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相続税対策に生命保険は活用できる?向いている保険種類と活用ポイント

2015年に相続税の基礎控除額が引き下げられ、相続税の課税対象となるケースや相続税額は年々増加しています。 

 

そのため「相続税対策をしたいけど、何を行えば良いのか分からない」という人は多いのではないでしょうか。 

 

実は、相続税対策の1つとして生命保険を活用するという選択肢があります。

 

今回は相続税対策に生命保険が活用できる理由、相続税対策に向いている保険の種類、相続税対策を行う際のポイントをお伝えしていきます。 

 

生命保険を相続税対策に活用できる理由は3つ

 

生命保険を相続税対策に活用できる主な理由として、以下の3つがあります。

 

  • 生命保険には相続税の非課税枠がある
  • 相続を放棄しても生命保険金は受け取れる
  • 納税資金として活用できる

 

それぞれ、詳しく説明しましょう。

 

1.生命保険には相続税の非課税枠がある

生命保険には、以下の相続税非課税枠があります。

 

  • 「500万円×法定相続人の数」=生命保険金等の非課税枠

 

非課税枠とは、「この金額内であれば相続税が課税されずに保険金を受け取れる範囲」ということ。仮に法定相続人が3人の場合は、500万円×3人=1,500万円以下の生命保険金であれば相続税がかかることはありません。

 

そのため「子どもや孫に財産を遺したいけど、一定以上の財産があるため相続税がかかってしまう」と不安な場合には、財産の一部を生命保険にすることで相続税対策ができるのです。

 

相続税の対象になるのは、生命保険契約によって得られる「死亡保険金」。契約内容によって発生する分配金や剰余金、割戻金なども死亡保険金の一部として受け取ることができます。

 

2.相続を放棄しても生命保険金は受け取れる

生命保険金は、相続を放棄した場合でも受け取ることができます。相続の放棄は、以下のようなケースで見られます。

 

  • 被相続人(亡くなった人)の財産のうち、ローンや未払いの税金といった負債が多い
  • 管理が面倒な不動産など、引き継ぎたくない財産がある
  • 相続財産に何があるのか把握できていないが、借金が多そうなので相続したくない

 

このような場合に相続を放棄したとしても、「生命保険金の受取人」は固有の権利と見なされるため、保険金だけは受け取ることができます。

 

また、現金や株式、債券、不動産といった相続財産は、基本的に遺言書の内容や遺産分割協議に基づいて受け取る割合や方法などが決まります。

しかし、受取人が指定されている生命保険は、こうした遺産分割の対象外です。そのため、複数の相続人の了承を得ることなく、単独で相続することが可能です。特定の子どもや孫など、確実に財産を遺したい場合にも、生命保険は有効な手段なのです。

 

3. 納税資金として活用できる

相続税対策で受け取った生命保険金は、他の相続財産に対して発生する相続税の納税資金として活用できます。

 

亡くなった人(被相続人)の財産が相続税の基礎控除額「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超えると、相続税の申告・納付の義務が生じます。

そして相続税は、被相続人が亡くなった日または亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に納めなくてはなりません。例外的に延納や物納といった方法も認められてはいますが、基本的には期限内に現金で支払う必要があります。

 

もし急に父親が亡くなった後に、知らされていなかった相続財産が高額で、数百万円単位の相続税納税義務が発生することになったとしましょう。

そんなとき、10か月以内に現金で数百万円納税できる人はどの程度いるでしょうか。

 

このとき生命保険金があれば、納税資金の原資として保険金を活用できます。非課税枠内で生命保険金を受け取れば、生命保険金自体には課税されることがありません。

相続財産が高額になりそうな家庭では、生命保険金を納税資金として活用する方法もあるのです。

 

相続税対策に向いている生命保険は終身保険

生命保険には、以下のとおり複数の種類があります。

 

  • 定期保険:一定期間の死亡保障を用意する
  • 収入保障保険:一定期間の死亡保障を分割で受け取れる
  • 終身保険:保障期間に定めがなく、一生涯保障が続く

 

このうち、相続税対策に向いている生命保険は「終身保険」です。終身保険は定期保険や収入保障保険に比べて保険料が割高ですが、保障の期間に定めがないというメリットがあります。

 

2020年厚生労働省が公表した「令和2年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.64歳。女性の平均寿命は87.74歳となっており、年々平均寿命は延びています。

人生100年時代と言われる今、相続はいつ発生するのかわかりません。相続対策として生命保険に加入するのであれば、保障期間に定めがない終身保険を選んだほうが確実に保険金を遺せるでしょう。

 

生命保険で相続税対策を行う際のポイント

生命保険で相続税対策を行う際は、以下3つのポイントをおさえておきましょう。

 

  1. 保険契約の契約形態
  2. 配偶者の税額軽減
  3. 相続人が複数いる場合の非課税枠

1.保険契約の契約形態

相続対策で生命保険を契約する際は、保険の契約形態に気をつけてください。なぜなら、生命保険契約では被保険者・保険契約者・保険料負担者が誰であるかによって税金の取り扱いが異なるからです。

 

  • 被保険者:保険に加入している人
  • 保険契約者:保険を契約している人
  • 保険料負担者:実質的に保険料を支払っている人

 

相続税の対象になる保険契約とは、被保険者と保険料の負担者が同じ人(=亡くなった人のことで、財産を相続する人。以下「被相続人」)で、保険金受取人が違う人である場合です。以下の表をご覧ください。

 

<死亡保険金を受け取ったときの課税関係>

被保険者  保険料負担者  保険金受取人  取り扱いと課税関係 
被相続人  被相続人  被相続人以外の人  みなし相続財産として相続税の非課税枠が適用される 
被相続人  被相続人以外の人Aさん  被相続人以外の人Aさん  所得税 
被相続人  被相続人以外の人Aさん  被相続人以外の人Bさん  贈与税 

 

2.配偶者の税額軽減

相続税は、相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると発生するとお伝えしました。しかし配偶者の場合、この基礎控除額を超える大きな控除枠があります。

 

それが「配偶者の税額の軽減」です。以下の金額のうち、どちらか多い金額までの財産であれば、配偶者に相続税はかかりません。

 

1億6,000万円

・配偶者の法定相続分相当額

 

つまり基礎控除額を超えていても、配偶者であれば1億6,000万円までなら相続税はかからないのです。もし被相続人の相続財産の評価額が高くなる場合には、まず配偶者に相続させることで相続税の負担を大幅に軽減できます。

 

ただし、被相続人から多額の財産を相続した配偶者が時を待たずして亡くなってしまう可能性があります。その場合、最終的に相続財産を受け取る子ども(相続人)の税負担が重くなってしまうという問題点があるので気をつけましょう。

 

このように最初の相続で相続人だった配偶者が亡くなり、次の相続が発生してしまうことを「二次相続」と言います。二次相続は一次相続(最初の相続)よりも税負担が重くなるため、相続対策を考える際は二次相続までふまえた対策をすることが大切です。

 

3. 相続人が複数いる場合の非課税枠

財産を相続させたい相続人が複数いるときは、生命保険の相続税非課税枠の計算に気をつけましょう。

 

相続税対策で複数の生命保険に加入する場合、他の相続人に対して支払っていた保険契約の保険料がある場合は、被保険者・保険契約者・保険料負担者の関係性によっては課税対象となります。

 

<死亡保険金を受け取ったときの課税関係>

被保険者  保険契約者  保険料負担者  課税関係 
被相続人以外の人  被相続人  被相続人  相続財産として相続税の課税対象となる 
被相続人以外の人  被相続人以外の人  被相続人  みなし相続財産として取り扱われる 

 

つまり、上述した生命保険の非課税枠である「500万円×法定相続人の数」は、相続人ひとりあたりの非課税枠ではありません。すべての相続人が受け取る保険金の合計額が「500万円×法定相続人の数」を超えると、その超えた部分は相続税の課税対象になります。

 

多くの人にとって、相続税の計算や課税関係は複雑です。複数の相続人がいて生命保険での相続税対策を考えている場合は、税制に詳しいファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談してみてください。

 

 

まとめ

生命保険の相続税非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」です。

 

この非課税枠内であれば、相続人が受け取った死亡保険金には相続税がかかりません。また、受取人に指定されていれば、相続放棄をした人でも死亡保険金を受け取ることができます。受け取った死亡保険金は納税資金として活用することもできるため、生命保険は相続税対策として有効な方法と言えるでしょう。

 

 

 

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