40代や50代で住宅ローンを組んでマイホームを購入する人は少なくありません。
住宅金融支援機構の調査によると、2020年度に住宅ローンの一種である「フラット35」を利用してマイホームを購入した人の25.4%が40歳代、12.1%が50歳代となっています。
※出典:独立行政法人住宅金融支援機構「2020年度フラット35利用者調査」
40代や50代の人も、住宅ローンを組んでマイホームを購入できます。しかし予算や返済期間などをよく検討せずに購入すると、返済負担が家計を圧迫して、生活が苦しくなってしまうかもしれません。
本記事では、40代や50代が住宅ローンを組むときに注意すべき点や、失敗しないためのポイントについてわかりやすく解説します。
40代や50代で住宅ローンを組もうとして失敗するケース
40代や50代が、十分に検討することなくマイホームを購入すると、どのような失敗をする恐れがあるのでしょうか。代表的な事例をみていきましょう。
現在の収入をもとに予算を立ててしまった
役職定年によって管理職から離れたり、定年退職を迎えて主な収入源が年金になったりすると、世帯収入は低下します。そのため「現在の年収は800万円だから5,000万円ほどの物件は買えるはずだ」と、年収だけをもとに予算を決めると失敗しやすいです。
住宅ローンの返済期間は、一般的に最長35年です。また、金融機関の多くは、住宅ローンの完済時の年齢を80歳までとしています。そのため45歳までであれば、返済期間が35年の住宅ローンを組める可能性があります。
仮に物件の価格が5,000万円、金利1.5%、返済期間35年、ボーナス返済なしの住宅ローンを組んだとしましょう。返済方法は、毎月一定額を返済する「元利均等方式」である場合、毎月の返済負担は、約15.3万円です。
住宅ローンを組んだのが45歳、勤務先の役職定年が55歳である場合、返済開始からわずか10年で年収が低下します。現在の年収だけで予算を立ててローンを組むと、役職定年を迎えたあと毎月約15万円の返済が苦しくなるかもしれません。
返済負担が老後の家計を圧迫した
役職定年よりもさらに世帯年収が低下するのが、定年退職をして年金生活に入るタイミングです。総務省の統計によると、現役世代の世帯収入は月額約61万円です。それに対し、夫が65歳以上の無職夫婦世帯における収入は、月額約25.7万円となっています。(出典:総務省「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年) 家計の概要」)
定年退職をしたあとも、再雇用や再就職で働く人は少なくありません。しかし、たとえ働いたとしても、現役時代の水準に近い収入を得るのは困難でしょう。
老後生活に入ると、世帯収入は基本的に低下します。定年退職後も住宅ローンを返済していくにもかかわらず、老後生活のことを考えずにマイホームを購入すると、返済負担が家計を大きく圧迫するでしょう。最悪の場合、自宅を手放さざるを得なくなるかもしれません。
また、住宅ローンを返済しながら老後資金を積み立てる必要もあります。マイホームの購入によって必要な老後資金を準備できていなければ、老後生活はさらに苦しくなるでしょう。
子どもの教育資金を考慮していなかった
住宅購入資金や老後資金とならんで高額なのが、子どもの教育資金です。教育資金は、進学ルートによって1,000万〜2,000万円程度かかるといわれています。
マイホーム購入の頭金を支払うために貯蓄を使い、住宅ローンの返済で思うように貯蓄がすすまないと、子どもの教育費や進学費が不足するかもしれません。
教育資金が不足し教育ローンを組むことになると、家計の返済負担はさらに増えてしまいます。奨学金を利用する方法もありますが、独立したあとの子どもが返済義務を負うことになります。
40代や50代で住宅ローンを組むポイント
マイホーム購入の失敗を防ぐためには、現在だけでなく役職定年や定年退職を迎えたあとのことも考慮して住宅ローンを組みましょう。また、子どもの進学をはじめとしたライフイベントももとに資金計画を立てると、失敗を防ぎやすくなります。
老後生活を迎えるまでに完済できる住宅ローンを組む
理想をいえば、老後生活を迎えるまでに完済できる範囲内で住宅ローンを組むことができれば、返済負担が老後生活を圧迫する心配はありません。また、完済時の年齢を低くすると、住宅ローンの審査に通過しやすくなるというメリットもあります。
とはいえ、首都圏をはじめとした住宅価格が高いエリアでマイホームを購入する場合、老後生活を迎えるまでに完済できる住宅ローンを組むのは現実的ではないのかもしれません。
定年後も返済が続く住宅ローンを組むのであれば、積極的に繰り上げ返済する方法があります。繰り上げ返済によって返済期間を短くできると、返済負担が老後の家計を圧迫せずに済むでしょう。
ただし、定年退職時に受け取る退職金のすべてを一括返済に充てるのはおすすめできません。退職金は、老後生活の貴重な資金源であり、すべてを住宅ローンの返済に充ててしまうと老後資金が不足しやすくなるためです。
まとめ:マイホームの購入はライフプランをもとに判断する
マイホーム購入の資金計画を立てるときは、ライフプランを考えることが重要です。ライフプランは、ご自身や家族がどのような人生を送りたいか計画を立てることです。
現在の収入が続く期間や老後生活の収入と支出、子どもの教育資金がかかるタイミング、などを考えることで、マイホーム購入の資金計画を立てやすくなります。また、繰り上げ返済の資金を準備できるか検討するときも、ライフプランが役立ちます。ライフプランを考える際は、ファイナンシャル・プランナーに相談するのが有効です。
ファイナンシャル・プランナーに相談すると、将来のライフイベントや必要資金、収入・支出の推移を一覧表にまとめたうえで、現実的な資金計画を提案してくれます。マイホームは、人生のなかでもとくに高額な買い物です。現在だけではなく将来のことも考えたうえで、計画的に購入しましょう。
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