映画や漫画でよく見るワンシーンに、銃で相手の頭や胸を狙って打つシーンがあります。
ここからも分かるように、おそらく医療従事者でない一般の人でも、心臓や脳が生命維持において最も重要な臓器であることはなんとなく理解出来ていると思います。
2021年に厚生労働省が発表した人口動態統計によれば、日本人の死因1位は悪性新生物(ガン)であり全体に占める割合は26.5%でした。
2位は心疾患(高血圧性を除く)で14.9%、第3位は老衰で10.6%、脳血管疾患は年々減少傾向にあり4位でした。
つまり、実際に臓器別に見れば心臓が最も死亡者数を増やしている臓器であることが分かります。
心疾患はあくまで広義であり、実際には心筋梗塞、狭心症、弁膜症、不整脈、大動脈瘤など様々な疾患が含まれますが、中でも狭心症や急性心筋梗塞などの虚血性心疾患は致死性の高い病気であり、日常生活における予防や対策が非常に重要となります。
そこで本書では、心疾患と日常生活の関係性を詳しく解説し、我々が取るべき予防策についても触れていきます。
<心疾患と言われる病気たちについて>
一言に心疾患と言っても、実際には心臓の病気は多岐にわたり、それぞれ特性も異なります。
例えば狭心症や急性心筋梗塞などの虚血性心疾患は、心臓を栄養する冠動脈が狭窄もしくは閉塞してしまい上手く動かなくなってしまうことで心不全に至る病気です。
冠動脈は細い血管であり、生活習慣、特に食生活の乱れにより動脈硬化が進展することで閉塞していきます。
また心臓には血液が逆流しないように弁が付いていますが、動脈硬化によって弁が石灰化すると上手く機能しなくなり弁膜症をきたすこともあります。
さらに、心臓から全身に血液を供給する大動脈にも石灰化が起きると、血管壁が脆くなり大動脈瘤という病気に至ります。
他にも、心臓の拍動リズムに異常をきたす不整脈も無視できません。
心臓は常に心臓内を流れる電気信号によって収縮運動をコントロールされていますが、異常な電気信号が発生することで正常な収縮を得ることができなくなり、動機や息苦しさ、場合によっては血圧低下や失神、心停止に至ります。
中でも代表的な不整脈である心房細動は、最新の知見で睡眠時無呼吸症候群(SAS)、糖尿病、高尿酸血症などと関連して発症するとほぼ結論付けられています。
つまり、心房細動はもはや生活習慣病のひとつとなったのです。
このように、多くの心疾患は食事や飲酒、喫煙などの生活習慣と非常に強い繋がりがあります。
<心疾患のリスクとなる3つの粉とは?>
では、具体的にどう言った生活習慣や病気がリスクとなるのでしょうか?
心臓病の代表的知見として高血圧、高コレステロール血症(高LDL血症)、高尿酸血症、糖尿病、肥満、ストレス、タバコ、家族歴(心筋梗塞、狭心症の親族がいる事)の8つが挙げられます。
このうちは、高血圧、高コレステロール血症(高LDL血症)、高尿酸血症、糖尿病、肥満の5つは食生活で改善することができます。
中でも長期的な高血圧には注意が必要であり、じわじわと血管が固くなり、脆く細くなっていくため、疲れ果てた血管が異常収縮し、心房細動や心筋梗塞、狭心症を引き起こすのです。
そこで高血圧の予防には、圧倒的に「食塩」の摂取量に気をつける必要があります。
例えばラーメン1杯で7gの塩分を含んでいますが、心臓病患者の塩分摂取は1日6gまでとされているため、いかに食事に気をつけなくてはいけないのかが分かります。
多くの人は外食やコンビニ食の「塩分、脂肪分が濃くおいしいもの」に慣れていますから、当たり前のように食べている日々の食事で適量をはるかに超えた塩分を長期的に摂取している可能性があるのです。
ちなみに、岩塩や藻塩など天然の食塩でも、工業生産された食塩でも、どちらも同じ塩分であり、体に良い塩でも摂取量には気をつけなくてはなりません。
次に、「糖分」の摂取量にも注意が必要です。
なかでも、スイーツに大量に使われるショ糖(白い砂糖)は糖尿病にとって一番危険であり、過剰摂取により糖尿病に陥れば様々な臓器障害や血管の動脈硬化を引き起こします。
さらに、「小麦粉」の過剰摂取も要注意です。
食文化の欧米化に伴い、パスタやパンなど小麦が原料の食べ物を食べる機会が増えていますが、小麦粉は結局炭水化物であり分解されれば糖質になるだけです。
美食が習慣になっているような人は、食塩、砂糖、小麦粉によって、生活習慣病、心臓病リスクが高まっており、これらは「悪魔の3つの白い粉」と呼ばれています。
「悪魔の3つの白い粉」の怖い点は、違法薬物でもなく日常生活に完全に溶け込んでいる点です。
ほとんどの人がこれら3つの粉を使った食べ物を、日常的にほぼ無意識に摂取しているはずです。
自炊ならまだしも、外食ではこれらの成分がふんだんに使われています。
なぜなら、人間の味覚はこれらの成分が強いほど美味しいと感じるようにできているからです。
さらに、外食は塩分とともに脂肪分も高めです。
焼肉がいい例ですが、タレの塩分と肉の脂肪分が何とも言えずおいしく感じ、病みつきになるのですが、心臓病リスク因子である「悪玉コレステロール(LDL)」の数値を高めます。
LDLの増加は高コレステロール血症を招き、動脈硬化を進展させてしまう原因となります。
また一緒にビールを飲めば、高尿酸血症を併発する恐れもあります。
このように、美味しいものや贅沢なものほど体に悪く心疾患のリスク因子が多いから残念です。
では、我々はどう対策を取るべきなのでしょうか?
<悪魔の白い粉に対する対応策とは?>
アメリカの医師、ウイリアム・オスラーは「人は血管とともに老いる」という名言を残しています。
年をとると太い血管から微小血管という細い血管に至るまで血管が硬くなっていき、血液を臓器に送る働きが柔軟に対応できなくなります。
特に食生活の乱れでコレステロールが付着して血管が狭くなっている人は、心臓などの臓器に血液が健全に行き渡らなくなり、臓器の機能に大きな影響を与えます。
しかし、血管や心臓を鍛えるのは困難であり、硬くなった血管は元に戻らず、失われた心機能も元には戻らないため、予防が何よりも大切になります。
そこで、普段の食事生活は野菜中心に魚、豆腐でタンパク質を摂取し、牛乳、肉など動物性脂肪を控えるようにすべきです。
肉の代わりにささ身や魚にして、納豆、味噌など日本古来の伝統的な発酵食品で免疫を上げるのも良いでしょう。
その上で十分な睡眠と運動時間を確保し、規則正しい生活習慣を送ることで予防可能です。
それだけでは僧侶のような生活になってしまうため、例えば週に1回は「毒を食べる日」を作って留飲を下げて、あとは健康な食生活を過ごすのです。
まとめ
本書では、心疾患と日常生活の関係性について詳しく解説しました。
魅力的な食事には罠があり、常に我々の命を脅かしてくる可能性があります。
急性心筋梗塞に罹患した際の死亡率は約40%と非常に怖い病気であり、本書で示したような対策をしっかりと各個人が取っていくべきです。
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