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糖尿病から「がん」などの合併症を引き起こす真犯人はインスリンだ!?

専門医が現場から実態を語る!「高血糖よりもインスリンの方がはるかに体に良くない影響を及ぼしている…」

 

糖尿病の治療の基本は、血糖値をコントロールすることです。

高血糖が及ぼす体への悪影響が糖尿病という病気の恐ろしいところであり、その悪影響として数多くの合併症や他の病気との関連があります。

では、血糖コントロールに欠かせないインスリンが合併症や他の重大な病気(例えばがんなど)に関わっているとしたらどうでしょうか。

 

 

血糖とインスリンの関係

 

私たちが摂取する食べ物の栄養素には、三大栄養素と呼ばれる炭水化物、脂質、たんぱく質があり、これらを消化・吸収しエネルギーとして利用することで生命活動を維持しています。中でも一番のエネルギー源として利用されるのが炭水化物です。

炭水化物は消化の過程でブドウ糖となり、腸から吸収されます。吸収されたブドウ糖は血液の流れによって体内のすみずみまで巡り、臓器や組織に取り込まれることになります。こうしてエネルギーとして活用されるわけです。

悪者に思われがちなブドウ糖ですが決して悪ではなく、不足すると生きていくことができない大切なものなのです。

 

また、残ったブドウ糖は肝臓や筋肉でグリコーゲンとして蓄えられ、糖が不足し必要とされるときには再びブドウ糖に分解し血液中に放出します。このように血液中の糖の濃度(血糖値)はいつでも一定の範囲内におさまっているのです。

 

それで、血糖値をコントロールするインスリンとはどのようなものでしょうか。

インスリンは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるホルモンです。インスリンが活躍するのは、血液の中を巡ったブドウ糖が臓器や組織に取り込まれるところです。

ここでインスリンの働きかけによってうまく取り込むことができれば、ブドウ糖をエネルギー源として利用することができるのです。

反対に、ここでインスリンがうまく働かなければ、取り込めなかったブドウ糖は血液中にあふれることになり、血液中の糖の濃度が高くなります。これが高血糖です。

 

 

インスリンが分泌されても血糖値が下がらない?

 

前述の血糖とインスリンの関係によると、血糖値が高くなるとそれを一定範囲内に抑えようと働くインスリンのおかげで血糖値は下がっていくはずです。血液中にインスリンがたくさんあれば、血糖値は必ず下がるでしょうか。その謎はインスリンの分泌能に着目することで答えがわかります。インスリンの分泌については次のようなタイプがあります。また、これらのタイプが重なりあうケースもあります。

 

 

【インスリン分泌量の低下】

 

インスリン分泌量が少ない・不足していることです。遺伝的な体質や加齢などによって、十分なインスリンが作られなくなっている状態です。

 

 

【インスリン抵抗性】

 

インスリンの分泌量は正常~過剰なのですが、インスリンの働きを受ける細胞の感受性が弱まっているためにインスリンの効果が十分発揮できない状態、つまりインスリンが効きにくくなっている状態です。このタイプでは、インスリンはより効果を発揮しようと分泌量が多くなりますが、実際はきちんと効かないために血糖値は高いままになっています。それが高インスリンで高血糖の正体です。

複数の遺伝因子、食べ過ぎ、運動不足などが大きく関わることで起こっていると考えられていて、2型糖尿病のうちかなりの割合の人がこのインスリン抵抗性によるものと考えられています。

 

 

インスリン抵抗性、高インスリン状態で何が起こる?

 

 インスリン抵抗性の人には肥満が多く、お腹の脂肪がたまっていることと関連していることがわかっています。

2型糖尿病では、実は血糖値が高くなってくる何年も前からインスリンの分泌が過剰になっていっているといいます。食べ過ぎや運動不足などで高血糖になると、インスリンはいつも以上に多く分泌され血糖を下げようと働きます。

インスリンはまた、余分な糖を代謝しそれを中性脂肪に変え脂肪組織にします。脂肪組織はTNF-αという抗インスリン物質や遊離脂肪酸を血液中に放出することで糖が利用されるのを妨げてしまうため、さらなるインスリン分泌を促すことになります。こうしてインスリン抵抗性は増大していきます。

また、高インスリン血症は、腎臓からのナトリウム(塩分)の排出させにくくして、ナトリウムを蓄積させる、動脈壁の細胞を増殖させる、交感神経を緊張させ血管を収縮させる、などのような影響を及ぼし、結果として高血圧や動脈硬化を発症させる大きな要因となります。

インスリン抵抗性と高インスリン血症が互いに悪影響し合い、インスリンの過剰な分泌要求が長く続いてしまうことで、いずれ膵臓は疲れてしまいその機能を低下させ、結果として、インスリンの分泌そのものがうまくいかなくなり血糖値が上がり続けてしまうことになります。

 

 

糖尿病になるとがんになりやすい?

 

 

糖尿病は他の病気と密接に関連し合っていることがわかっていますが、特に注目したいのはがんを発症するリスクです。専門家の報告によると、糖尿病のある人はそうでない人に比べてがん発症のリスクが高いといいます。

がんの部位によってリスクの差異がありますが、糖尿病のない方のリスクを1とした場合、がん全体としては1.2倍、最も高いものでは膵臓がんで1.97倍としています。

 

がんは珍しい病気ではなくなり、今や男性は2人に1人、女性は3人に1人ががんになると推測される時代になっています。事実、ある医療機関の調査によると、糖尿病治療に通院中の約3,100名の患者さんの1割以上の人に何らかのがん治療経験があるということがわかりました。糖尿病があるとそのリスクがさらに高まるとは決して聞き逃すことのできない現実です。

糖尿病とがん発症のリスク上昇の関係で大きな要素として、インスリン抵抗性、肥満、酸化ストレスが指摘されています。

 

 

【インスリン抵抗性】

 

前述のとおり、血糖値が下がりにくい状態のことですが、これが進むと高インスリン血症となり、がん発症に影響すると考えられています。

 

 

【肥満】

 

2型糖尿病には肥満が多く、蓄積した脂肪組織で起こっている慢性的な炎症や、脂肪組織から分泌されるがんを抑える働きのあるホルモンの血中濃度が低いことががん発症に関わっていると考えられています。

 

 

【酸化ストレス】

 

酸化ストレスとは細胞内の活性酸素が増加している状態をいいますが、この状態はDNAにダメージを与えることがわかっています。高血糖は酸化ストレスを過剰にさせるため、がん発症に関わると考えられています。

 

 

糖尿病からのがん、どうすれば予防できるか

 

まずは糖尿病にならないようにすることが大切です。糖尿病の危険因子として挙げられる、肥満、運動不足、加齢、不適切な食事、過度なアルコール摂取、喫煙など、これらを見て何か気づくことはないでしょうか。実はこれらの危険因子はがんの危険因子と共通しています。つまり糖尿病の発症や悪化と同時にがんを発症させやすくしてしまうことになります。

ということは逆に言えばこれらの対策として行う、体重コントロールや適度な運動、適切な食事、節酒、禁煙がそのまま糖尿病発症予防とがん予防につながることになります。

また、血糖コントロールを含め、糖尿病の治療として行う運動療法や食事療法などもがん発症予防になります。

 

その上で、より早期発見につながるがん検診受診が大切です。現在の日本では、がんになる人は少なくありませんし、命に関わることもある病気です。日本人の死亡原因の第一位はがんなのです。

しかし、より早い段階で発見されればすぐに治療を始めることができ、完治させることも多くなってきた病気であることもまた、がんという病気の一面です。

糖尿病とがん、どちらも予防のためにできることはたくさんあります。今から積極的に始めていきましょう。

 

 

 

エピローグ もし、このようにお考えなら

今回のコラムはいかがでしたか?既にご存じの情報もあれば、「そうなんだ」「知らなかった」といった情報もあったのではないでしょうか?

 

「糖尿病」は、もしかしたら最も誤解されている病気のひとつかもしれません。多くの人が、「甘いモノが好きな人」「太ったオジサン」がなる病気だと思っている一方で、実は老若男女問わず可能性がある、とても身近な病気です。

こちらは、本サイトに掲載されているコラムの中からエッセンスを抽出したものですが、皆さんはどこまでご存じでしょうか?

 

・【基本】 そもそも、「糖尿病」ってどんな病気?

・【確率】 予備軍を含めると2000万人ってホント?“国民病”ってどういうこと?

・【兆候】 健康診断だけではわからない?“隠れ糖尿病”とは?

・【症状】 「スパイク」って何?食後に体がだるくなる原因は?

・【原因】 「血管の病気」ってどういう意味?遺伝は関係ある?

・【治療】 どんな治療方法がある?どれくらい大変?

・【予防】 糖分はすべてカラダに良くない? とにかく糖分を控えればいい?

・【関連】 「サイレントキラー」とは?他の生活習慣病と関係ある?

 

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