても、まだ発症してないし」と思うかもしれませんが、糖尿病を発症しないためには、糖尿病を発症しない生活に変えていく必要があるのです。
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