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男性でも要注意!子宮頚ガンの原因であるHPVとは?

 

ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus: HPV)は100種類以上の型を持ち、女性であれば80%以上、男性であれば90%以上が生涯で一度はいずれかの型のHPVに感染すると言われています。

特にHPVが世間一般にその名を知らしめている最大の理由は、女性の子宮頸ガンの原因となるウイルスだからです。

 

性行為などでHPVに感染した女性のうち、約90%の人は自身の免疫能力で自然にウイルスを排出することが出来ますが、残りの約10%の人はウイルスが排出されず数年から数十年かけて子宮頸ガンを発症させます。

 

そこで、日本では主に性行為を行う前の中学生までの女児を対象に、公費負担でのHPVワクチン接種を推奨しています。

2022年4月からは、9年ぶりに定期接種の積極的な勧奨が再開されました。

しかし、感染経路が性行為である以上、女性だけではなく男性もHPVに対する感染対策を意識するべきです。

 

子宮頸ガンになることのない男性と言え、HPVへの感染が原因で肛門ガン、陰茎ガン、中咽頭ガンなどの悪性腫瘍を発症する可能性があり、すでに欧米では男性に対するHPVワクチン接種が承認されています。

しかし、残念ながら日本ではまだまだ男性のHPVワクチン接種は進んでいません。

 

そこで本書では、HPVについての基礎的な知識はもちろん、取るべき感染対策や、男性こそ知るべきワクチン接種の実状についても解説していきます。

<世界中にありふれたウイルス、HPVとは?>

 

 

例えば、インフルエンザウイルスは冬になると流行し、プール熱で有名なアデノウイルスは夏になると流行します。

しかし、HPVはそうではなく年中、どこでも、いつでも我々の生活に溶け込むように存在し、私達の生活にとって非常に馴染み深いウイルスなのです。

主に性行為によって皮膚や粘膜に感染し、女性であれば80%以上、男性は90%以上が生涯で一度はHPVに感染すると言われています。

 

HPVは日本語で乳頭腫ウイルスと呼ばれ、皮膚や粘膜にイボイボのような乳頭状の腫瘍を形成するウイルスで、100種類以上の型があり、その型によって特性も異なります。

例えば、HPV16、18を中心に31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68などはガンの発生に関係があると考えられており、ハイリスクHPV と呼ばれています。

その一方でHPV2、3、4、6、10、11は尖圭コンジローマなどの良性腫瘍の発生に関係していると考えられており、ローリスクHPVと呼ばれています。

 

ハイリスクHPVによって発症する代表的なガンと言えば子宮頸ガンであり、早期では自覚症状に乏しく、進行すると不正出血や月経の乱れによって発見されます。

現在厚生労働省は20歳以上の女性に対し、2年に1回の頻度で子宮頸ガン検診の受診を推奨しており、以前よりも子宮頸ガン検診の受診率が普及したことで、20-40代の子宮頸ガン患者数は増加傾向にあります。

 

子宮頚ガンは発見が遅れると、場合によってはガンのみならず子宮そのものを切除しなくてはいけなくなり、若年女性の場合妊孕性に大きな支障をきたす可能性もあるため、女性にとってはとても怖い病気です。

 

これだけ聞くと不安になる方もいるかもしれませんが、実際にはHPVに感染しても80-90%は自身の免疫作用の働きで身体から消えてしまいます。

特に若年女性では体内から消失する可能性が高いと言われています。

逆に言えば、残りの10-20%はウイルスが体内で生き残り、長い時間をかけて発ガンの原因となるわけです。

<男性にとってのHPVとは?>

 

 

ここまで主に女性にとってのHPVについて解説してきましたが、それに対して男性にとってのHPVとはどんなウイルスなのでしょうか?

「HPV=子宮頸ガン」というイメージが強いため、恐らく日本人男性の中でHPVのことを気にする人は少ないと思います。

 

しかし、2017年に実施されたNational Health and Nutrition Examination Surveyの調査によると、アメリカ人の男性の11.5%、女性の3.2%に口腔HPV感染が認められたと報告されました。

この結果により、男性の方が4倍近くも多くHPVに感染していることが明らかになったのです。

 

また、アメリカのH Lee MoffittガンセンターのAnna R Giuliano氏らの研究結果によると、研究対象となった男性のHPV感染率は50%であり、その中でも13種のハイリスクHPVへの感染率は30%だったそうです。

これらの結果からもわかるように、HPVは男性にも容易に感染するウイルスであると言うことです。

では、男性がHPVに感染した場合、どういった病気になるリスクがあるのでしょうか?

 

ローリスクHPVの場合、女性同様に男性でも尖圭コンジローマという良性腫瘍を男性器に発症する可能性があります。

男女ともに、気になる性行為から3週間~8か月(平均3か月)で発症し、ほぼ無症状なため見た目で気付くことが多いです。

 

それに対し、ハイリスクHPVの場合、男性でも肛門ガン、陰茎ガン、中咽頭ガンなどの悪性腫瘍を発症する可能性があります。

つまり、いかに子宮頚ガンを発症しない男性と言え、非常に高い確率でHPVに感染し、自分の大切なパートナーにHPVを感染させてしまうリスクがあり、さらに自分自身も子宮頚ガン以外のガンを発症する可能性があるのです。

 

以上のことからも、女性のみならず男性もHPVに対する感染対策をもっと意識するべきです。

 

<HPVに対する我が国の感染対策は?>

 

 

HPVが性行為による感染症である以上、避妊具の着用は一時的には有効ですが、一生涯HPVに感染しないようにすることはほぼ不可能です。

そこで、最も有効な予防策はHPVに対するワクチン接種が考えられます。

 

前述したように、HPVに感染した人の約80-90%は数年以内に自己免疫能力で体内からHPVを自然排除します。

つまり免疫能力を底上げできるワクチン接種が最も効果的な予防法なのです。

 

日本では2009年からワクチン接種が始まりましたが、副作用の観点から2013年には厚生労働省が各自治体に対し、積極的に接種を勧奨することを一時的に差し控えるように勧告しました。

しかし、2022年4月からは9年ぶりに定期接種の積極的な勧奨が再開されました。

 

現在日本において公費で接種可能なワクチンは、HPV16、18をターゲットにしているサーバリックスと、HPV16、18に尖圭コンジローマなどの原因となるHPV6、11もターゲットにしているガーダシルの2種があり、子宮頸ガンを引き起こすHPV全体の60-70%をカバーできると考えられています。

 

ワクチン接種はあくまで治療ではなく予防であり、感染してしまってからでは除去できなくなってしまうため、接種は性行為前が好ましいです。

そのため、性行為を行う前である可能性の高い11-14歳の女児を最優先に、公費負担でのHPVワクチン接種を推奨しています。

 

しかし、残念ながら成人女性や男性のワクチン接種は原則全額自己負担になります。

前述したように、男性にとってもHPVは油断ならぬ感染症であり、すでに諸外国では男性を対象としたワクチン接種が承認されています。

2022年に入り、日本でもようやく一部の自治体で、10-20代の男性を対象にHPVワクチン接種への助成制度を導入し始め、今後は男性のHPVワクチン接種が広がっていくことが期待されますが、現状の医療制度ではまだまだ時間がかかると思われます。

日本はワクチン接種後進国であり、先進国の中でも大変恥ずべき現状なのです。

 

まとめ

ここまでの話はHPVに限った話ではなく、そのほかのガンにおいても日本と外国では大きな差があります。

 

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