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知らないと損!混合診療の全面解禁が意味することは?国民はどう受けとめるべきか?

先進医療と患者申出療養制度の導入により、保険診療と自由診療の併用が合法的に活用されるようになりました。

自由診療を含む高額の医療費負担を軽減できる制度として、標準治療で効果が見られない患者からは歓迎ムードで受け入れられています。

 

一方、保険診療と自由診療を併用させる「混合治療」の拡大によって生まれる問題も多く、今後の医療制度にかかる負担を懸念する声も少なくありません。

 

混合治療が利用しやすくなると、どのような問題が発生するのでしょうか。今回は混合治療の解禁がもたらす懸念点について解説します。

混合診療とは?

 

混合治療とは、公的医療保険が適用される「保険診療」と、公的医療保険適用の対象外である「自由診療」を併用し、保険診療分のだけ保険を適用する方法です。

混合診療への公的医療保険適用は健康保険法で禁止されており、自由外診療が含まれる医療行為は全て保険適用外となります。

 

仮にがん治療に総額60万円(うち30万円は抗がん剤)の医療費がかかった場合、全て医療行為が保険診療の対象である標準治療であるなら、患者が自己負担する費用は高額療養費制度が適用され8万円程度で済みます。

 

しかし、標準治療で使用される抗がん剤に薬物耐性が出るなどして未承認薬を使用すると、全ての医療行為に保険が適用されなくなり、60万円の治療費全てを自己負担する必要があるのです。

 

これを標準治療の30万円分に公的医療保険を適用し、負担する費用の合計を40万円程度に抑えようというのが混合治療です。

 

 

保険外併用療養との違い:

先述の通り、日本では原則として混合治療は認められていませんが、例外的に保険診療を適用しながら自由診療の併用を認める「保険外併用療養」制度があります。

保険適用を受けられる治療行為は先進医療や患者申出療養、また入院時の差額ベッド代など、厚生労働省が認めた限られた範囲のみとされています。

 

《参考》保険外併用療養の対象である先進医療および保険外併用療養について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
知らないと損!たとえば、こんなときに選択したい「患者申出療養制度」とは?

 

 

混合診療が適法化されるとどうなる?:

日本では一部の例外を除き禁止されている混合診療。

患者の費用負担が軽くなるというメリットが大きいようにも感じられますが、現在の医療制度の根幹を揺るがすデメリットもあるとされており、段階的な解禁にともない慎重な議論が進められています。

では混合診療が適法化されると、具体的にどのような動きが生まれると考えられているのでしょうか。

 

 

混合診療の適法化にあるのはメリットだけ?:

現在日本では1984年10月の先進医療、2016年4月の患者申出療養を経て、段階的に混合診療の適法化が進められています。医療費への部分的な保険適用により国民の負担が軽くなると歓迎される一方、必ずしも軽減にはつながっていないという声も少なくありません。

 

保険外併用療養により自由診療が使いやすくなったことで、患者は費用負担を軽減しながら自らの意思で未承認薬を選択できるようになりました。しかし未承認薬には非常に高額な薬が含まれており、選択した薬によっては治療費が月額100万円を超える場合も珍しくありません。

 

また、一般的にがん治療の投薬は1クールでは終わらないため、6クール(5~6カ月)続けるようなら未承認薬の費用だけで5~600万円程度が必要です。

 

日本では一般的な知識として高額療養費制度が広く知れ渡っていますが、その影響(功罪で言う「罪」の意味)で1カ月の医療費負担は8万円が限度と認識している人が少なくありません。

しかし、自由診療における医療費負担は青天井といえるほど際限がありません。

そのため医師からの提示された治療費の額に愕然とするケースは少なくありません。

藁にもすがる思いで自由診療を希望したのにもかかわらず、最終的には経済的に実行が難しい金額であることを目の当たりにした患者のショックは想像に硬くありません。

 

自由診療に関する知識を学ぶ機会が少ない現代において、混合診療のメリットをクローズアップして喧伝する行為は、観る角度によってはバランスを欠いた触れ込みであることを知っておくべきかもしれません。

 

 

患者側が自由診療を学ぶ必要がある?:

前述の通り、自由診療の取り扱いとなる治療の選択に着眼する状況はまさ”藁にもすがる”闘病生活であることが想像されます。そうした状況下で可能性に繋がる治療方法を提示された時、相場観もわからないまま命を預ける選択をするのは仕方のないことなのかもしれません。

 

一方、がん治療は「情報」と「お金」との闘いと言われ、常に「【情報】他の選択肢はないのか?」「【お金】提示された金額(自由診療市場における相場観)は妥当なのか?」と一歩引いて考える習慣が身についていれば、自分にとって適切な治療法を選択できる可能性があるでしょう。

 

今後混合診療が解放されると共に患者が自由診療を選択しやすくなる環境は整って行きますが、こうした中で治療法を適切に選択するためにも、患者側にもリテラシーを強化するための学びが必要になると考えられます。

 

 

安易に自由診療の領域が拡大する方向に向かわないだろうか?:

これまでは保険診療の対象である治療法・薬剤はすべて厚生労働省による承認を受けており、保険が適用された結果、国民の自己負担は実質約1割(高額療養費制度適用後)に軽減されていると言われています。

ところが、自由診療の領域が拡大する方向に向かうと未承認薬を使用した治療が一般化し、結果的に国民の自己負担が増加する可能性があります。

 

 

 

少子高齢化を背景に国民医療費が膨張し続け国の財政が逼迫していることはご承知のとおりです。単純な理屈からすると自由診療化が進んでも医療機関の収支には影響がなく、結果的には国民の負担が増える可能性があることを否定できません。

 

 

そうなると、これまでの「厚労省の承認=保険適用」という構図が崩れ、新しい治療法や薬剤は承認を受けても保険には適用されないという新しい概念(中間の基準)が生まれることになります。

 

また、治療費が高額であるが故に一部の経済的に裕福な人だけが最新の医療の恩恵を享受できるようになり、国民皆保険の根幹(保険の平等性)が損なわれる懸念もあります。

 

とはいえ、少子高齢化の問題が一足飛びには解決しない大きな課題であることも否めず、我々が執り得る行動としては“経済的”な準備(資産の増加、民間保険の活用)か”心”の準備(心構え、覚悟)のみなのかもしれません。
もしかしたら近い将来この国においても、「家計および資産の水準」が大病を患った際の「治療の選択」に直結し、延いては「命の選択」に左右する時代が来るのかもしれません。

 

 

まとめ

混合診療(自由診療)の適用が進むことにより考えられる“功罪”について解説しました。

 

勿論のこと、ドクターや医療業界に従事する方々の絶え間のない尽力によって現在は救えない命が救えるようになることについては、とても尊いことで疑う余地が無いことです。その一方では、安易に自由診療の領域が拡大する方向に向かえば懸念される点があることを、我々は知っておくべきだとも思われます。

 

他方、今回は混合診療をテーマに解説しましたが、私たちの健康・医療を取り巻く環境に大きく影響する「社会保険に関するさまざまな情報」は他にもあります。これを機会にもう少し情報収集をしておきたいとお考えの方には、今回の解説に連動したこちらの記事がおすすめです。

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