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障害福祉の現状 なぜ今、日本の障害者人口が増加しているのか?

障害者数が増加している理由は?増加に伴い、障害福祉サービスは十分に提供できているのか

筆者は地方中核病院に勤務する医師です。

障害福祉と介護保険は相補的な関係にあり、1番の違いは利用者の年齢です。加齢によって生じる障害を対象にしているのが介護保険、それ以外が障害福祉の対象になることが多いです。障害福祉の財源は税金です。

 

近年、日本の障害者人口は増加しています。なぜ今、障害者人口が増加しているのか?障害者人口の増加に伴い、障害福祉サービスは十分に提供できているのか?

 

この記事では、障害福祉の現状について解説します。

 

 

障害者人口は年々増加している

 

障害者人口の増加は一時的ではなく、日本ではこれからも増加が予想されています。

内閣府の調査では、2006年から2018年の12年間で障害者数は約300万人増加しています。また、現時点で障害者人口は約1,000万人で、国民のおよそ8%が障害を抱えている状況です。

障害は大きく分けて、人口が多い順に以下の3つに分類されます。

 

  • 身体障害
  • 精神障害
  • 知的障害

 

いずれの障害者区分でも、下図のように人口が増加しています。

 

障害者人口推移

 

※参照元 内閣府「障害者白書」

 

 

障害者人口が増加している理由

 

日本の障害者人口が増加している理由は、3つ考えられます。

 

  1. 高齢者が増加しているから
  2. 現代社会の環境が変化しているから
  3. 障害に対する考え方が変化しているから

 

順に解説します。

 

理由1. 高齢者が増加しているから

 

少子高齢化の影響で、日本の全人口に対する高齢者の割合は上がっています。そして、長寿化の影響で高齢者人口も増加しています。

総務省統計局のデータでは、2020年9月15日時点で高齢者人口は3617万人と過去最多になっています。また、総人口に占める割合も28.7%と過去最高でした。

 

高齢者人口推移

 

 

理由2. 発達障害と診断される人が増えているから

 

障害の中でも、特に発達障害を持つ人が増加しています。発達障害とは自閉症スペクトラム症、学習障害、注意欠陥多動性障害などを含む脳機能障害で、低年齢層に発言するものと定義されています。現時点では、生まれつきの脳の性質によるものと考えられています。

 

生まれつきの病気なのに、なぜ最近になって発達障害と診断される人が多いのかというと、発達障害の診断基準が変化していることが大きな理由です。自閉症が代表的ですが、最近は発達障害はスペクトラム症として考えられるようになっています。

 

つまり、以前は軽症の自閉症と考えられ、診断がつかずに社会的支援が受けられなかった人が、軽症でも社会的支援が必要な場合に診断をつけることできます。これは二次障害を引き起こさないことを目指して、支援を拡充した形です。

支援対象が拡がったという点では意義のある変化ですが、見かけ上は発達障害の診断を受ける人口が増加しているようにみえます。

 

ところで、結論は出ていませんが最近は生まれつきの原因以外にも、環境要因でも発達障害の原因になる可能性があると言われています。いずれもあくまで参考程度ですが、そのような要素には以下のものがあります。

 

  • テレビやインターネットなどの視聴時間の増加
  • 生活リズムや睡眠時間の乱れ
  • 食品に含まれる化学物質や農薬、環境汚染物質

 

 

テレビやインターネットなどの視聴時間が伸びることで、家族や友人と直接会話をする機会が減ったり、デジタル化によって文字を直接書く機会が減ったりすることで、言語発達に支障がでる可能性があると言われています。

 

生活リズムが乱れてしまうと、睡眠の質の低下につながります。十分な睡眠をとれないことで、発達障害や抑うつ状態などの精神障害をきたす恐れがあると考えられています。

経済の成長に伴って、国民の食生活に合成化学物質製品の増加など、さまざまな変化が起こりました。その変化に伴い、農薬の摂取や環境化学物質にさらされる機会が増加し、結果として健康状態に影響が出ている可能性が示唆されています。これらの物質が脳に影響し、発達障害を引き起こす可能性があるのではないかと考えられています。

 

 

理由3. 障害に対する考え方が変化しているから

 

「障害」に対して、社会全体の認識が高まったという点は、障害者人口が増えた大きな理由です。障害者人口が増えるということは、障害者への必要な支援を拡大している結果でもあります。

 

例えば、「発達障害」は最近になって徐々に世間的に認識されるようになりました。

これまでは「変わっている人」や「空気が読めない人」と言われていた人が、病院を受診し社会支援が必要と判断された結果、発達障害と診断されるようになってきています。

もしかしたら自分に当てはまるかもしれないと思う人もいるのではないでしょうか?

それほどまでに社会全体が障害に対するハードルを下げて、障害者支援を身近なものに変化させようとしているのです。

支援を受けるべき人が、適切に支援を受けることができる。そのような社会に変化しつつあります。障害に対する理解がすすむと同時に、医療機関で障害に関する相談をする人が増え、結果として障害者人口の増加という形で現れたと推測できます。

 

3つの理由は以上の通りでした。

「障害者人口が増加している」ということは悪いことばかりではありません。障害に対して正しく向き合っている人が増えているというように考えることもできます。しかし、増える障害者人口に対して、現在の福祉サービスの提供状態はどうなっているのでしょうか?

 

 

障害福祉サービスの現状

 

これまでに説明したように、さまざまな要因で日本の障害者人口は増加しています。また、障害に対する価値観の変化もあり、障害福祉サービスの利用者は年々増加しています。

障害者人口の増加に伴い、障害福祉サービスの提供状況はどうなっているのでしょうか?

 

厚生労働省の調査によると、障害福祉サービスの利用者は毎年増加傾向にあります。下に示した表を参照すると、平成26年から毎年増加しています。また、単年での計算でも調査期間の平成29年から平成30年で利用者の伸び率は6.4%です。

 

障害福祉利用者

 

また、社会福祉予算の推移も障害者人口と同様に年々増加しています。

 

障害福祉予算

 

厚生労働省:(参考資料)障害福祉分野の最近の動向より

 

障害福祉サービスは全額を税で賄う社会扶助方式を採用しています。全体としての障害福祉サービスは拡大傾向にありますが、今後も同様に障害福祉サービスを十分に提供できるかというのは税金の運用方法や財源によって左右される可能性は考えられます。介護保険料は今後、窓口負担2割を検討されています。同様に今後は障害福祉サービスも負担料を増やすことで維持される可能性はあると思います。

 

 

障害者人口の増加に合わせて、適切な環境づくりを

 

これまでに解説したように、障害者人口は毎年増加しています。誰もが生活しやすく、活躍できる社会を実現するために、国民それぞれが障害福祉について意識して行動していく必要があります。

障害福祉サービスの財源は税金です。抵抗がある人もいるかもしれませんが、多くの人が住みよい社会を実現するためには、税金を使って障害福祉サービスを拡充する必要があります。

例えば、バリアフリー化の推進や就労支援などが進んでくると、障害者の社会活動を活性化することができます。これは障害者の生きがいや質の高い生活につながってきます。

誰でも活躍できる環境整備をすることで、社会に活力をもたらして行きましょう。

 

 

障害者人口の増加に合わせて、適切な環境づくりを

 

これまでに解説したように、障害者人口は毎年増加しています。誰もが生活しやすく、活躍できる社会を実現するために、国民それぞれが障害福祉について意識して行動していく必要があります。

障害福祉サービスの財源は税金です。抵抗がある人もいるかもしれませんが、多くの人が住みよい社会を実現するためには、税金を使って障害福祉サービスを拡充する必要があります。

例えば、バリアフリー化の推進や就労支援などが進んでくると、障害者の社会活動を活性化することができます。これは障害者の生きがいや質の高い生活につながってきます。

誰でも活躍できる環境整備をすることで、社会に活力をもたらして行きましょう。

 

 

 

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