どんなときに、いくら受け取れるのか?受け取るには、どうすれば良いのか?
年金というと、「老後にお金が定期的に振り込まれるもの」というイメージを持っている人が多いでしょう。正式には「老齢年金」といいます。
年金には他にも「障害年金」、「遺族年金」という公的に支給されるものがあります。日本では20歳以上のすべての国民が加入している「公的年金」から支給されるものです。
社会のセーフティーネットの1つである「障害年金」について解説します。
※政府広報オンラインの障害年金を解説するページを参考にして記事を作成しています。
「障害年金」は知らないと損な公的制度
筆者は地方中核病院で医師として勤務しています。病気やケガで働けなくなったときのことを考えたことがありますか?あまり知らない人も多いかと思いますが、働けなくなったときには公的保障として「障害年金」が支給されます。障害状態の多くの人が対象になる年金制度です。元気なうちにこの制度のことを知っておきましょう。
病気やケガのせいでお金のことを考える余裕がなくなってしまう人もいます。病気やケガで闘病中の人は働けなくなることで生活費がまかなえなくなる人もいます。働けなくなるというのは、死亡よりも経済的にはリスクが高い状態です。障害年金も決して万全とは言えない制度ではありますが、預金や保険でカバーしたいと考えるときにこの制度を知らないと適切な保障額を考えることはできません。必ず知っておきたい制度です。
「障害年金」って何?
働いている人の「もしも」に備えてくれる年金です。
日本では、20歳以上であればすべての国民が「公的年金」に加入しています。
2階建ての年金で、サラリーマンや公務員などの勤め人は自動的に厚生年金にも加入していて、年金が手厚い傾向があります。月々の保険料を払うことで年をとったときや、もしものときに以下の年金を受け取ることができます。
- 老齢年金
- 障害年金
- 遺族年金
そのうちの「障害年金」は病気やケガで働けなくなったときに毎月一定額の年金を支給してくれる制度です。障害年金は眼や耳、手足などの障害だけでなくがんや糖尿病などの多くの人がかかる病気で長期療養が必要なときも支給の対象になります。
障害年金が支給されるための「障害の状態」というのは多くの状態が該当します。
- 視覚障害・聴覚障害
- 四肢の不自由
- がん
- 糖尿病
- 心疾患
- 呼吸器疾患
- 精神疾患 (うつ病・統合失調症)
著者が思いつくほとんどの疾患が含まれています。障害年金で対応できないような疾患は正直なところ想像できません。仕事や生活が著しい制限を受ける状態になったときに受け取れます。また、障害者手帳を持っていない場合でも受け取ることができます。
参考:政府広報オンライン
障害年金が支給される条件を知っておこう
障害年金が支給される条件には、以下のようなものがあります。
- 初診日に公的年金に加入している
- 原則として保険料納付済期間が全加入期間の3分の2以上を満たす
- 障害認定1級、2級 (3級は障害厚生年金のみ)
障害年金の種類と支給要件について解説
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
障害基礎年金は公的年金の加入者であれば、ほぼ全ての人が受給できます。
障害の原因になった病気やケガで初めて病院を受診した日 (初診日) に、どの年金制度の被保険者であったかによって、障害厚生年金を受給できるかどうかが変わります。
国民年金の被保険者には「障害基礎年金」が、厚生年金の被保険者には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」が支給されます。厚生年金の加入者は原則的に国民年金の被保険者でもあるから、障害基礎年金も支給されます。
さらに詳しく、国民年金・厚生年金の被保険者に支給される障害年金について解説します。
1.障害基礎年金 (国民年金)
対象になる人の範囲はとても広いです。
障害の原因となった病気やケガの初診日が、国民年金の被保険者期間中であることが条件です。ただし、20歳未満の国民年金の被保険者となる前や、60〜65歳未満の被保険者資格を失ったあとも対象になります。
- 初診日が20歳になる前:20歳に達したとき
- 初診日が20歳以降:初診日から1年6ヶ月後 (障害認定日) に達したとき
申請した時点で障害の程度が、障害等級表の1級・2級のいずれかの状態であれば支給されます。
2.障害厚生年金 (厚生年金)
厚生年金の被保険者であるときに、障害の原因となった病気やケガの初診日がある場合に支給されます。障害認定日またはそれ以降の申請した時点で、障害等級表の1級〜3級であれば支給されます。
障害手当金 (厚生年金)
厚生年金の被保険者のときに、障害の原因となった病気やケガの初診日がある場合に一時金として支給されます。
初診日から5年以内に治り (症状が固定し) 、治った日に障害3級よりも程度が軽い場合に障害の程度が障害手当金に該当する場合に支給されます。 (障害厚生年金受給よりも軽度の障害が対象)
障害年金が支給される「障害の程度」について解説
障害年金の支給対象になるための「障害の程度」は「国民年金施行令」と「厚生年金保健法施行令」によって定められています。
障害等級 (1〜3級)が対象です。以下に転記します。
参考:政府広報オンライン
障害年金の支給額はいくら?
加入している年金、障害の程度と配偶者・子どもの有無で、障害年金の額は決まります。
参考:政府広報オンライン
障害基礎年金 (令和3年度)は障害等級や子どもの数に応じて変化します。
- 1級:976,125円
- 2級:780,900円
をベースにして、子ども1人につき224,700円、3人目以降は74,900円が加算されます。子どもの年齢は18歳未満で、障害状態にあれば20歳未満です。
障害厚生年金の支給額は厚生年金加入期間と標準報酬額を元に計算されます。計算式は難しいですが、収入の多い人ほど支給される年金額は高い傾向があります。
1級は報酬比例の年金額の1.25倍、2級は報酬比例の年金額が障害年金として支給されます。65歳未満の配偶者がいる場合は、224,700円が加算されて支給されます。 (令和3年度) 配偶者加算や障害3級でも年金が支給されるのは厚生年金だけです。
障害基礎年金、障害厚生年金、障害手当金の額は、物価や賃金などの変動に応じて変化します。毎年見直しが行われ、支給額に反映されます。そのためインフレーションによる物価変動にも対応することができます。
障害年金を受けるには?申請をする必要があります。
支給申請の手続きが必要です。申請しなければ支給されないので注意しましょう。
参考:政府広報オンライン
障害年金の支給を受けるには、本人または代理人による手続きが必要です。
障害年金の手続きは複雑です。
最初の問い合わせ先には、以下のようなものがあります。
- 日本年金機構の「ねんきんダイヤル」 (ナビダイヤル0570-05-1165)に問い合わせる
- 年金事務所に相談する
- 年金相談センターに相談する
申請するときには上記のところにまずは相談してすすめていきましょう。
相談するときに持っておきたい・把握しておきたいものは
- 障害年金を申請する人の基本的な要件
- 病歴や障害の状態
- 基礎年金番号がわかるもの
- 身体障害者手帳や療育手帳といった資料
です。これらはいつでも提示できるようにしておきましょう。
相談後に「年金請求書」をお近くの年金事務所に提出する必要があります。年金事務所など先に上げた相談先に確認しながら書類作成をすすめてください。
障害基礎年金はお住まいの市区町村でも手続きできます。初診日からの病歴、年数、障害の原因、配偶者の有無などによって書類が異なります。
年金請求書の提出後、日本年金機構で審査が行われます。支給が決定された方には年金決定通知書と年金証書が送付されます。その後、1〜2ヶ月で障害年金の支払いが開始されます。
障害年金の支給がされてから、障害の状態が変わったときには障害の程度に合わせて年金額が変更されます。支給される人それぞれの障害の状態に応じて、状態の確認を行い障害状態確認届 (診断書) を提出します。この診断書に基づいて支給額をその都度変更します。
障害の状態が重くなったときには、年金額を多くするように請求することもできます。支給や手続きで困ったときには
- 日本年金機構の「ねんきんダイヤル」 (ナビダイヤル0570-05-1165)に問い合わせる
- 年金事務所に相談する
- 年金相談センターに相談する
これらのことからはじめてみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
- 障害年金は多くの人が対象になる年金
- 支給額は働き方、家族構成、障害の程度によって異なる
- 支給されるためには申請が必要
働けなくなる状態は突然やってくることも多いです。元気なうちに公的保障について学んで、必要な保障額について考えておきましょう。
働けなくなる状態は突然やってくることも多いです。元気なうちに公的保障について学んで、必要な保障額について考えておきましょう。また、障害年金の他にも障害者を支援する社会制度として、身体障害者手帳、介護保険、障害福祉、労災保険、生活保護など多数の制度があります。障害年金と相補的に利用することができる制度も多くありますので、これらについても学んでおきたいですね。
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