両親ともに糖尿病の場合、40~50%の確率で糖尿病になるとも言われています。
「家族に糖尿病の人がいると糖尿病にかかりやすい」ということをご存知の人は多いかもしれません。実際に両親が2型糖尿病の場合、その子供は50%以上の確率で糖尿病を発症するといわれています。50%以上の確率という数値は決して低い確率ではありません。
家族に糖尿病の方がいる場合、どのような特徴があるのでしょうか。
家族に糖尿病の方がいる場合、若い頃に発症する
父親や母親が糖尿病を持つ場合、糖尿病でない親よりも6歳程度早く糖尿病を発症していることが、「2型糖尿病のゲノムワイド関連研究」により分かりました。この発症年齢は、世代を経るごとに早くなる可能性もありますが、実際にはまだよく分かっていません。しかし「世代を経るごとに発症年齢が早くなる」のが事実であれば、自分たちの子孫は、糖尿病と付き合っていく期間がどんどん長くなることになります。
また、片方の親だけではなく両親が糖尿病の場合、血糖をコントロールするホルモンを分泌する「すい臓のβ細胞」を守るためにも、早いタイミングで積極的な治療が必要とされています。家族に糖尿病の方がいる人は、きちんと医療機関でチェックを行いながら、日常生活でも気を配る必要があります。
糖尿病の家族を持つ糖尿病患者さんはインスリンの分泌能が悪い
膵臓からインスリンを分泌する力は、「C-ペプチド」という物質の量で分かっています。C-ペプチドは尿に排出されるので、尿に含まれるC-ペプチドの量を調べると、インスリンがどのくらい分泌されたかを調べることができます。
インスリンを分泌できる機能が十分にある場合では、C-ペプチドの値は大きくなります。一方、C-ペプチドの値が小さな場合は体内でインスリンは余り分泌されていないことになります。
C-ペプチドの分泌能の違い
空腹時の血中C-ペプチドは一般的に、0.5~2.0ng/mlといわれています(検査機関等により若干の違いあり)。
2020年に公表されたある研究結果によると、2型糖尿病患者1,113人を4つのグループに分けて調査を行った結果、血液中のC-ペプチドの量には差が見られることが分かりました。つまり、インスリンの分泌能に遺伝が関係する可能性が示されたということです。
両親が糖尿病の患者さんの場合、血液中のC-ペプチドの量が少なくなっていますので、膵臓からのインスリン分泌能は、だいぶ低くなっていることが分かります。
インスリン治療を行っている割合
インスリンは、血液中の血糖を下げる働きのあるホルモンです。これが十分に分泌されずに高血糖が続いてしまう場合は、インスリンを補う治療が必要になります。
では、親族に糖尿病の方がいる患者さんでは、インスリン治療の割合はどのくらいみられるのでしょうか。次は、インスリン治療を行っている割合を見てみましょう。こちらも同じ研究結果からです。
今度は、グラフの高さが逆になっているのが分かりますか?つまり、両親が糖尿病であるグループ(およそ40%)と比較すると、両親・兄弟ともに糖尿病ではないグループ(およそ27%)の方が、インスリンを補う治療を受ける割合が少ないということです。
家族が糖尿病だと、インスリンは効きにくいのか?
2型糖尿病を発症する要因には「インスリン分泌の低下」のほかにもう一つ、「インスリン抵抗性の増大」があります。インスリン抵抗性の増大とは、インスリンの効きにくさが増える、つまり同じ量のインスリンがあっても効きにくい=血糖を十分に下げることができない、ということです。この2つの要因で2型糖尿病は発症するため、抵抗性を調べることも重要となります。
インスリン抵抗性は「インスリン抵抗性関連指数(HOMA-IR)」という数値で表され、インスリン抵抗性が高いほどこの値は上がります。同じ研究ではこの「インスリン抵抗性関連指数」も調べましたが、実はグループによる差はそれほど大きくはない、という結果になっています。つまり、つまり、両親から受け継ぐ糖尿病の特徴は、インスリン抵抗性よりもインスリンを分泌する力が落ちていることの方がより顕著となるようです。
まとめ:親から受け継いだ糖尿病とどう付き合う?
家族に糖尿病の方がいると、自分も発症してしまうのではないかと悪い方に考えてしまうかもしれません。しかし、家族に糖尿病の方がいるからこそ、きちんと自己管理を行うことで早期発見や早期治療につなげることもできます。
まずは、生活習慣を整え、些細な体調変化も見逃さないように自己管理を行いましょう。必ずしも、両親と同じ生活習慣である必要は無いのです。また、定期的な医療機関での健康状態のチェックも重要です。「自分は糖尿病になりやすい要因を持っている」からこそ、自分の体をいたわり、大切にしていきましょう。
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