「老後に保険は不要」という声もありますが、本当に老後の保険は必要ないのでしょうか。
結論から言うと、老後には長生きリスクと相続税リスクがあるため、「リスク対策として保険を活用する」ことは十分ありえます。
この記事では、長生きリスクや相続税リスクについて案内しながら、それらに対し保険でどう対策するのかを解説します。老後のリスク対策の一つの方法として、保険を活用する方法を参考にしてみてください。
長生きリスクとは
長生きリスクとは、老後に資産が枯渇するリスクです。
老後は子どもも独立して住宅ローン返済の目途も立つなど、教育や住まいに関する負担は減少する傾向があります。その半面、老後は定年退職によって収入が減少するもの。
定年後、会社の再雇用制度を利用して引き続き働くことはできても、多くの場合現役時代より給与は下がります。体力の衰えや病気、就業環境がないという理由で働けず、公的年金と貯蓄だけで家計をやりくりする家庭もあるでしょう。
老後に減少した収入によって生じる生活費の不足を貯蓄の取り崩しによって賄う場合、長生きすればいつかはその貯蓄が底をつきます。
加えて、年齢を重ねるほど病気やケガ、要介護になるリスクが高まります。貯蓄が尽きた頃に医療費・介護費がかさめば、家計は一気に困窮してしまう可能性もあるでしょう。長生きには、このようなリスクがあるのです。
長生きリスクに対応した保険
長生きリスクに備えるには、十分な資産を備えることが何より大切です。とはいえ、誰もがコツコツ資産形成できるわけではありません。
定年退職を目前にして「教育費と住宅ローンは完済できたけど、自分の老後資金は全然備えられなかった」「そもそも貯蓄が苦手」という人もいるでしょう。コツコツ資産形成するのが苦手な人は、以下のような「長生きリスクに対応できる保険」を活用してリスク対策を取る方法もあります。
- 健康増進型保険:定期的な運動習慣や毎年の健康診断結果に応じて保険料の割引・還付金がある保険。医療保険や収入保障保険(死亡保険)などがある
- 認知症保険・介護保険:認知症や要介護になったときの治療費に備える保険。その状態にならなければお祝金が給付されるものもある
- トンチン年金保険:死亡保障がなく、生きている限り受け取れる年金保険。長生きに特化していて、商品によっては50代からでも加入できる
老後は働いていても収入が減少するものです。いかに支出を減らし、労働収入とは違う収入源を確保するかが課題になるため、上記のような保険で対策するのも一つの方法です。
相続税リスクとは
相続税にはさまざまなリスクがありますが、まず考えたいリスクは「相続税の支払いが発生すること」です。
一定額以上の遺産相続があれば、それを受け取る人には相続税の支払い義務が生じます。相続税は相続の開始(財産を持っていた人が亡くなること)から10か月以内に現金で納めなければならないため、あらかじめ相続税がいくらかかるのかを計算して備えておくことが大切です。
老後資金が枯渇する長生きリスクとは対照的なため、「相続税なんて富裕層だけの話」と思うかもしれません。しかし、相続税がかかるのは富裕層だけではありません。2015年の相続税改正によって相続税の基礎控除枠が縮小され、相続税がかかる人は確実に増えています。
関連記事:「相続税は富裕層にしか関係ない」は間違い!予期せぬ相続税で困らないための準備」
「相続税がかかるほどの現金なんて我が家にはないよ」と思うかもしれませんが、相続税の課税対象は現金だけではありません。実家の家屋や土地、上場株式や投資信託、債券、宝石や貴金属も相続財産と見なされます。預貯金はそう多くなくても、「実家の土地の評価額が高く、思わぬ相続税が発生してしまった」というケースもあるのです。
いずれにしても、早めに備えておく必要があるでしょう。
相続税リスクに対応した保険
実家や自身の財産に相続税がかかりそうな場合は、生命保険を相続税対策に活用できます。
生命保険には相続税の非課税枠があり、有効に利用すれば相続税はその分減額されます。ただし、相続はいつ発生するかわからないため、生命保険を活用する際は期間の定めがない「終身保険」を選びましょう。
終身保険は解約しない限り保障が一生涯続くため、相続税対策に向いています。また、長く保険料を支払っていくと、払い込んだ保険料以上の解約返戻金が発生します。思わぬ長生きで資産が枯渇し、「相続税よりも当座の生活費が必要」というときには、解約して生活費に充てることもできるでしょう。
老後に保険を考えるとき、注意すべきこと
老後のリスク対策で保険を考える際は、以下の点に注意しましょう。
- 民間の保険は「自身が利用できる社会保障で受けられる給付」をベースに、不足している部分を補うために加入すること
- 老後も会社で働く場合は、「会社で受けられる福利厚生」も加味すること
- 相続税対策で終身保険を活用する場合は契約形態に気をつけること
65歳以上になると、介護が必要になったときに公的介護保険を利用できます。また75歳以上は、後期高齢者医療制度によって窓口負担が減額されます。高額な医療費がかかった際に一定額の払い戻しを受けられる高額療養費制度もあり、老後でも一定の社会保障を受けることは可能です。
また、継続雇用制度や定年延長で老後も働く場合は、会社の福利厚生制度があるはずです。こうした社会保障や福利厚生で受けられる保障・給付を確認したうえで、その不足を補うために民間保険を活用しましょう。
相続税対策のため保険に加入する際は、保険金受取人を相続人以外に指定してしまうと、相続税の非課税枠が使えません。節税を目的に保険を利用する場合は、方法を誤ると税務調査の対象となるなどの不利益を被る可能性もあります。せっかくの対策が無意味にならないよう、専門的な分野については事前に専門家に確認しておくと安心です。
まとめ
老後には、思わぬ長生きリスクや相続税リスクがあります。これらのリスクに対応するため、民間の保険に加入するのも一つの方法です。
ただ、リスクに備える方法は保険だけではありません。健康に気をつけてしっかり働き、労働収入を増やして対応する人もいます。最適なリスク対策の方法は、各家庭のライフプランや資産状況などで大きく変わるため、まずは老後のライフプランから見直してみてはいかがでしょうか。
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