国内の脂肪肝の罹患者数はなんと約3000万人もいます!
今や脂肪肝は3人に1人が罹患する病気であり、それだけ注意しなくてはいけない病気であることが分かります。
脂肪肝と言えば「過剰なカロリー摂取による肥満」や「多量飲酒」によって脂肪が肝臓に溜まっている病気と認識されていますが、実は近年は飲酒しない、もしくは少ない人でも脂肪肝になる「非アルコール性脂肪性肝疾患(Nonalcoholic Fatty Liver Disease: NAFLD)」という疾患が増えてきています。
脂肪肝患者3000万人の中で、NAFLD患者は1000-2000万人とも言われており、飲酒しない人でも脂肪肝になる可能性が低くないということを認識しておく必要があります。
またNAFLDは、さらに単純な脂肪肝である「非アルコール性脂肪肝(NAFL)」と、肝臓の線維化が進んでしまうリスクの高い「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」に分類されます。
NAFLD患者の約10-20%が、肝硬変や肝ガンを併発しやすいNASHに進行するため、飲酒量が少なく肥満が無かったとしても油断してはいけないのです。
そこで本書では、増加傾向にあるNASHについて解説し、NASHにならないための食事療法についても詳しく解説していきます。
<日本人に増えつつあるNAFLD/NASH>
前述したように、脂肪肝とは基本的に「過剰なカロリー摂取による肥満」や「多量飲酒」によって引き起こる病気と認識されてきました。
これらによって体内でエネルギーが過剰状態になってしまうと、血液中の糖質は脂肪酸に変換され、肝臓に中性脂肪として貯蓄されていくからです。
逆に言えば、一見痩せ型で、飲酒量の少ない人は自分の肝臓が脂肪肝である可能性を疑うことも少ないのではないでしょうか?
しかし、残念ながら飲酒量が少なくても、肥満ではなくても脂肪肝に罹患する人は多く、日本人では特に増加傾向にあります。
飲酒しない、もしくは少ない人でも脂肪肝になる「NAFLD」は、脂肪肝患者3000万人の中で、1000-2000万人近くいると言われており、飲酒量に関わらず脂肪肝に罹患する可能性が高いことを示唆しています。
当然、飲酒量が少ないのであれば「過剰なカロリー摂取による肥満」が背景にある脂肪肝であると考えられ、実際にアメリカでは肥満の人において疾病率が高くなっています。
ですが、日本人は肥満の割合がアメリカほど多くないはずなのに、NAFLDやNASHの疾病率はアメリカと同程度なのです。
その理由として、「リピッドスピルオーバー」が考えられます。
<脂肪肝の原因となるリピッドスピルオーバーとは?>
本来、口から摂取した脂質は胆汁などによって消化され、脂肪酸とグリセリンに分解されて吸収されます。
血液中の脂肪酸は中性脂肪やコレステロールなどの原料となり、中性脂肪は糖質とともに体を動かすエネルギー源になります。
運動不足や乱れた食生活によって中性脂肪が相対的に過剰になると、体のどこかに蓄積していきます。
例えば中性脂肪が皮下や内臓に蓄積すると、それぞれ皮下脂肪、内臓脂肪と呼ばれます。
皮下脂肪、内臓脂肪という脂肪組織に入りきらなかった場合には異所性脂肪となり、文字どおり本来溜まるはずのない場所(肝臓や心臓といった臓器や筋肉など)に蓄積される脂肪になります。
異所性脂肪が肝臓で増えていくと脂肪肝になります。
日本人の場合は小柄な人が多いため、中性脂肪の貯蔵先である皮下脂肪や内臓脂肪のキャパシティーが大きくありません。
よって、多少過食しただけでもすぐに中性脂肪が行き場を失い、皮下でも内臓でもなく血液中に溢れ出してしまいます。
これをリピッドスピルオーバーと言い、これによって異所性脂肪が増加しやすく、アメリカ人ほど肥満率が高くないにも関わらず脂肪肝の罹患率が同程度になってしまっています。
またリピッドスピルオーバー以外に、遺伝子的要因も関係しています。
特にBMIが25未満の人のNAFLDは欧米よりもアジアで疾病率が高いとされていて、その原因としてPNPLA3という遺伝子の変異がアジア人に多く見られ、それがNAFLD/NASHの発症や進行に関わっている可能性があるようです。
以上のことからも、日本人は飲酒、肥満の有無を問わず脂肪肝に罹患しやすい民族であることが分かります。
では、この現状を受けてどう対応すべきなのでしょうか?
<脂肪肝を予防するための適切な食事療法とは?>
ここまでの説明からも、脂肪肝を予防するために過度な飲酒や乱れた食生活を避けるのは明白です。
しかし、だからと言って過剰なダイエットは要注意です。
意外なことかもしれませんが、ダイエットによる栄養障害でも脂肪肝になることがあるからです。
過剰なダイエットによって血液中のグルコースが低下すると、血液中のグルコースを細胞内に吸収させるホルモンであるインスリンの分泌が抑制されます。
しかし、そうなると体を動かすエネルギー源がなくなってしまうため、グルコースの代わりに皮下に蓄積した中性脂肪を分解してエネルギー源として使おうとします。
すると、皮下脂肪が分解されて脂肪酸として血液中に放出されます。
血液中に放出された脂肪酸のうち、エネルギー源として使用されなかった分は肝臓で吸収され、脂肪肝の原因となってしまうのです。
この時、本来であれば脂肪酸にたんぱく質が結合することで、脂肪酸が肝臓に吸収されないようになりますが、過度なダイエット中はたんぱく質も不足した状態であるため、脂肪酸が肝臓に吸収されてしまい脂肪肝のリスクを上昇させてしまうのです。
また中年女性はさらに要注意です。
女性ホルモンの1つであるエストロゲンは脂質の代謝に深く関わっており、閉経後はエストロゲンの体内の量が急に減ってしまうため、中性脂肪の値が急上昇することがあります。
しかし、ダイエットによってたんぱく源である魚や肉などを摂取制限している場合、たんぱく質が不足しているため、肝臓内に中性脂肪が蓄積しやすい状態になり脂肪肝に罹患しやすくなってしまいます。
以上のことからも、脂肪肝の予防には規則正しい食生活や運動療法はもちろんのこと、たんぱく質の摂取も重要なため、必ず肉や魚類の動物性たんぱく質と大豆食品などの植物性たんぱく質の両方を組み合わせて摂るようにし、栄養バランスを崩さない食生活をすることが重要となります。
また食べた分だけきちんと消費できるように、日常生活での活動量を増やす意識も必要です。
まとめ
肥満や過剰な飲酒がなくてもNASHになってしまう日本人は多いです。
NASHになれば、脂肪肝に伴う生活習慣病の進行や動脈硬化の進展、肝硬変や肝ガンの発症などハイリスクな病気に罹患する確率が増えてしまいます。
規則正しい食生活や運動以外に我々が取るべき対策は、早期発見のために定期検診を怠らないこと、そしてこれらの病気に備えることです。
特に、脂肪肝が進行することで発症しやすくなる心臓病や脳血管障害、ガンなどの病気は治療に時間やお金がかかるため、発症する前から備えておくことが肝要です。
【エピローグ】 もし、このようにお考えなら
今回の記事はいかがでしたか?既にご存じの情報もあれば、「そうなんだ」「知らなかった」といった情報もあったのではないでしょうか?
中でも、心疾患や脳血管疾患の内訳となる“病名(種類)”については、「混乱してしまう」「わかりにくい」といった声が多く聴かれます。
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・ 【脳血管疾患】 脳卒中と脳梗塞と脳出血の違いが分からない⁉
またこの違いは、ご加入されている生命保険の「保障範囲の違い」にも直結し、場合によってはこのように「受け取れる」「受け取れない」の違いになってしまうことも考えられます。
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